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自分にあった人生モデルを選ぶべし3(恐るべし静岡県モデル)

自分に与えられた時間が増える!
この長寿化の恩恵を受けるために、時間の使い方が問われています。

そこで、ここでは「人生モデル」を紹介していきます。人生モデルとは、人生100年のロードマップです。紹介する人生モデルはどれも個性的で、自分が持っている古い時間軸を考え直すキッカケを与えてくれます。

今回紹介するのは、静岡県が提唱する「ふじのくに型「人生区分」」です。
ここでは人生を5区分しています。行政による時間区分というで幼年と少年を分けていますが、この2つを合わせて4区分の「4ステージ型」といっても良いでしょう。

しかし、単純に人生を4等分、5等分しているのではなく、現代社会の慣行や、地域社会の実情を反映して節目を設けており、その緻密さには驚かされます。


ふじのくに型「人生区分」とは

健康寿命から30年間の「壮年」を設定

「ふじのくに型「人生区分」」は2015年、静岡県健康福祉部が発表した人生モデルで、少しずつ改良が加えられているようです。
これをもとに静岡県は、高齢者の若返り意識改革を進めていて、これぞ人生モデルの理想的な使い方といえます。

最大の特徴は、日常生活に制限のない期間である「健康寿命」をもとに「壮年」という区分を設けたことです。
日常生活に制限のない期間と、制限のある期間を人生の節目にすることは、WHOも提唱している考え方で、日本老年学会による75歳~を高齢者とする提案も、健康寿命が根拠の一つになっています。
静岡県は長寿県で知られており、2019年の健康寿命(男 73.45年、女 76.58年)は、全国平均(男 72.68年、女 75.38年)を約1年上回っています。

「壮年」の始まりは46歳から、終わりは女性の健康寿命相当である76歳まで。30年間が壮年で、「青年」の28年より長い期間です。
注目すべきは、壮年を「働き盛り世代」と位置づけて、社会で元気に活躍する世代と位置づけたことです。壮年は10年刻みに3区分されていますが、66~76歳の「壮年熟期」(その昔「前期高齢者」といわれました時期とほぼ同じです)も働き盛り世代に位置づけられています。

これは、現実を反映したというより、期待が込められていると感じます。
静岡県は、この人生区分を広く県民と共有することで、現役で活躍するシニアを応援しています。シニアの若返り意識を誘導し、様々な手立てで健康寿命の延伸を目指します。

45歳までが「青年」!

また、「青年」の区分も独特です。青年として18~45歳が設定されていますが、なぜ45歳までが青年なのでしょうか?

地域には、青年会議所や農業青年クラブ、農協青年協議会など、青年を対象とした団体があり地域社会を支えています。そこには建前では30代までといいながら、多くのオジさん、場合によってはシニアもが集って活発に活動しています。この実態を踏まえて45歳を節目としたのは、健康寿命を節目にしたことと同じくらい意味があります。

実際のビジネス社会において、経営層は40代半ば以上が占めています。働く世代を成長過程と、成熟過程とに二分して捉えるのは現実的で、その節目を45歳としたのは慧眼です。
人生モデルの多くが50歳を節目に後半生としていますが、静岡県モデルはより現実を反映したものです。

ふじのくに型「人生区分」

敬意を表して「老年」を細かく区分

また、「老年」は、お年寄りへの敬意を反映して、さらに細かく区分しており、そこに古来から伝わる「賀寿」を取り込んでいます。
「長老」は米寿(88歳)から白寿(100歳)まで、百歳以上の呼称は「百寿翁(おきな)・百寿媼(おうな)」となっています。

ちなみに、100歳の白寿を超えても賀寿は用意されています。108歳が茶寿、111歳が皇寿、そして120歳が大還暦。
将来、大還暦のお年寄りが数多く現れる時代がくるかもしれません。

静岡県に期待すること

壮年こそ細かい定義が必要

ふじのくに型「人生区分」は、ユニークな時間区分で、人生の時間軸を考えるきっかけを作ってくれます。

しかし、細かく区分されたそれぞれの時期の定義が不明で、これでは人生のロードマップにはなりえません。46歳~の壮年初期と、66歳~の壮年熟期では、明らかに生き方が違いますが、そこに言及していません。

そこで、勝手に壮年の3期を定義してみました。下表の通りです。

ふじのくに型「人生区分」をもとに加筆

自立寿命を入れた老年の定義

4つに区分された「老年」も同様です。老年は身体的な状況が人それぞれなので定義が難しいのですが、「自立寿命」を取り入れることで区分が明確になります。
健康寿命を超えた「老年」は、日常生活に制限のある時期ですが、それでもしばらく自立できる時期が続きます。それが「自立寿命」といわれるもので、健康にどこか不安を抱えているものの、他人にほとんどお世話にならず自立して暮らしていける時期です。
「初老」とは、自立寿命までの期間と考えるとよいと思います。

性差を考慮すべきでは?

最後に、人生終盤になると、大きな性差が現れます。男女の寿命に5年程度の差があるなかで、人生モデルを一つで表すことに限界があります。
例えば、自立寿命(男 79.9年、女 84.1年)を入れて「初老」を定義すると、男性は現在の区分のままで構いませんが、女性は「中老」まで含めて「初老」とした方が現実に近くなります。

人生モデルを二つに分けると分かりにくさが増すのかもしれませんが、そもそも実態に合わせた人生区分を採用しているのであれば、男女別の人生モデルを用意した方がよいと思います。

次回は、「2ステージ型」の人生モデルを紹介していきます。

(丸田一葉)

参考)「ふじのくに型「人生区分」の提示」静岡県公式ホームページ
https://www.pref.shizuoka.jp/kenkofukushi/kenkozukuri/kenzou/1022109.html


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