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幸せのカケラ⑦

≪国崎の章≫

『神津川?あぁ、マジで父さんに会いに行ったんだ。』
その夜、僕は久しぶりに陽向に電話をした。
『陽向・・元気か?』
『え、なに、突然。元気だよ。ってか、学祭の準備でへとへとだけど。』
『いや、ならいいんだ。』
『父さん、学祭・・来れないよね?』
『あぁ・・うん。ちょっと無理かもな』
『わかってっけどさ。言ってみただけ。
支部 長やってたと思ったら 、今度は 選挙に出るっ
ていうんだもんなー。』
『ごめんな、陽向。こんな父親だけど
おまえのことをちゃんと考えてるから。』
『なんだよ、どうしちゃったんだよ。俺は平気だよ。
それより・・母さんに電話してやれよ』
『母さんか・・。』
『離婚したって法友だろ。』
『ははっ、そうだな。法友か。夫婦よりもそっちの方がぴったりくるな。』
『マジかよ。それ、ヤバいんじゃなくね?』
『それはヤバいのか?ヤバくないのか?』
『ヤベーよ。ギリアウト。』
『ギリギリなのにアウトかよ。』
『父さん、どうでもいいよ、そういうの。』
『すまん。』
『でさぁ、神津川、なんか言ってた?』
『なにかって?』
『あいつさー、夏休み終わってから、ほっとんど大学来てないの。
大学、辞めるつもりなのかな。』
『そんなの自分で聞けばいいじゃないか。』
『いや・・あぁ・・まぁ、うん。』
『おまえ、あの子のこと好きなのか?』
『え、ば、バッカ、チゲーっよ。そんなんじゃねーよ。
俺はただ法友として・・ほっとけないだけだよ。』
『陽向。好きな人には好きってちゃんと言えよ。いなくなる前に。』
『え・・。うん、わかった。』
『じゃあな、またな。』
『父さん。』
『ん?』
『ありがとう。俺、父さんの子供でよかったよ。』
『なんだ、照れるな 』
『選挙、頑張って。』
『ありがとう。』
離婚しても法友、か。まさか自分の子供に教えられるとはな。
僕は久しぶりに絵里奈の携帯番号をタップした。


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