さくっと理解!ギリシャ神話
お世話になっております。まるです。
今回は最近勉強しているギリシャ神話について、概要をさくっと掴むための記事を書いてみました。
よければお時間ある時に読んでいただけると幸いです。
ギリシャ神話を学ぶ前に
ギリシャ神話(ローマ神話)って何?
古代ギリシアで語り継がれてきた、神々や英雄についての物語
ローマ神話もほぼ内容はギリシャ神話。というのも、ギリシャがローマに吸収された後は、ローマの人々が自分たちの信仰している神とギリシャ神話の神々を同一だと考えたため。
ただし神の読み方が異なる(例:ゼウス → ユピテル)ほか、細部で異なる点もある(例:ローマ神話ではエロスがアフロディテの子になっている、など)
欧米の多くの文学や美術作品に影響を与えている。
ギリシャ神話を学ぶメリットは?
欧米の文学・美術作品の、理解への大きな助けとなる。
特に絵画や彫刻に関しては、ギリシャ神話を元にしている作品も多数あるため、ギリシャ神話を学んでから美術館に行くと「あー、これの元ネタはあれね!」となってめちゃくちゃ楽しくなる。
漫画やアニメ、ゲームでもギリシャ神話が引用された作品がちらほらある。
ギリシャ神話を学ぶ障壁は?
登場キャラが多すぎる上に関係性がややこしい。
とにかく神やら人やらが子作りしまくってどんどん登場キャラが増えていく上に、それぞれのキャラに色々な物語が伴っていて、覚えるのが大変。
一つ一つの物語を熟読すると、全体の流れを忘れてしまっていることもしばしば。
この記事の役割は?
膨大なギリシャ神話の物語の中から、大事なところだけを説明することで、全体の流れを理解できるように書きました。
物語について想像がしやすいように、所々に有名な絵画を挟んで説明しています。
まず流れを掴んでから、気になるところを参考資料などで補強していくことを想定して記事を作っています。
オリュンポス十二神
オリュンポス十二神とは?
ギリシャ神話に出てくる12柱の最重要キャラ達。
各キャラクターの名前と特徴を押さえておくと、ギリシャ神話がものすごく理解しやすくなる。
ゼウス ー 女大好き最高神
最高神。オリュンポス十二神の中で一番えらい。
正妻(女神ヘラ)がいるが、とんでもなく好色なので浮気しまくる。気に入った神や人をさらったり孕ませたり好き放題。
どんなエピソードがあるかというと…
牡牛に変身して気に入った少女エウロペを誘拐して孕ませる
婚約者がいる女性アクルメネと関係を持つため、夫(アンピュトリオン)に変身してして騙し、孕ませる(この時生まれた子が英雄ヘラクレス)
幽閉された王女ダナエを孕ませるため、黄金の雨となり彼女に降り注ぐことで孕ませる(この時生まれた子が英雄ペルセウス)
男もイケる口なので、大鷲に変身して、トロヤの王子である美少年ガニュメデスをさらう。
その他にももろもろの浮気エピソードが盛りだくさん…
正妻のヘラがとにかく嫉妬深いため、浮気相手やその子孫には災厄がもたらされる(後述)。
ヘラ ー 嫉妬しまくるゼウスの正妻
最高神ゼウスの姉にして正妻。
結婚・出産・家庭生活の守護神。
嫉妬深く、暴力的で、復讐心が強い。そのため、ゼウスの浮気相手やその子どもに災厄を与えてきた。
ゼウスの愛人の女神レトが子どもを産む時、世界中のすべての土地で子どもを産むことを禁止させる。
ゼウスの愛人セメレを騙して、ゼウスの持つ灼熱の雷の熱で焼き殺す。
ゼウスの愛人セレメとの子ディオニュソスを母親の代わりに育てた女性イノを狂わせ、二人の息子のうちの一人を射殺し、一人を茹で殺させ、その死骸を抱いて海に身を投げさせる。
ゼウス愛人アルクメネとの間の子ヘラクレス(英雄として有名)を発狂させ、自分の子らを殺させる。
などなど…
アポロン ー 不幸体質の予言神
光と予言の神。ゼウスの息子。女神アルテミスの双子の弟
人間が神からの信託を受ける時は、世界の中心(デルポイ)にある神殿でアポロンから信託を受ける。
割と無慈悲で、特に自分と神の違いをわきまえない愚か者は大体殺す。
マルシュアスという名のシレノス(上半身が人間で、二本の馬の足としっぽを持つ精霊)とのエピソードは特に有名。
