見出し画像

「うたかた」を読んで|読書感想文

まるで少女マンガの世界みたい

読み終わったときに思った。それは

くらもちふさこの世界そのもの。

うたかたをおすすめしたい人
・くらもちふさこのマンガが好きだった/好きな人
・少女マンガが好きな人

私はあとがきを最後に読む派なんだけれど、そこにはこう書かれていました。

あんなに長い間少女漫画を読んでいろいろ勉強したのに、全然役立っていない…とちょっとがっかりしたが、いつか、何かで役立つ日が来るでしょう。

いつかは、くせみたいなものを精一杯押さえながら、きれいで、なおかつ自分の言葉で書けるようになりたいと思う。

うたかた文庫本あとがきから

ばななさんは本作品を書き始めるまえ、少女漫画を読んで勉強をしていたんですね。

ばななさん、私にはしっかり伝わりましたよ。少女マンガ(くらもちふさこ)を読んでドキドキしたあの感覚を思い出しました。とても良かったです。

あらすじ


主人公のなまえは​鳥海人魚とりうみにんぎょ、生まれたときから母親とふたり暮らし。

人魚にはお父さんがいるが、一緒に住んでいない。父はとなり町に住んでいる。人魚は自分は妾の子だと信じている。

父方に男の子がいる。母親は人魚に「その男の子はあなたのお兄さんよ」と言われる。

そのお兄さんのなまえは嵐。幼いころから兄の存在を聞かされたが会うことはなかった。

人魚が18歳の時、偶然嵐とはじめて出会う。
嵐に強く惹かれてしまう人魚。

お兄さんだから特別な気持ちを持ってはいけないと思いつつ、好きになっていく人魚。

感想


くらもちふさこの漫画にも”いけない恋愛”がありましたよね。例えば、先生と生徒の恋愛。兄と妹の恋愛…。
(真相は漫画を読んで確かめてね)

どうして私たちは”いけない恋愛”にこうも惹かれてしまうのでしょう。


“いけない恋愛”ばなしは好きですね。

恋をすると日常が非日常にかわる


きっと誰でも経験したことがある恋の気持ちが小説のいたるところに散りばめてあります。

自然にふんわり思い出せてくれるのです。

「あーこんな気持ちだったよなあ」

「そうそうこんな時、あったよなあ」

それはとても懐かしくて幸せな感情が湧いてきます。

印象に残った文章を引用しますね。

彼と言葉を交わした瞬間、突然世間に色がついたので私はびっくりしていた。
寂しさというのは、いつの間にか、気がつかないうちに人の心にしみてくる。
ふと目覚めてしまった夜明けに、窓いちめん映るあの青のようなものだ。

うたかたより

18歳の自分が友達とがんばろうねと素直に言い合える気持ち


「頑張ろうね」と言われて、素直にうん頑張ろうと思う時と
「はあ?ほざくな」と心の中で思う時がある。

それはたぶん、自分が歳をとったことで複雑な気持ちが絡み合っているせい。

18歳の人魚が友人とお互いの恋愛事情を話す場面がある。そして友人が人魚に

「がんばろうね!」と言う。

友人に対しての人魚の言葉を引用したい。

私は嬉しかった。
こうゆう瞬間に、はっとわかる。確信できる。
私の人生が動きはじめている、絶対に動いている。
今までよりずっと多くのことが飛び込んできて、
揺れが止まらない。
きっと、わたしはわかりはじめている。

うたかたより

友人からの「がんばろうね」の言葉をすなおに受けとめていた自分を思い出す。

友達に頑張ろうねと言われると、きっとうまくいく!という妙な自信みたいなものが湧いていたよな。
あれはいったいなんだったのかな。そして、あの気持ちをまた取り戻したいなって思いました。

人は死ぬまでひとりだ


人魚のお父さんが言った言葉が心に残ります。

幸せっていうのはな、死ぬまで走り続けることなんだぞ。
それに家族はどこにいてもひとつだけど、人は死ぬまでひとりだ、わかったか

うたかたより

人は死ぬまでひとり。

私のおばあちゃんが死んだとき、泣いてばかりいる私に母が言った言葉と重なりました。

母の言葉:人は必ず死ぬの。ひとりで死ぬの。

私の両親にも私にも必ずその日はやってくる。怖いね。その日が。それしか言えないね。でもその気持ちもみんな一緒だよね。

今日はここで終わりにします。どうもありがとうございます。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?