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日本人の平均寿命が短くなっている! -2年間で0.6年減-

「人生100年」と言われていますが、現在の平均寿命は男性81歳、女性87歳(2022年時点)にすぎません。今後も平均寿命が伸びるという予測が「人生100年」の根拠の一つになっていました。

しかし、直近の2年間、平均寿命は女性で0.6年、男性で0.5年減っています。
セカンドライフを考える上で重要な要素である平均寿命について、改めてデータをもとに理解を深めてみたいと思います。


平均寿命が75年で30年以上伸びる

「自分は何歳まで生きるのか?」 いわゆる寿命は人々の最大の関心事の一つです。
それに応える具体的な数字として「平均余命」(平均してあと何年生きられるかという期待値)や、0歳の平均余命である「平均寿命」が使われます。

日本は世界一の長寿大国(直近で男性4位、女性1位)です。終戦まもない1947年の平均寿命をみると男性50.06年、女性54.96年で、まさに「人生50年」の時代でした。
それが75年後の現在では、男性81.05年、女性87.09年と平均寿命は1.6倍、30年以上も伸びました。このままでいくと「人生100年」も夢ではなくなっています。

ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(中位仮定)によると、2070 年には男性85.89 年、女性91.94 年に なる予測です。

図 130年間の日本人の平均寿命の推移
備考)完全生命表のない年は簡易生命表を用いた

2年連続減少!

その平均寿命が最近、減少しています。
平均寿命が減少し始めたのは2021年からで、先月、厚労省が発表した「平成4年簡易生命表」によると、2022年も2年連続で平均寿命が減少しています。

2022年の平均寿命を前年と比較すると、男性は 0.42年、女性は0.49 年減少しています。同様に2021年は、男性 0.09年、女性0.14 年の減少なので、2022年は前年を大きく上回る減少幅だったことになります。

図 日本人の平均寿命の推移(直近10年間)

コロナ禍が平均寿命を押し下げた

平均寿命が減少した原因には、新型コロナウイルス感染症の影響があります。
これまでは、ガンなどの病気への対処が平均寿命を伸ばすのに寄与していましたが、少なくとも直近2年間はコロナがそのトレンドを逆転させました。

具体的には、2021年の男性の平均寿命は前年より0.08年減少しましたが、そのうち0.10年がコロナの影響によるものでした。
同様に2022年は、平均寿命の前年差0.42年に対して、コロナの寄与年は0.10年で、前年に比べてコロナの寄与度は限定的で、コロナ以外の方が平均寿命を押し下げています。

ただし、コロナの影響は、直接的なものばかりではなく、自殺や不慮の事故など、外出や交流が制限を受けたことで生じる間接的な影響もみられます。

また、これまで一貫して平均寿命を伸ばしてきたガンなどの病気対策が、反転して平均寿命を減少させる方に寄与していますが、緊急医療体制を敷いていたコロナの影響と考えられます。

平均寿命の伸びは回復しない?

コロナ禍が明けた現在、平均寿命が再び増加に転じるかは不透明です。
大正末期にはスペイン風邪や関東大震災の影響により平均寿命が減少したことがありましたが、その後は増加に転じたことから、コロナ後も平均寿命の増加が期待されます。

海外では、いち早くコロナ禍の影響から回復しつつあり、イタリアやフランスなどが回復基調に入っています。しかし、コロナ前の水準には戻っておらず、回復には時間がかかるように推測されます。
また、主要国では最も平均寿命の減少が大きいアメリカでは、日本と同様、回復には至っていません。アメリカは2019年→2021年で平均寿命を2年も減少させています。
このように、コロナ以外の要因も考慮して今後の平均寿命を考える必要があります。

“老衰”が急増している背景

なかでも気になるのが「老衰」の急増です。「老衰」とは、高齢者の自然死のことで、いわゆる「天寿を全うする」という死に方です。

背景には、高齢者割合の増加だけでなく、医療制度や医療技術が向上したことや、自然死を受け入れるようになったという医療現場や社会全体の考え方の変化があります。また、自殺や交通事故などの死亡率の低下もあります。

老衰の増加は、死が自然状態に近くなることを意味しており、これまでの死因対策に限界がみえている(余地が少なくなる)ことを意味します。ここからは、従来のように平均寿命が右肩上がりで増えることはないという予想ができます。

図 主な死因別死亡率の推移(65歳以上の者)

来年の簡易生命表の公表を楽しみに

このようにコロナ後の平均寿命の推移に注目が集まっています。
今後の平均寿命の動向は「令和5年簡易生命表」の公表を待たなければなりません。平均寿命の伸びが回復するのか? 頭打ちになるのか? 

海外の動向も参考にしながら、平均寿命がどのように変化していくかを見守る必要があります。
来年7月の公表が楽しみです。

(丸田一葉)

参考)
・「日本の将来推計人口(令和5年推計)」国立社会保障・人口問題研究所
・「完全生命表」「簡易生命表」「簡易生命表の概要」厚生労働省
・「人口動態統計」厚生労働省


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