マルシュアスは自分のことを世界一の音楽家だと思い込み、アポロンに技比べを申し込んだことがあった。当然アポロンが勝ち、マルシュアスは負けた罰として生きたまま体の皮を剥ぎ取られた。
誰かに恋すると何故かだいたい悲劇に終わる不幸体質。
恋したニンフ(自然界に宿る女性の精霊)のダプネを追い詰めて樹に変える。
愛していた美少年ヒュアキントスと円盤投げを楽しんでいる時、アポロンが投げた円盤が西風の神ゼピュロスに妨害されて美少年にぶつかり、死亡させる。
愛していた美少年キュパリッソスが、自分の可愛がっていた牡鹿を誤って殺してしまい、生きることに絶望して糸杉の木になってしまう。
アルテミス ー 処女を貫く狩猟の女神
純潔と狩猟の女神。ゼウスの娘。アポロンの双子の姉。
潔癖な処女神なので、男を決して受け入れない。
うっかり男に裸を見られようものなら、八つ裂きにして殺す。(アクタイオンの死)
アポロン同様、思い上がった人間に対しては非情。
「私はアルテミスの母(レト)より子福者だ」と自慢していた王妃(ニオベ)がいたので、アポロンと一緒に王妃の子どもを皆殺しにする。王妃は悲しみのあまり石になる。
ヘルメス ー 厚顔無恥な神の使者
ゼウスの息子。嘘と泥棒と商業と牧畜の神であり、神の使者の役割も司る。
「嘘と泥棒」が入っている通り、割と神の中でも厚顔無恥なとこがある。
生まれた瞬間にアポロンの飼っていた牝牛を盗む。アポロンは予言の神なので犯人がヘルメスであることを見通していたが、ヘルメスは平気でシラを切り続ける。その後、二人はゼウスによって仲裁されたのち、ヘルメスはステュクスの泉の水(後述)に「この先アポロンのものを盗まない」という神々でも破れない誓いを立てたことで二人は仲直り。無二の親友となった。
技術の神ヘパイストスが、妻アフロディテと戦争の神アレスのあられもない浮気現場をとらえて公開処刑したとき、その現場を見て「アフロディテと一緒になれるならもっと恥ずかしい目にあってもかまわない」と言う。
旅人の保護者でもあり、死者の魂を冥府へ案内する役割も果たす。
アテナ ー 英雄を助け続ける戦いの女神
知恵と戦いの女神。また機織りの女神としても有名。
ゼウスと知恵の女神メティスとの間の娘だが、アテナを産んだのはメティスではなく、ゼウス。
ゼウスはメティスの夫だったが、祖母のガイアに「いずれメティスから生まれる男子から王の座を奪われる」と予言されていた。
そこでゼウスはメティスを騙して水滴に変身させて飲み込んだ。しかしその時には既にメティスは女の子を妊娠していた。
その子はゼウスの体内ですくすく育ち、やがてゼウスの頭をかち割って誕生する。それがアテナ。
神話に登場する数々の英雄を助ける。
ペルセウスのメドゥサ退治を助けたり
ヘラクレスの冒険を助け続けたり
知恵の女神メティスの子から賢さを引き継ぎ、さまざまな発明も行った。機織りの女神であるのもそのため。
アレス ー 野蛮な戦争の神
戦争の神。ゼウスとその妻ヘラの息子。
前述のアテナも戦いの女神だが、アテナは戦場を戦士が武勇を発揮する場として捉えるのに対して、アレスは血みどろな死闘をしてるのを楽しみとしていた。
要するに野蛮なので、他の神々から嫌われがち。父親のゼウスからも「オリュンポスの神の中でお前が一番嫌いだ」と言われるほど。
でも野生的でたくましい美男子だったので女受けは良く、後述する女神アフロディテの愛人でもあった。
アフロディテ ー 男根生まれの美の女神
美と愛の女神。とんでもなく美女。
出自がかなり独特。ゼウスのおじいちゃんに当たる神ウラノスが男根を刈り取られて海に捨てられた時(!?)、男根から白い泡が出てアフロディテが誕生する(詳細は後述)。
旦那はブサイクで有名な技術の神ヘパイストス。当然釣り合うはずもなく、色々浮気する。戦争の神アレスも愛人の一人。
なぜこんな美女とブサイク神が結婚したかは後述。
ヘパイストス ー 超絶ブサイクな技術の神
技術の神。オリュンポス十二神の中で唯一のブサイク。
ブサイクなのにも関わらず、奥さんは美の女神アフロディテ。これには色々と経緯がある。
女神ヘラの息子。ゼウスは自分の頭から一人で女神アテナを産んだが、それを見た妻のヘラが憤慨し、ゼウスを真似て自力で産んだ。
