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看護師のゆーこちゃん

この話は、フィクションです。

私は一年に一度、ささやかながら人様のお役に立ちたいと、献血を心がけている。

今年も5月に、いつものように献血ルームへ行ってきた。

そこで採血をする看護師さんが友達に似ているなーと思って名札を見ると、やっぱり、ゆーこだった。

高1、高2の時のクラスメートのゆーこ。
グループは違ったが、修学旅行のバスでは隣同士だったし、部活がない日は一緒に帰ったりした。

高校を卒業してしばらくは会っていたけど、ここ最近は連絡も取り合っていなかった。 

私はバスケ部で、ゆーこは茶道部だった。
ゆーこは、運動は苦手で地味だったけど、目立たなかったわけではない。

胸が大きかった。
学年1と噂されていた。
(といっても、他の学年のことはわからない)

9月の最初の週には水泳大会があって、ゆーこの姿を目にした男子たちからは、「おおー」っとどよめきが上がり、すぐ近くにいた男子は「デカい」と呟いた。

水泳大会は、全員が何かの種目に参加しなければならなかった。

あまり泳ぎが得意でない生徒のために25m 平泳ぎの種目が用意されていて、ゆーこはそれに出場したのだが、その中でもダントツ遅かった。

何とか泳ぎ切りプールから上がると、なぜか拍手が起こった。女子もそれにつられて拍手した。

ゆーこは、恥ずかしそうに俯いて私たちのところへやってきた。

男子はまた、冬のマラソン大会も楽しみにしていた。だが、ゆーこは、ゴールに現れなかった。

ゆーこは、自分が注目されるのが嫌で、胸を包帯でキツくぐるぐる巻きにしていたのだ。
そのため、走り出してすぐに具合が悪くなり、保健室で休んでいた。

献血中少し言葉を交わし、後日ランチすることになった。

ゆーこは看護の専門学校を卒業した後、総合病院で働いていたそうだ。産婦人科を希望したのに配属されたのは脳神経外科で、大変だったらしい。

意識のない患者さんが多く、亡くなる人もたくさんいた。常に忙しく、ゆーこはだんだん食欲もなくなり、疲れているのになかなか眠れなくなってしまった。

辞めて別の仕事をしようかな、と考えている時に献血ルームの募集を見つけたそうだ。

採血は得意な方だったらしい。

「それにね」と、ゆーこ。
「私、胸が大きいでしょ。だから、それに気を取られている間に、針を刺すの」
「みんな、全然痛くなかったって。採血の女王って呼ばれているの」
屈託なく話すゆーこ。

確かに、全然痛くなかった。
ゆーこかどうか顔と名札を見比べていたから。
そして、胸も。
天職だね、ゆーこ。

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