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労働の思想史(要点整理ver)

お世話になっております。まるです。
今回の記事では、中山元著「労働の思想史」について、重要な点をまとめた記事を作成していきます。

※注意:
本記事は「労働の思想史」の要点をできるだけ少ない文章量で書いたため、情報が削ぎ落とされ、わかりにくい部分があるかと思います。
詳しくは本書を読むか、もう少し長く書いたまとめ記事があるので、そちらをご覧ください。

労働観の変遷

旧石器時代以前の労働観

  • 核家族を軸とした集団

  • 労働は数時間ですむため、厳しいものではない。

  • 余った食料を蓄えるということをしないことから、国家という制度とは疎遠。

  • 氷河期に入る頃には、狩猟の効率を求めて集団化していく。

新石器時代の労働観

  • 農耕が開始される。これはどちらかというと「労働」より「仕事」としての喜びの方が注目される活動であった。

  • 王権が誕生すると、国家による強制労働や徴兵労働が生じるようになり、労働は辛いものであるという認識が出来上がっていった。

古代の労働観

  • アテナイなどのポリス国家では、労働や仕事や軽視されていた。

  • 労働や仕事をする者は公的な場で発言する自由を備えていなかった。

  • ユダヤ教やキリスト教では、旧約聖書において労働が人間にする罰として与えられたように、労働は否定的に見られていた。

中世の労働観

  • キリスト教修道院において、最上位の聖職者が最下位の農民労働に従事するようになる。

  • 労働は過酷なものであり、自尊心を放棄させるものである。このことが修道士において重要視された「心の清さ」につながるものとみなされた。

  • 修道士が労働に従事することは、労働の価値評価を上昇させることとなった。

宗教改革時代の労働観

  • プロテスタントの信徒たちにとって、労働における禁欲的な生活は神の栄光に近づくものであった。

  • 「労働は禁欲的だからこそ価値がある」という考えは、従来は修道院の内部だけでの考え方であったが、プロテスタントの信徒たちにも広がることで、市民生活にも浸透するようになる。

  • 労働は禁欲的なだけでなく、富をももたらす。市民の間から宗教心が忘れ去られていくと、労働という行為そのものが、人間に富をもたらす好ましい営みと見られるようになる。

  • 労働自体が好ましいという考えと共に、労働しないものは怠惰で不道徳なもの、悪に染まったものであるという感性が社会に浸透する。

資本主義初期の労働観

  • 資本主義が成立するにつれ、「労働の道徳性」より「労働の効率性」が求められ、国家の富をどのように効率よく増やせるか、というが重要になる。

  • 重商主義では、労働者をいかに勤勉に働かせるかが課題であった。そのために労働者は「低賃金で」「慈善を減らし」「教育を与えない」ことが基本的な考えとされていた。

  • 重農主義では、農業労働者の労働だけは価値を生み出すことを認めていたが、産業労働者の価値は認めていなかった。

  • 一方でアダム・スミスは、すべての商品の価値が労働によって形成されることを認める。また、労働の価値を認めたからこそ、労働者の賃金を高くする必要性を主張した。

マルクス主義における労働観

  • 十九世紀の半ばでは、農地の囲い込みや資本主義的な農業経営の進展で農業生活を奪われ、都市に生活の場を求める人が増加した。

  • 分業が推し進められたことで工場の機械化が進み、労働者に求められたものは単純作業だった。労働者の間の競争は激化し、当時のイギリスの労働環境を過酷を極めるものだった。

  • このような資本主義の労働下で、マルクスは労働者が「疎外」を受けているということを提唱する。

  • マルクスは、疎外を受けている階層であるプロレタリアートが人間性を取り戻すには、団結して革命を起こし、新しいコミュニズム社会を生み出す必要があると考えた。

「空想的社会主義者たち」の労働観

  • マルクスは革命を実現しなければプロレタリアートの自己は取り戻せないと提唱するが、社会主義者の中には革命以外の方法で自己を取り戻すことを考えた思想家たちもいた。