ところが生まれた息子はブサイクな上に足が不自由。ヘラは他の神に息子が見つからないうちに下界に投げ捨てる。
なんとか助かったヘパイストスは、成長した後でヘラに復讐。座ると透明な鎖に縛られる玉座を作ってヘラに送り、ヘラを身動きできない状態にする。
困った神々はヘラを解放することを条件に、ゼウスはヘパイストスをオリュンポスに迎え入れると共にアフロディテを妻として与える。
デメテル ー 娘が大好き農業の神
農業の女神。ゼウスの姉であり愛人。
ゼウスとの間の娘、ペルセポネに関するエピソードが有名。
ある日、ペルセポネは冥界の王ハデスにさらわれる。ペルセポネをハデスの妃にしたいと考えたゼウスは、その時ハデスに協力した。
デメテルはそのことを知り、ゼウスに激怒すると共に神々から離れて、人間に変身して地上を放浪した後、神殿に閉じ籠り農業の女神の役割を果たさなくなる。
そのせいで大地からは作物が生えなくなる。困ったゼウスはハデスにペルセポネを返すよう要求する。
ハデスはそれに応じたが、ペルセポネを天界に返す前に口にザクロの実の粒を押し込んで食べさせる。死者の国の食べ物を口にしたペルセポネは冥界との縁を切れなくなった
そこでゼウスはデメテルとハデスの双方が満足するように、ペルセポネをハデスの妃として冥界の女王にした上で、1年の3分の1を冥界で過ごせば残りの3分の2を地上でデメテルと過ごして良いこととした。
これにより、ペルセポネが地上にいる間はデメテルが喜びに溢れて作物が実り、彼女が冥界に帰る期間はデメテルは悲しみに暮れて暗い冬が訪れるようになった。
ポセイドン ー 最高神の兄であり海の神
海の神。ゼウスの兄。
その昔、ティタノマキアと呼ばれる神々の戦争(後述)に勝利したゼウス、ポセイドン、ハデスたちは世界を分けた。その結果、ゼウスは天界を、ポセイドンは海を、ハデスは冥界を司ることとなった。
ヘスティア ー 引きこもりのかまどの女神
かまどの女神。ゼウスの姉。
かまどで燃える火を司っているため、世界中を飛び回って活躍する他の神々と違って、決して動かない。
動かないのでほとんど神話の中で活躍しない。
その他重要キャラ
オリュンポス十二神ではないが、負けを取らないくらいギリシャ神話で大切なキャラクターを紹介します。
ディオニュソス ー 狂った祭りを生み出した酒の神
自然の豊穣と葡萄酒の神。父親はゼウスだが母親は人間セメレ。
セメレはゼウスの子を孕んだ後、ゼウスの正妻ヘラ嫉妬された結果、悪巧みにより焼き殺される。ゼウスは死んだセメレから子を取り出し、自分の太股に縫い付けて成長させることで誕生させる。この時の子がディオニュソス。
通常、神と人の子は不死ではないが、ディオニュソスは最高神ゼウスの体内で成長し、生まれたことから、不死の神となる。
「ディオニュソスの祭り」と呼ばれる、信女が狂って酒を飲みながら踊り乱れる祭りを考案する。
この祭りをしている女たちは怪力を持ち、武装した男たちも敵わず、獣を素手で捕まえて八つ裂きにして、血を啜り肉を生のままで食べる。
酒と女が好きな、森と山の精霊サテュロスからもディオニュソスは好かれた。
ハデス ー 最高神の兄であり冥界の王
死者の国である冥界の王。
兄弟のゼウスとポセイドンはオリュンポス十二神に入っているが、ハデスは冥界からほぼ出ないため十二神には入らない。
妃はゼウスと女神デメテルの娘であるペルセポネ。
ペルセポネを巡るエピソードはデメテルの項目を参照。
エロス ー 男女を結びつける愛の神
愛の神。エロスより英語名のキューピッドのほうが知れ渡っている。
世界の始まりの際、大地ガイアと共にカオスから誕生する(後述)
ただし時代が下っていくに連れて、エロスはカオスから誕生したのではなく、美の女神アフロディテの子として考えられるようになった。
黄金の矢と鉛の矢を持っている。黄金の矢で射られた者は、その直後に見た者にたちまち恋に落ち、鉛の矢で射られた者は、逆に嫌悪感を抱いてしまうという力を持っている。
ステュクス ー 神々も破れない誓いの泉
女神ガイアとウラノスの子たちティタン(後述)の一人である、オケアノスの長姉
