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だからアウェイはやめられない? ヨコハマ・フットボール映画祭 『ZG80』レビュー

ZG80 -だからアウェイはやめられない-

分裂前夜のユーゴスラビア。フィチョはディナモ・ザグレブのコアサポ軍団BBBとベオグラードへのアウェイ遠征に。

待ち受けるレッドスターサポーターの包囲網を突破して、フィチョとBBBは無事にザグレブに帰還できるのか?

まだまだ”無邪気”な時代のオイタが盛りだくさんのアクションコメディ。

監督:イゴール・セレギ
出演:レネ・ビトラヤツ、マティヤ・カチャン、マルコ・ヤンケティッチ


 クロアチアとセルビア。サッカー界では有名な、世界3大「混ぜるな危険」マッチです。舞台は1989年、ディナモ・ザグレブのサポーターが、アウェイのレッドスター・ベオグラード戦に乗り込む様子を描いた作品です。僕はクロアチア映画を見たのは、たぶん人生で初めてです。

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 『BBB(Bad Blue Boys)』という、ディナモ・ザグレブのサポーター集団が(現実にも)あります。作中ではBBBのやつらがアウェイの遠征に赴き、試合の前後、ベオグラードの各地でトラブルを起こします。ピッチに乱入したり、万引きしたり、タクシーに無賃乗車したりと、ろくでもない奴らです。

 試合が終わって翌日の電車でザグレブに帰還するのですが、発車時刻の駅ではレッドスターのサポーターが、恨みを晴らさんと待ち構えています。果たして彼らは無事にザグレブに帰れるのでしょうか?

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 作中ではサッカーの試合描写はほぼありませんが、おそらく1989-90シーズンの前期、レッドスターのホームゲームについてだと思われます。そのシーズンの後期、ディナモ・ザグレブのホームの試合では、wikipediaに単独ページが存在するぐらいの暴動が起こりました(現実の話です)。その後、旧ユーゴスラビアは内戦状態に突入し、分裂しています。つまりこの映画の時期は「暴動前夜」で、そこはかとなくそのことを漂わせる描写も出てくるのですが、作中では政治的なきな臭さは感じられません。政治犯は誰もいなくて、まあみんな粗暴犯です(笑)。

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 この映画の登場人物たちはみな、反社会的、暴力的です。現代の文脈だととうてい肯定されない行動でしょう。しかし日本のサッカーファンからすると、どこか懐かしい、そして憧れる要素があるように思います。

 僕は、サッカーと旅に魅せられて、それらを楽しむ人生を過ごしてきました。なぜサッカーと旅だったのかというと、そこに自由を求めてきたのかもしれません。登場人物たちは多分、頭も悪く貧乏なのでしょうが、彼らの自由な振る舞いをうらやましいと感じる人も多いでしょう。僕は正直、けっこううらやましいです。一度やってみたい。色々あってもうできないけど。

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 現代は通信技術や交通機関の発展により、世界がどんどん狭くなっています。海外旅行に行っても、それほど異国情緒を味わえなかったりします。しかし、この映画の舞台は1989年の東欧で、現代の日本から見るととてつもない異世界感があります。現実のサッカーの旅には時間とお金とリスクがかかりますが、わずか90分でサッカーの旅ができるこの映画、サッカーと旅が好きな人にはぜひおすすめです。

この映画は、ヨコハマ・フットボール映画祭でご覧になれます。
日時は以下の通りです。

1/25 土 18:40
横浜市開港記念会館にて
長束恭行さん トークショーあり

1/29 水 19:35
シネマ・ジャック&ベティにて

ヨコハマ・フットボール映画祭
https://2020.yfff.org/


本編は以上になります。本編だけで完結している記事ですが、以下は有料部分として、僕が初めてアウェイの旅に行った時の記憶を書いていきます。

僕はいつからか柏レイソルを応援しているのですが、初めてアウェイに応援に行ったのは、2005年の甲府戦でした。あの有名な、バレーに6点取られた入れ替え戦の年です。

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