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自分の作品の作り方:分解と再構築のくり返し




作品の制作過程が見たい

と言ってくれることが多くなって、最近はインスタやTwitterに作品制作中のタイムラプス動画なども載せるようになった。
自分でも、制作中は見れない第三者視点での自分の手作業の様子を早送りで見るのは結構興味深いものだな〜と(正直自分の乾燥した手指とか仕事柄かわいいネイルが出来ない爪とか写すの嫌だな…とかは思うけど)最近はできる限りは作業中動画を撮るようにしている。

動画をインスタなどで公開すれば、道具は何を使っているのか、素材は何か、どの順番で出来上がるのか、私がどんな手をしてるのか…作品の完成品からは分からない細かな情報を、動画によって発信することができるし、こうして作る過程を記録するのに動画を撮るという手段は良い方法だな、と思っている。

しかし当然ながら、動画や画像で捉えられる作業だけが、作品を作る過程に深く関わっている要素では無い。

同じ味噌を使っててもオカンの作るお味噌汁の方が美味しいのは、オカンが使う味噌とか具材とか材料だけが特別なのではなくて、経験とか、工夫とか、味噌汁作りに込める家族への愛とか、視覚では見れないものも加わっているから
というのと同じで、
作品の制作過程において深く関わっているのは道具や素材や作業の仕方のように、目に見える要素だけではない。
作品の制作過程に深く関わっているけれども、動画でも画像でも納められない、今はまだ私の脳みその中だけにあることを、少しずつ言葉にして書き記していきたいと思う。



今回は、久しぶりのnoteになるけど 普段私が 自分の目に映るものごとをどうやって「見て」いるのか、そしてどうやって形にしているのかを書いていきたい。




まずは下の風景写真を見て欲しい。


あなたは風景を見る時、頭の中で何を考えるだろうか。何をどのように捉えるだろうか。

私はしばしば、こうやって風景を捉えている。

まるでシャドーボックス(17世紀ヨーロッパで流行したハンドクラフト)みたいに、風景を構成しているものを、手前から奥までレイヤー(層)分けをして、頭の中で一つ一つ分解して捉える。

常にこんなふうにものを見ているわけではないけれど、少なくとも消しゴムはんこの作品を考える時は、この「頭の中でレイヤー分け」するという見方で、景色や動物、静物などなど視覚で捉えるようにしている。


私の作る消しゴムはんこ作品は、版画のように複数の版を重ねて捺して、いわゆる「多色刷り」で絵を作っているというのが特徴である。
小学3年生の頃、消しゴムはんこ作りにはまって以来、よく学校の先生が使う「よく出来ました」のはんこや印鑑のように、一版だけのはんこを作って来たが、ここ数年は一版だけでは表すことが出来ない多色刷りの消しゴムはんこを主に作っている。


これまで景色や食べ物、動物など様々なモチーフを表現してTwitterやInstagramで作ったものを公開してきた。
2020年末頃からは、カモ井加工紙株式会社様のマスキングテープブランド「mt」の日本各地で開催するポップアップショップ限定テープを「mt new creators まるいちきゅう」の名義でデザインを作らせていただいており、毎回消しゴムはんこで作った絵を使ってテープデザインを作ってお仕事をしている。テープのデザインの種類だけでこれまで約100種類、作らせていただいている。


要するに、今では生業の一部になっているほど、私と消しゴムはんこは切っても切れない関係である。

というわけで、普段風景とか見たり、食事をしたり、動物と触れ合ったり、ただただ生活をしているだけでも、「あ、これハンコにするならこうやって版を分けるな」とか思いながらしょっちゅう「レイヤー分け」の見方をしてしまうのである。


さて、普段から生活する空間で目に見える光景を「レイヤー分け」している私なので、平面で描いたイラストも「レイヤー分け」ができる。

例えば下の絵を消しゴムはんこにしたいと思った場合。

版画のように、複数の版を重ねて多色刷りをするタイプの消しゴムはんこは、彫る作業より前に、「どんな版に分ければ、重ね捺した時にこの絵になるか」まず考える必要がある。

この「版分け」を考える作業のことを、私は数学の「因数分解」の逆、「展開」と似ていると思っている。

因数分解と展開について軽く説明をすると、
「因数分解」…和(足し算)や差(引き算)の式を、積(かけ算)の式に変形すること
「展開」…因数分解の逆で、積の式を和や差の式に変形すること

「積の式」がどんな「項(式を構成する要素)」で出来ているかを和や差の式で表すという数学の「展開」は、様々な要素で構成されている絵がどんな版で出来上がるのかを考えることと似ている
という発想で、私は消しゴムはんこの版を考える工程のことを「展開」と勝手に呼んでいる。

先程の絵を「展開する」とこんな感じになる。

普段から風景を見るときなどにやっている「レイヤー分け」の見方も「展開」で、絵をおこす(分けたものをまた自分の中でもう一度構成する)のが「因数分解」、さらに描いた絵を消しゴムはんこのために版分けするのが「展開」だと言えるかもしれない。
私は作品を作る時は 因数分解 と 展開 をくりかえす、という作り方をしているようだ。


実際に過去に作った「桃太郎」の絵の版はこのようになっている。



ものごとを捉える時に、頭の中でそのものごとを構成する要素を分けて捉え、もう一度自分の中で組み立てて形にする。
ものを作るということは、ものごとのいろいろな見え方を探ることなんじゃないかなと私は思っている。


見聞きするニュースも、普段からよく使っているマグカップも、「うちは観光資源なんてないんですよ」とか市役所の人が言っちゃうような地域も、
世の中にあるものなんでも、目に見えているところだけじゃなくて、何で構成されているのか、どんな背景があるのか、どんな側面があるのかなどなど
要素をバラバラに分けながら捉えることができたら、表面だけでは見えなかったことだって見えてくるはずで、その分新しく提案できることも、作り出せることもあると思う。


バラバラにして組み立ててまたバラバラにして…をくりかえすものの作り方は、簡単なものではないけれど、その分地層みたいに厚みのあるものが作れるはず…というのを今のところの私は信じていて、作ることを続けている。

これからも継続していきたい。

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