ゼウス軍とティタン軍による戦い、ティタノマキア(後述)の際に真っ先にゼウス軍に加担したため、「ステュクスの泉の水にかけた誓いは神々も破ることができない」という特権を与えられる。
また、英雄アキレウスが踵以外どんな武器でも傷をつけることのできない身体であったのは、生まれた時に踵を持ってステュクスの泉に浸されたからだという説もある。
ニンフ ー 自然に宿る女性の精霊
川や海、山、樹木など自然物に宿る女性の精霊たち
サテュロス ー 好色な自然の精霊
森と山の精霊たち。
外見は馬や山羊に似ており、非常に好色。しばしばニンフを追いかけ回す。
世界の始まり
この章では、世界が始まってからゼウスが最高神になるまでの流れを追っていきます。大きく見ると
世界がはじまり、ティタンが誕生する。
ウラノスが去勢され、クロノスが神々の王となる。
クロノスが自らの子を飲み込むが、ゼウスが助ける。
ゼウス軍とティタン軍に別れ戦い、ゼウス軍が勝利(ティタノマキア)
ゼウス軍が怪物たちと戦い(ギガントマキアとテュポンとの戦い)、勝利することでゼウスが神々の王としての地位を確立する。
という流れになります。順番に詳しく見ていきましょう。
ティタンの誕生
世界のはじめには、神々に先立ちカオスと呼ばれる無秩序で巨大な淵があった。
カオスの次に、大地の女神ガイア、暗黒界の男神タルタロス、愛の神エロス(英語名:キューピッド)が生まれる。
ギリシャ神話の初期の頃はこのタイミングでエロスで生まれたことになっているが、時代を経るにつれてエロスは美の女神アフロディテの子と見なされるようになる。
その次に、ガイアは一人で天空神ウラノスらを生み出す。このウラノスがゼウスの祖父に当たる。
その後、ガイアはウラノスと結婚し、男女6人ずつの子を産む。ここで生まれた12柱の神々がティタンと呼ばれる。ティタンの一員であるクロノスはゼウスの父親に、レイアは母親にそれぞれ当たる。
ウラノスの去勢
ガイアはティタンの次に異形の息子たちを産む。
キュクロプス:額の真ん中に丸い目を一つだけ持った三人の巨人。鍛治の名手。
ヘカトンケイル:五十の頭と百本の怪力の腕を持った怪物
彼らの父であるウラノスはこの不気味な息子たちを嫌い、地底奥深くへと閉じ込める。
ガイアはこのことに激怒し、ティタンに復讐を命じる。この役目を買って出たクロノスはウラノスを待ち伏せる。ウラノスがガイアに欲情して地上に降臨し、彼女に覆い被さろうとしたとき、クロノスはウラノスの男根を鎌で刈り取り、海へ投げ捨ててしまう。
この時の投げ捨てられたウラノスの男根から生まれたのが前述の美と愛の女神アフロディテ。
男根を失ったウラノスはガイアの夫ではいられなくなり、権威も失墜。代わりにクロノスが神々の王となり、ティタンたちと世界を支配することとなる。
クロノスの狂乱
神々の王となったクロノスはティタンである姉のレイアと結婚し、二人の間には女神であるヘスティア、デメテル、ヘラ、男神であるハデス、ポセイドンが生まれた。しかしクロノスは、生まれた我が子を片端から飲み込んでしまう。
というのも、クロノスは父ウラノスから「レイアから生まれた子の一人に王の地位を奪われる」と予言されていたため。
新たな子(ゼウス)を身籠ったレイアは、この子だけは助けたいと願い、母のガイアの助言を得て、クレタ島という島で密かに出産。その後、石を産着で包んでクロノスの元へ帰る。クロノスはその石を我が子と思い込んで、レイアから奪って飲み込んだ。ゼウスはそのままクレタ島で育つ。
ゼウスはそのままクレタ島で育つ。ゼウスは成長後、クロノスに飲み込まれた兄姉を助けるため、知恵の女神メティスに助言を得て、クロノスに吐き薬を飲ませて兄姉たちを救出する。
ティタノマキア
ゼウスは成長後、父クロノスに飲み込まれた兄姉を助けるため、知恵の女神メティスに助言を得て、クロノスに吐き薬を飲ませて兄姉たちを救出する。
ゼウスは救出した兄のポセイドンとハデスと協力し、自分に味方してくれる神々を集め、クロノスを王と崇めて世界を支配していたティタンたちと闘った。この闘いはティタノマキアと呼ばれ、10年経っても勝負がつかなかった。
そこでゼウス軍はガイアの助言を得て、地下に閉じ込められたままのキュクロプスとヘカトンケイルたちを救出。この時、鍛治の名手であったキュクロプスたちは協力な武器を作る。
