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Good Questionは「良い質問」という意味ではない

英語で何か質問した時、ネイティブから

Hmm, that’s a good question.

と言われることがありますが、これ、「ほほう、それは良い質問ですね」という意味じゃないんですね。

大事なことなのでもう一度言いますが、

ネイティブの言うGood Questionは、「それは良い質問ですね」という意味で発せられているわけではありません。


じゃあ何なのかというと、

「うーん、なんて答えようかな〜」

と考えている時の、ただの時間稼ぎで使われるフレーズです。
答えを用意していない予想外の角度の話とか、痛いところをつかれたような答えづらい質問をふられた時なんかに、このフレーズをはさむことで、ひと呼吸置いてから答える……という感じ。

なので、ネイティブが発するGood Questionには「ポイントを押さえた良い質問」みたいな意味は込められていないんですね。

だって、よく考えたらおかしな話ですよね?
普通に話している時に「いい質問ですね」なんて。教室で先生が生徒に言うんならまだしもですが。

同じ日本人から「それはいい質問だね」なんて言われたら、「なぜ謎の上から目線?」といぶかしむところですが、相手がネイティブとなると、なぜかそういった判断力がなくなってしまうんですよね。そして「私、いい質問したんだ」なんて褒められた気になって、うれしくなったりして。

なんて言ってる私も、以前、Good Questionと言われて喜んでいた時代がありましたから、その感覚もよくわかります。英語も伝わったしポイントも突いてるし、やったな!みたいに思ってました(笑)。


自分では、間違いになかなか気づけない

で、こういった「本来持っている直訳的な意味」とは違った意味合いで使われる言葉やフレーズって、けっこうあります。これは英語に限らず、日本語でも、きっと他の言語でもあることだと思います。

たとえば日本語でも、

う〜ん、その提案は、ちょっと難しいかもしれませんね〜

という場合、真意は「その提案は、ほぼ不可能」ということですよね。

この「ちょっと難しい」は、角が立たないようにやんわりと断る表現なわけですが、そういった日本的な感覚も含めて、知っていないとわからない、直訳では真意を掴むことができないフレーズです。


この手のフレーズって、英語にはごまんとあります。

でも、日本の学校教育では教えてもらえないし、英会話スクールなどでも教えてもらう機会はかなり限られていると思います。例えばネイティブの先生や海外生活経験のある日本人の先生に、「このフレーズって本当はどういう意味?」とピンポイントで聞けば、教えてもらえると思いますが、そもそも疑問を持つこと自体が難しいという問題があります。

そう、自分では、「このフレーズって、本当の意味は違うのでは?」なんて、なかなか気づけないんですよ。そこが本当に難しいところで。


アリアナグランデの「七輪」も……

この問題について考える時に思い出すのが、アリアナ・グランデが「七輪」というタトゥーを入れた件。

日本が好きで、日本語を勉強していたというアリアナ・グランデが、「7 rings」という新曲をリリースした際、そのタイトルにちなんで、「七輪」というタトゥーを自分の手に入れたことが、大きなニュースになりました。

辞書で調べれば、7は「七」、ringは「輪」と書いてありますから、じゃあ7 ringsは「七輪」だということになりますが、その二語をつなげて表記すると炭火焼きのコンロという意味になってしまいます。

これ、日本のネット界隈では笑い話として取り上げられることが多かったようですが、私は身につまされる気がして笑えなかったんですよね。

だって、七輪が「しちりん」になるって、けっこう高度な知識ですよ。いまや一般家庭で七輪を使うところはほとんどないでしょうし、日本人でも若い世代は知らない人が多いんじゃないでしょうか? さらに外国人だったら、七輪という存在に辿りつくのは至難の業という気がします。

ちなみにアリアナは、「七輪」の下に「指❤️」というタトゥーを付け足し、

rip tiny charcoal grill. miss u man. I actually liked u.
サヨナラ、小さな炭火焼きグリル。君のこと、わりと好きだったんだけどね

と自身のInstagramに綴り、とりあえず一件落着となりました。

このアリアナのコメントの健気さ、泣けます……。外国語を習得するのって、こういう精神的なタフさが必要なんだよなと、しみじみ思います。これぐらいのミスは、笑い飛ばせるぐらいじゃないと、やってられませんからね〜。


じゃあ、どうしたらいいの?

こういう「辞書にのっている本来の意味とは違う言葉やフレーズ」は、英語にも山ほどあるわけですが、実際にそういった表現と直面するのは、留学や移住などで英語圏に住むようになってからなんですよね。または、英語が公用語の多国籍企業のような環境とか。

そういった環境で、七輪的ミスを繰り返しながら体得していくことになるわけですが、そしてその数がかなり多いわけなのですが……。

できる対策としては、わりと王道ではありますが、英語のドラマや映画、バラエティ番組なんかを、たくさん観ること。映画やドラマなら、フィクショナルな設定のものよりも、現実に即したもののほうがよいです。

ドラマや映画もいいのですが、個人的にはバラエティ番組やコメディがおすすめ。笑えるし、社会風刺も含まれているのでカルチャー的なバックグラウンドも取り入れやすい。リアリティーショーも良いと思います。NETFLIXなどの有料配信サイトでは、いろんなコンテンツがあるので、いろいろ見てみて自分に合うものを探すと良いのではと思います。

こういった英語コンテンツを山ほど見ていくと、「あれ、このフレーズって直訳と意味違うかも?」といった勘所が、だんだんとつかめるようになってきます。また、英語的な感覚も自然と身についていくので、よいですよ。


この「英語的な感覚」を身につけることが、英語をスムーズに話せるコツとしてかなり大きいのですが、その話はまたの機会に!

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