  • そのような社会主義者の代表的な三人は、サン=シモン、オーウェン、フーリエの三人である。この三人はエンゲルスにより「偉大な空想的社会主義者」と呼ばれた。

  • サン=シモンにとって、産業者は数的にも、知的にも、現実的な処世の能力でも優位であると信頼していた。彼は革命によらず、政党を組織し、世論を産業者重視の方向へ導くことを目指していた。

  • オーウェンは実業家でもあり、社会改革運動家でもあった。彼は労働こそが国富の源泉であり、国家が労働者を教育せず、過酷な労働に従事させているのは国富を損なうものだと信じていた。

  • そこでオーウェンが目指したのが、労働者の知性を改善すること、非合理的な法律を廃止すること、宗教教育をやめることなどであった。

  • またオーウェンは貧困の原因を私有財産の制度であると考えた。また私有財産の制度を作り出したのが宗教と結婚制度であると主張した。

  • フーリエは、人間の情念をうまく動かすことができれば、労働そのものが喜びになると考えた。労働を魅力的なものとするアイデアを駆使して、労働することが快楽である共同社会を構想していた。

現代の労働システムとその変遷

  • テーラー・システムは、徹底した労働の工程の分析と機械化と共に、仕事を労働者たち自身で決定する可能性を彼らから奪い取り、生産のあいだに実施すべき動作の選択を管理者の手に取り戻すことにより、生産を効率化させることを目指した。

  • テーラー・システムは効率的ではあるが、労働者から自分の仕事への生きがいや誇りのようなものを完全に奪い取ることになった。

  • フォーディズムは、労働システムにおける生産性の向上と、労働者への購買力の賦与という二つの要素で構成されている。

  • 特に「労働者への購買力の賦与」はフォーディズムの重要な仕掛けである。フォード社の労働者は、高い給料を稼ぐことができ、それまで手が届かなかった自動車を自分たちでも購入できるようになった。これが自動車の市場を爆発的に拡大するために役立った。

  • 一方、テーラー・システムやフォーディズムは、労働者のイニシアティブを否定し、労働の生産性を向上させるには機械化に頼るしかない。しかし機械化には限界があるため、アメリカ的な生活様式と所得拡大のモデルは行き詰まることとなった。

  • これに対応して登場したのが、ネオリベラリズム的なモデル、ネオテーラーシステムのモデル、労働者のイニシアティブを重視するモデルであった。

グローバリゼーション時代の労働観

  • シャドウワークは、家事労働のように賃金が支払われない労働である。こうした労働は生産活動こそが価値である資本主義社会では劣った活動とみなされる。

  • 感情労働は、自身の感情をコントロールする必要がある労働である。感情労働は、演技によって事故の感情を否定し、ごまかすことを求めるものである。つまりは会社が求める利益のために、自分の感情を否定し続けるという負の面がある。

  • 承認労働は、労働者を自律した人間として承認する際に生まれる喜びの感情を掻き立てる労働である。労働者の自発性を刺激する好ましい側面がある一方で、本人の罪悪感を自己責任という名目で強めるという側面もそなえている。

  • ギグエコノミーは、個人が単独の労働力として企業と契約するタイプの労働形態である。登録するだけで手軽に収入を得ることができる一方、賃金を決定する会社側にあまりに大きな権限を与えるものとなることも多い。

労働の喜び・怠惰の喜び

労働の喜びの哲学

  • シェーラーおよび著者は、労働がもたらす喜びとして次の四つを挙げている。

    • 自分の能力の向上の喜び

    • 心地よい疲労感

    • 自然に変化を加えることにより、自分の力を感じること

    • 有機体にたいして労働が働きかける満足感

    • 人々との共同作業のもたらす喜び

怠惰の喜び

  • ラファルグは、労働者は一日に3時間働くだけで、残りの自由を使って、人間らしい生活を送るべきであると考えた。

  • ラッセルは、労働者は一日に4時間ほど働けば十分だとし、残りの余暇の時間は、自分の望むことをするために費やすべきであると考えた。


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