ゼウス:無敵の威力を持つ雷
ポセイドン:三叉の矛
ハデス:被ると姿が見えなくなる兜
ゼウス軍はキュクロプスやヘカトンケイルの協力のもと、最終的に勝利。クロノスとティタンたちは地底の暗黒界タルタロスに閉じ込められ、ゼウスが神々の王となる
ティタン軍の中では、オケアノスやその長姉ステュクスはゼウスの味方をしたため罰せられなかった。特にステュクスはゼウスから「ステュクスの泉の水にかけた誓いは神々も破ることができない」という特権を与えられた。
ティタン軍の中でも特にゼウスたちを苦しめたアトラスには、未来永劫、世界の西の果てで天空を支え続けるという特別に過酷な罰が与えられた。
ギガントマキアとテュポンとの戦い
ガイアは、ゼウスがティタンたちを暗黒界タルタロスに閉じ込めたことに激怒した。というのも、ティタンたちもガイアの子どもであったため。
ガイアはまずギガンテスと呼ばれる巨人たちを産み、ゼウスたちと戦わせた。これがギガントマキアと呼ばれる戦いとなる。ギガンテスたちは神々の力だけでは倒せなかったが、英雄ヘラクレスの力借りることでこれに勝利。
次にガイアはデュポンという怪物を産み、ゼウスたちと戦わせる。これも激戦の上、勝利。
今までのガイアの立ち位置を振り返ると…
世界の始まり:自身の子ウラノスを夫にして世界の支配者とさせる。
ウラノスの去勢:クロノスに命じてウラノスを去勢させて、クロノスを神々の王にする。
クロノスの狂乱:生後すぐのゼウスを助けた上に、ティタノマニアでゼウス軍に援助し続けることで、ゼウスを神々の王にする。
ということで、ガイアは世界に君臨する神を思い通りに取り替えてきたが、ゼウスに対してはそれができないことをガイアは覚る。こうしてゼウスは神々の王としての地位を確立した。
人間の始まり
この章では人間が誕生してから現代の人類に至るまでの5つの区分について解説。
5つの区分はそれぞれ、黄金の種族、銀の種族、青銅の種族、英雄の種族、鉄の種族と呼ばれる。
黄金の種族
世界で初めての人類は黄金の種族と呼ばれ、クロノス王がティタンたちと世界を支配していた時代に誕生。
このころから人類には寿命があり、このことが神々と人間の大きな違いだった。また、神々は始まりから男神と女神が分かれていたのに対して、人間は男しかいなかった。それ以外は割と神と人間の区別ははっきりしていなかった。
黄金の時代の人間は、老いることがなく、病気もその他苦しみも悲しみもなく、必要なものはなんでも大地が与えてくれたため、神々のような幸せな暮らしをしながら遊んで暮らしていた。
やがて寿命が尽き、安らかに死んで地上から消えた。
銀の種族
ゼウスにより作られた、黄金の種族の次の人類が銀の種族。
黄金の種族より劣っており、成人するまで100年かかり、その後すぐ死ぬ。また神々を崇めなかったので、怒ったゼウスに滅ぼされた。
青銅の種族
銀の種族の次に、ゼウスにより作られる。この種族は生まれつき狂暴で怪力を持ち、気性が荒いため戦争だけを繰り返して暮らしていた。
青銅の種族で起こった大イベントは以下の3つ
プロメテウスの欺き
パンドラの甕(かめ)
大洪水
大事なので順番に解説していく
青銅の種族のイベント1 ー プロメテウスの欺き
プロメテウスはティタンのひとり、イアぺトスの息子であり、天界を未来永劫背負わさられる罰を受けたアトラスの兄弟だった。彼はティタノマキアでゼウス軍に味方したものの、ゼウスには心腹しておらず、いつか一泡吹かせたいと考えていた。
ゼウスが神と人間の区別をはっきりさせ、神に良い運命を、人間に悪い運命を授けようと思っていた頃、プロメテウスはゼウスの計画をあべこべに狂わせようと罠を仕掛ける。しかし、その罠はゼウスに見破られた上にうまく逆手にとられて、ゼウスの計画通り神と人間の区別を明確にするのに利用されてしまう。
ゼウスは自分を罠に嵌めようとしたプロメテウスへの罰として、プロメテウスが良い運命を与えようとした人間の運命をより一層過酷にした。具体的には、働かなくても自然の恵みを得られるという特権を人間から取り上げ、かつそれまで人間が自由に使っていた火を天井に持ち去った。
