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【気まぐれ連載】映画でまーる vol.1|2023年4月号|新年度の新しい一歩で挫けそうな時に『フリーダム・ライターズ』|文:アーヤ藍


このコーナーは石垣在住のライター「アーヤ藍」さんによる、「気まぐれ連載:映画でまーる」。人と人との“まーる”い繋がりが見えるような映画や、観終えた時に心が“まーる”くなるような映画をご紹介していきます。映画PRの仕事もされており、映画に関して深い造詣をお持ちのアーヤさんが、コミュニティや、人との繋がり、縁をテーマとした(まーる的な)映画を紹介していきます/不定期配信。(月刊まーる編集部)
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映画『フリーダム・ライターズ』

新年度が始まった4月。
職場環境が変わった人もいれば、お子さんが進学した人もいるでしょう。新たなスタートにワクワクする気持ちがある一方で、不安やストレスを感じることもあるかもしれません。そんな時期にオススメしたいのが映画『フリーダム・ライターズ』です。

舞台は、人種間対立による大暴動が起きて間もない1994年、アメリカ・ロサンゼルス郊外のウィルソン高校。一番成績が悪く問題児が多いとされるクラスへ、新米教師のエリンが赴任します。
白人で恵まれた環境に育ち、理想に燃えるエリンとは裏腹に、生徒たちの多くはヒスパニック系やアジア系、アフリカ系で、貧困と暴力の渦中で日々を生きています。銃を向けられることも珍しくなく、家族や友人を亡くした経験も少なくない生徒たちは、「明日生きているかどうかさえ分からないのに何のために学ぶのか」とエリンに反発します。またクラスの中でも人種間の分断が存在していました。

そんな生徒たちにエリンは2つのものを渡します。一つは『アンネの日記』。過去の歴史から、教室に存在している“小さな差別”の深刻さに気づかせます。もう一つは日記帳。「誰もが物語を持っている(Everybody has a story)」からと…。それまで誰にも言えなかった、あるいは聞いてもらえなかった想いや記憶を、生徒たちは日記に綴っていきます。
その2つを通じて生徒たちは次第にエリンに心を開き、異なる人種のクラスメイトに対する想像力と共感を持ち始め、心から安心できる仲間と居場所をクラスに見出していくようになります。

エリンもまた、生徒との関係性は良好になっていく一方で、周囲の先生たちの反発や嫌がらせを受けたり、学校に時間を割きすぎるがあまり家族との関係性に亀裂が生じたりと、様々な困難に直面していきます。それでも自分の信じる道を貫いたエリンと生徒たちが手にする未来とは…?
実はこの作品、創られた物語ではなく実話に基づいています!そのことを考えながら観ると、より一層胸に迫ってくるものがあるはずです。
新たな環境や出会いのなかで、自分を他者に開くことの難しさを感じたり、自分自身の信念を見失いそうになった時、きっと小さな勇気を届けてくれる作品です。

予告編

映画『フリーダム・ライターズ』
2007年 / 123分 /アメリカ

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この記事を書いた人

Ai Ayah 
ユナイテッドピープル(株)で環境問題や人権問題など、社会的メッセージ性の強い映画の配給・宣伝を約3年手掛ける。2018年春よりフリーで、ライター、イベント企画・運営、映画PR等を行う。石垣市在住。
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