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地域おこしのススメ! 地域と人と全国と(前編)

ローカル&グローバル


かつて、かのナポレオン・ボナパルトは言いました。


「リーダーとは”希望を配る人”のことだ」(A leader is a dealer in hope)


何とも素晴らしい言葉です。
リーダーだからといって、ただ自分の意見を通すだけ、地位に乗っかるだけではない。

そこにいることで、周りの皆を活気づけられる人。チームがどこへ向かえばいいか、道を示してくれる人こそがリーダーであるというわけです。


時には仲間を助け、時には自らの意思を仲間に伝える。

「こんなリーダーがいてくれれば…」

そんな淡い希望を抱いたり。



上司「おい、まるほろ。希望(仕事)だ」

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まったく、いいリーダーを持って俺は幸せだぜ!(絶望)


まあ、良きリーダーというのはいつの時代、どの場所でも求められるものです。
それが国家であれ、学生のサークルであれ、そこにコミュニティがあれば、必ず代表となる人が出てくる。

しかし誰もがリーダーを求める反面、自らがリーダーとして立つというのは中々できることじゃありません。


今回はそんなチームを代表するリーダーであり、上田の農業を牽引する素晴らしいゲストの方々とお話させていただきました

柿嶌さん

柿嶌 洋一 かきしま よういち
全国農協青年組織協議会 会長 
農事組合法人 エコーズフェス武石

主な生産物:酒米、大豆、ソバなど
23歳から農業を始め、上田市の武石地区にて親子三代で農業を営み、それぞれ異なった作物を取り扱っている。
地域をベースとしたマインドで、地域から全国へ活動を行い、地元農産物の新たなるブランドを生み出していく。

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小宮山 耕平 こみやま こうへい
HEARTBEATまるこ 代表
小宮山農園

主な生産物:花(リシアンサス・リンドウ)、お米(酒米)
20歳の時、花農家である父の手伝いを始める。
22歳の時、その仕事を継ぐ事を心に決める。最初はリンドウという花のみだったが、27歳の時リシアンサスという花と出会い自力でハウスを建て、そこから本格的な農業を始める。
幼少期からやっているスキーの選手活動と共に、夏は花農家、冬はスキーヤーとして日々奮闘中。


個人的な親交も深いお二人とのことで、同じく地域をテーマにした活動のリーダー的存在。
今回はお二人の対談の中から、それぞれの活動への感想や地域の課題などを深堀していければと考えております。

※なお、お話しいただいた内容が非常に濃く、纏められる気がしなかったので、今回は前半と後半の二つに分けてお送りいたします。


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お話をお伺いする前に、農業を始めたきっかけなどをお伺いしてもよろしいですか?

小宮山 〈花屋だから花を突き詰めたい〉
僕は親の家業を継ぐかたちで花農家になりました。就業して15年になります。花の栽培は職人気質というか、コンセプトをもってこだわりを持ちながら、花を作ってきました。
しかし、自分の世界だけでは自分のモチベーションが上がらないことに気付き、いろんな人の助力もあって、地域の農業者を集めた「HEARTBEATまるこ」という団体を立ち上げました。
同じ世界に従事している人たちと活動していると、同じ農業でも、違ったものを作っていれば新しい発見があり、競争心も生まれる。そういう意味では、自身の世界がすごく広がったんじゃないかなって思ってます。

柿嶌 〈花屋であって花屋でない〉
私も小宮山さんと一緒で、父親から家業である花農家を継いで農業を始めました。
武石は荒地が多くて、まあ丸子も同じですけど、この土地を今後どうしていこうか?
そういった土地を開拓して有効活用しようという活動を始めたのが父でした。
そんな父の会社であるエコーズフェス武石で働きながら、それ以外に自身の家業もある。つまり私には最初から二つの仕事があったわけですね。
また、うちは祖父の代から全員やっている仕事が違いました。元々畜産農家だったのが、父の代から花栽培を始めていたので、なんとなく自分も父親たちとは違うことをするんだろうなというぼんやり思ってましたね。


それぞれ家業を継がれて就農したお二人。
職人として花を突き詰めたいと思っていた小宮山さんと、家業を継ぎながら新しい事業を始めた柿嶌さん。バックボーンは同じでも、それぞれ選択する道が違うのは面白いですよね。
次はそんなお二人がどのような形で関わっていくのか。そして「HEARTBEATまるこ」が設立するきっかけについてお話を伺いましょう。


― 一人でやっていくことの限界 ―

小宮山 僕がまだ新規就農者だったころですね。地域の農業の集まりに顔出したときなんですけど。
柿嶌 俺が3年目の時か。
小宮山 ちょうど洋ちゃん(柿嶌さん)が奏龍みそを立ち上げる準備をしていたころだったんですが、その時に声をかけてもらったんです。
柿嶌 地域のことやろうぜってね。
小宮山 でも、その時に一回断ったんです。自分は花屋だから花がやりたいっていう気持ちが強かったし、まあ正直めんどくせえなぁとか思いつつ(笑)
柿嶌 それは分かった(笑)
小宮山 そこで一旦シャッターを下ろしちゃって、仕事の話は意図して避けてましたね。
だけど4年前、つまりHEARTBEATまるこを作る前なんですけど、その頃、自分の世界だけでやっていくのに限界を感じてきました。
外の世界というか、新しいステップに進むきっかけが欲しくて、それで改めて柿嶌さんのお話を伺うことにしたんです。