プロメテウスは、天界に持ち去られた火を巧みに盗み出して人間に返した。これに激怒したゼウスは、不死のプロメテウスを柱に縛り付け、毎日肝臓を大鷲に食べさせ続けた。またゼウスは人間に災厄をもたらすため、男を惑わせる存在として人間の女を造ることにした。
青銅の種族のイベント2 ー パンドラの甕
プロメテウスが天界から火を盗んだ罰として、ゼウスはオリュンポスの神々を総動員して女を造る。
ヘパイストス(技術の神):女神のような美しい乙女の身体を造る。
アフロディテ(美の女神):男を惑わせる女の魅力を注ぐ。
アテナ(機織りの女神):自分の身体をさらに魅力的に見せる衣装を造る。
ヘルメス(嘘と泥棒の神);泥棒と嘘つきの性分を女の本質として吹き込む。
そうしてできた人間の女はパンドラと名付けられる。
「パン」はすべて、「ドラ」は贈り物の意味なので、すべての神々からの贈り物という意味。
パンドラはプロメテウスの弟、エピメテウスに贈られ、二人は結婚。
ある日パンドラは、エピメテウスの家の中で大きな甕を見つけ、つい蓋を開けてしまう。すると甕からは人間の苦しみと死の原因となるあらゆる災いが飛び出し、世界中に広まった。この時から人間は災いに苦しめられることになる。
パンドラが慌てて蓋を閉めた時、甕の中に唯一残ったものが希望だった。このため人間は、どんな災いに苦しめられても、自分のうちにある希望を励みに生きることができるようになった。
青銅の種族のイベント3 ー 大洪水
ゼウスは当時、青銅の種族たちが狂暴で、殺し合いばかりしていることに愛想をつかしていた。そのため、彼らを大洪水で滅ぼして、新しい種族の人類を生み出そうする。
ある夫婦デウカリオンとピュラは二人とも品行方正で敬虔な人間だったため、ゼウスこの二人から新しい人間の種族を発生させることにした。
この夫婦だけはあらかじめ大洪水のことを知らされており、二人は頑丈な箱舟を造って避難した。その後ゼウスは激しい豪雨を降らせ、ポセイドンは地震と津波を起こし、この夫婦以外の人間は全て滅亡した。
デウカリオンとピュラはその後、ゼウスの信託に従い、歩きながら石を肩越しに投げた。投げた石は人間へと変化した。こうして二人は次々に人類を生み出し、英雄の種族が誕生する。
英雄の種族/鉄の種族
英雄の種族は、現在の人類の先祖。人間離れした優れた能力を持ち、神との関係も極めて良好だったが、英雄たちの活躍が大地の女神ガイアの重荷になったために、トロヤ戦争などを通じて滅ぼされた。
英雄たちの物語の紹介は後述。
鉄の種族は、現代の人類。神との直接的な関係は無くなる。
英雄たちの活躍
この章では、英雄の時代に活躍した人間たちを紹介。
一人一人紹介するとキリがないため、特に有名なペルセウス・テセウス・ヘラクレスの3人を紹介する。
ペルセウス ー メドゥサを退治した英雄
ペルセウスの母は、アルゴスの王女ダナエ。ダナエの父アクリシス王は「ダナエの産む子に殺される」という信託を受けたため、ダナエを幽閉していたが、ダナエの美しさに目をつけたゼウスが黄金の雨となり屋根の隙間からダナエに降り注ぎ、ペルセウスを妊娠させる。そのことに気づいたアクリシス王は、ダナエとペルセウスを海に流す。
二人はセリポス島に漂着し、無事に助けられる。ところがダナエの美しさに目をつけた島の王ポリュデクテスが、ダナエを自分のものにしようとする。ペルセウスはそれを必死で守る。
ペルセウスを疎ましく思ったポリュデクテス王は彼を排除させるために企みを図り、ペルセウスにゴルゴンの首を差し出すことを約束させる。
ゴルゴンは三姉妹の怪物。神は生きた蛇で空を自在に飛び、見る者を石にしてしまう。姉の二人は不死で、殺すことができるのはメドゥサのみ。
ペルセウスは二人の神ヘルメスとアテナにゴルゴン退治を助けてもらう。ヘルメスからは空を飛べるサンダルと鋭利な鎌、そして冥府の王ハデスから借りた、被ると姿が見えなくなる兜の3つを受け取る。またペルセウスはアテナの助けを借り、メドゥサの居場所を突き止める。ペルセウスはメドゥサが眠っている隙をついて、その首を刈り取り、そのまま持ち帰った。
ペルセウスが母ダナエの元に帰る途中、エチオピアで海の怪獣を倒すことで、エチオピアの王女アンドロメダを妻としてもらう。