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ー 丸子なら耕平だな ー
柿嶌 まあ私としては、シャッターを下ろされていようが、最初から地域思考ですから。親父の頃からそうだし、その単位で考えた方が稼げるから、おせっかいにも自分の住んでいる上田のことを考えるわけですよ。
小宮山 上田の他の地域のこととか?
柿嶌 そう、武石以外の地域は将来どうなるかと。そう考えると、必ずその地域のキーマンになる人物が出てくる。
そんな時、ちょうど「丸子地域に地域を引っ張っていく人はいないか」と、キリンさんから相談を受けまして。
丸子なら耕平だな!と紹介したわけです。耕平は考え方がしっかりしていたし、割と(私と)似ていると思ったし。
小宮山 結果的にそれがHEARTBEATまるこのスタートになったわけです。


余りに大きな物が前に現れると、どんな人間でも一度は立ち止まり警戒します。
特に自分のやりたい事に熱中しているときは、それが障害の山に見えるか、自分を押し上げるジャンプ台に見えるかは人それぞれ。

でもひたむきな仕事への姿勢は、きっと見てくれている人がいる。
「こういった話ならば彼が適任だ」と誰かに覚えてもらえることは、仕事としてだけでなく人としての魅力にも繋がるんじゃないでしょうか。

まるほろ「上司さん、頼まれていた資料です」
上司「すまん、今レイドボスの討伐中なんだ」※1

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…よい子の皆は、くれぐれも熱中しすぎて周りを見失っちゃダメだぞ。


― 全国的な取組みへと展開する目的 ―

お二人の出会いについてお伺いさせていただきましたが、現在の活動や団体について、お互いの印象などをお伺いできますか?

小宮山 (柿嶌さんは)外への発信力がすごいことはもちろんなんだけど「地域への意識付けの行動力やノウハウ」がすごすぎると思います。
僕もHEARTBEATまるこという団体を作りましたが、やはり地域全体をで動かすには色々と課題があるので…。
柿嶌 私は、そもそも地域に対して、「自分たち“から”考えているか」がものすごい疑問だったんだよね。
農業で稼ごうとするわけじゃん。でも稼ぐのが目的になっているのが現実で、農家はそれ以外のところに興味がない。農業というのは特殊な仕事だと思うんですけど、こうやって稼ぐバブルは長く続かないと思うの。そういう状況を変えたいと思うからこそ、全国を回ってんだよね。
小宮山 あくまでやってきた中での結果というか。
柿嶌 そう、だからなんかするにしても失敗がない。というか失敗にならないんだよね。

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― 地域へのこだわり、良いものは自然と認められる ―
小宮山 地域を巻き込む取り組みって、洋ちゃん的にはどうやってそこに行きついたの?
柿嶌 自分の作ったものを売るためには、そっち(地域)側を作ったほうが早いから。
例えばめちゃくちゃ美味しくて大きな大豆をつくったとする。
でも、農作物は商品として卸す上でいろいろと基準があるんです。形がいいとか、袋に入るサイズじゃないとか。
せっかくいい商品を作っても扱ってもらえないんですよ。
小宮山 ああ、分かります。
柿嶌 だから、自分の作った商品を最大限に生かしてくれるところを探して、その結果、地域の中でいろんな活動をするようになった感じかな。
だから、べつに全国に発信していこうという気持ちはなくて、良いものは自然と全国的に広がっていくと思うの。外に出て物販したりするけども、それは目先のことで、別に地域のためってわけじゃないから。
小宮山 結果が後についてきてるわけだ。
柿嶌 そういった活動で地域の良さが発信されているんだと思うんだよね。
小宮山 歯車がかみ合っていく、みたいな?
柿嶌 そうそう、その歯車がどんどん早くなって周りも一緒に連動して早くなっていく、っていうイメージかな。

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全国を飛び回り意欲的に発信を行っている柿嶌さん。
しかしお話をお伺いすると、それが地域の商品を売るために、自然とそういった流れになったことが分かりました。

お二人の経歴やお仕事だけをくらべると、大きな差異があるように見えます。
しかし、お話を聞いていくと、それぞれ自分たちが育ってきた「地域」が根幹にあり、「地域を盛り上げたい」「地域の魅力をもっと知ってほしい」という部分で共通していることが分かりました。

自分たちが働いている地域が認められるというのは、いわば自分の仕事も認められるということ。
より良いモノを作り出す為には、地域の意識そのものが変わっていくことも大切なのかもしれませんね。

さて、長くなってきましたのでお話の途中ですが今回はここまでにさせていただきたいと思います。
次回はHEARTBEATまるこを含めた上田の農業、そして今後のお二方の展望について伺っていきたいと思います。
ご興味を持っていただいた方は、ぜひとも次回の記事も読んでいただけると幸いです。

では!


※1レイドボス
オンラインゲームにおいて、多数のプレイヤーが協力して倒すボスのこと。
つまり倒せばいろんなゲームの特典がもらえる、時間泥棒であり運営の集金係。
皆で倒すといえば聞こえは良いが、皆が倒したがるので、結果的に「競争心」を煽って乱獲されるかわいそうな奴である。

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