ペルセウスがアンドロメダと共にダナエの元に帰ると、ちょうどポリュデクテス王とその家来たちがダナエを取り囲んでいるところだった。怒ったペルセウスはメドゥサの頭を取り出し、ポリュデクテス王とそのたちを石に変える。
その後、ペルセウスは母と妻を連れてティリュンスの王となり、ヘラクレスなど大勢の英雄たちの祖先となる。
テセウス ー ミノタウロスを退治し、迷宮を攻略した英雄
ミノタウロスは、ポセイドンの怒りによって狂わされたクレタ島の王妃と牡牛の間にできた子で、頭は牡牛、身体は人間の怪物。
化け物が生まれたことに困惑したミノス王は、天才技術者ダイダロスに銘じて、一度入ったら二度と出られない迷宮を作らせて、そこにミノタウロスを幽閉した。そしてアテネから、毎年少年少女をミノタウロスのために差し出すように命じた。
アテネ王の息子テセウスは、この生贄を阻止するためにミノタウロスを退治しようと自ら志願して、生贄としてクレタ島に来る。
迷宮に入ったテセウスは、ミノタウロスを見つけて退治する。そして入り口に結びつけておいた糸玉の系を手繰ることによって、決して出ることができないはずの迷宮を脱出することに成功した。
ヘラクレス ー 十二の難業を成し遂げ、神となった英雄
ゼウスはギガントマキアが起こる前、この戦いが神々だけでは勝利できず、人間の協力が不可欠であることを知っていた。そのためゼウスはあらかじめ人間の女性との間に人間の子をもうけることにした。この子が後の英雄ヘラクレスとなる。
ゼウスが目をつけたのはミュケネの王女アクルメネ。婚約者がいて貞操が堅固だったため、ゼウスは婚約者になりすましてアクルメネと関係を持ち、ヘラクレスを妊娠させる。
ヘラクレスは生まれて成長した後、故郷のテバイで大きな手柄を立て、テバイの王女メガラを妻として与えられる。妻との間に何人もの子どもをもうけて幸せに暮らす。
これをよく思わなかったのが、ゼウスの正妻ヘラ。愛人の子が幸せに暮らす姿に激怒したヘラは、ヘラクレスを発狂させ、我が子を全員殺させた。
正気に戻ったヘラクレスは愕然とし、アポロンの信託に何をすれば罪滅ぼしになるかを尋ねたところ、「ティリュンスのエウリュステウス王に仕えて、王が命じる十の難業を果たさなければならない。それらができればば不死となり、天上の神々に仲間入りできるだろう。」という神託が与えられる。
ヘラクレスは王から命じられた難題を次々とこなし、達成する。神託で与えられた難業は十だったが、そのうち二つはノーカウントとなり、結局合計で十二個の難業を成し遂げる。
難題の例は以下の通り。
怪物のライオンの皮を剥ぎ取る。ヘラクレスはこれ以降、剥ぎ取った皮を身にまとい、怪物の頭を兜の代わりに被るようになる。
猛毒の水蛇ヒュドラを退治する。ヘラクレスはヒュドラを退治すると、その猛毒の血を自分の矢の矢尻に浸して、猛毒の矢を作った。
冥府の番犬ケルベロスを王の前に連れてくる
などなど…
その他にも上述のギガントマキアでのゼウス軍への協力など、さまざまな活躍をする。
ヘラクレスは最期、罠に嵌められて毒に侵される。自分の死を悟ったヘラクレスはオイタ山の山頂に自分を運ばせて、火葬させる。すると人間の母から受けていた可死の肉体が焼き尽くされるとともに、ゼウスから受け継いだ不死の部分が完全に解放され、神々の仲間入りを果たすこととなる。
トロヤ戦争
英雄の時代が続くにつれ、英雄たちの数がどんどん増え、大地の女神ガイアの重荷となり、大地の荷を軽くするようゼウスに訴えた。
そこでゼウスは、英雄たちが大好きな戦争を起こし、彼らが殺し合った末に滅びるように導くことを決めた。
トロヤ戦争はそんな戦争の中でも最も有名なもの。
へレネとメネラオスの結婚
ゼウスはまず、英雄たちが夢中になり、殺し合いをせざるを得なくなるような絶世の美女を地上に誕生させようとする。そのため、女神ネメシスを抱擁し、絶世の美女へレネを誕生させた。
へレネが妙齢になると、様々な英雄がへレネに求婚した。そこでへレネは求婚者たちに「誰が婿に選ばれても意義を唱えず、結婚に害する者があれば、全員で協力してへレネの夫を助ける」ということを誓わせた上で、自身でメネラオスという男を夫を指名し、結婚する。メネラオスはその後、スパルタの王となる。
英雄アキレウスの誕生
ゼウスは絶世の美女を誕生させると同時に、これから起こる戦争の花形となる無双の英雄も誕生させたいと思っていた。
そこでゼウスは女神テティスと英雄ペレウスを結婚させる。二人の間に生まれた息子はアキレウスと名付けられる。
アキレウスを不死にしようとしたテティスは、冥界に湧いているステュクスの泉にアキレスを浸す。この時テティスがアキレウスの踵を掴んでいたため、そこだけ神聖な水に浸からなかった。アキレウスはこのため、踵以外はどんな武器でも傷をつけることのできない身体を手に入れたが、不死にはなれなかった。
アキレウスがこのような身体になった理由は諸説あり。
パリスの審判とトロヤ戦争の勃発
アキレウスの両親である女神テティスと英雄ペレウスが結婚した際、神々はみな祝福に訪れたが、争いの女神エリスだけは呼ばれなかった。仲間外れにされたエリスは激怒し、神々の集まりの中に「一番美しい女神への贈り物です」と記された金のリンゴを投げ込んだ。すると自分こそが一番の美女だと思っているゼウスの正妻ヘラ、知恵と戦争の女神アテナ、美の女神アフロディテの間で激しいいさかいが怒った。
困ったゼウスは、三女神のなかで誰が一番美しいかをトロヤの王子パリスに判定させることにした。三女神はそれぞれ、パリスに取引を持ちかけた。
オリュンポスの女王ヘラは、パリスをアジアとヨーロッパ全体の王にしてやると言った。
知恵と戦争の女神アテナは、どんな戦いにも勝てる無敵の武運を授けると言った。
美の女神アフロディテは、世界一の美女へレネ(スパルタ王メネラウスの夫)を妻として与えようと言った。
パリスは、世界一の美女へレネを選択し、アフロディテが最も美しく、金のリンゴを受け取るに値すると判定した。こうしてへレネはパリスの妻となったが、メネラオスは当然激怒。前述の通りへレネが結婚する際、求婚してきた英雄全員に「結婚に害する者があれば、全員で協力してへレネの夫(=メネラウス)を助ける」という誓いを立てさせていたが、メネラオスはその誓いのもと、ギリシャ中の英雄を集結させギリシャ軍を作り、パリスのいるトロヤを攻めることになった。こうしてトロヤ戦争の火蓋が切って落とされることとなる。
アキレウスはへレネが結婚する際は若年だったのでメネラウスを助ける誓いは立てていなかったが、トロヤ戦争ではギリシャ軍に加担。
トロヤ戦争の終結
トロヤ戦争は10年に渡り続く。アキレウスはその間、ギリシャ軍として凄まじい猛勇を振るうものの、途中でトロヤのパリスに踵を矢で射られて落命する。そのパリスもそれからしばらく後の戦闘で矢に射られて死亡。
最終的にトロヤを落城させたのは、ギリシャ軍オデュッセウスが考案した木馬を用いた作戦だった。ギリシャ軍に加わっていたエペイオスという工作の名人に、胴が空洞になった巨大な木馬を作らせ、主な大将たちを潜ませた。他の軍勢は沖に出て、近くの島の影に隠れていた。
ギリシャ軍が攻略を諦めて撤退したと思い込んだトロヤ軍は歓喜に沸き、木馬を戦利品として城壁内に入れて、祝賀を催した。
トロヤの人々が祝い疲れて寝静まった頃、木馬の中からギリシャ軍の大将が出て、城門を開け放った。そこからギリシャ軍が一気になだれ込み、トロヤ軍を制圧。トロヤの男は虐殺され、女性は捕虜になり、財宝は奪われて町は焼き払われた。
こうしてトロヤは滅びたが、大部分のギリシャ軍の者もトロヤ落城の際の狼藉で神々を怒らせて罰を受け、順調には故国へ戻れなかった。
以上、トロヤ戦争とその余波で起きた事件により英雄の種族は消滅。その後に鉄の種族、つまり現代の人類の時代が始まった。
おわりに
以上、ギリシャ神話の全体像をざっくりとまとめて紹介してみました。(初めてギリシャ神話に触れる方にとっては文量が多いように見えるかもしれませんが、これでもかなりざっくりまとめてます…)
より詳しくギリシャ神話について知りたい方は、ぜひ今回参考にした以下の文献を読んでみてください。
参考文献
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