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The White Lounge #4

後編スタート。



舞台は展開し、
ラウンジから外の景色へ。
そして後ろに隠れて見えなかったサポートメンバーたちの姿が露わになる。


ひろぱが女性とベンチに腰掛け会話が始まる。
会場内はどよめく。
そしてクスッと笑いが其処此処から聞こえる。
どうやら花見デートだったようだが、
まだ桜は開いていなかったようだ。
彼女が作ったお弁当が美味しかったと褒める。
そして彼女は勇気を出して次のデートへ誘う。
ところがその日には先約があったひろぱ。
彼女は残念そうに肩を落とす。
降り出した雨。
まるで彼女の心情を表しているよう。
雨降る中かっぱを着た若い青年が項垂れ歩いている。
「春愁」
なんとなく上手くいかない。
上手くいっている人が羨ましい。
みんな嫌いだと自分を孤独にする。
でも寂しいから一人になりたくない。
大切なあの人が振り向いてくれなくても、
いてくれるだけでいいんだよな。


ひろぱと別れた(男女間の話ではないと思う)女性が傘を差し出し声を掛ける。
会話をするうちに青年は彼女に好意を抱く。
彼女と遊びに行く約束をする。
誘ってもらって喜んでいたが、
彼女が口にする話は好きな人のこと。
自分は彼女の「Just a friend」。
好きな人の気を引くために利用されてると知っている。
それでも
一緒にいられるなら可能性があるかもしれない。
我儘を言う。
あなたの気持ちが振り向いてくれるなら…
そう願うのがわたしの「Attitude」。
そしてモザイクがかかり電源がプツンと切れる。


そこはブロードウェイの劇場のよう。
窓の外には鮮やかなネオン看板が見える。
白いスーツにシルクハットを被り、
舞台で歌い踊る「Feeling」。
おそらく何かのステージのラスト・ソング。
そしてまたモザイクがかかり電源が落ちる。


ちなみに「Feeling」が流れた時、
わたしはとてつもなく焦った。
この曲はいつもラストに披露されるからだ。
アルバム【ANTENNA】のラスト。
アリーナツアーNOAH no HAKOBUNEのアンコール。
Studio Session Live。
あぁこの夢が覚めてしまう!!
そう思ってしまった。


ステージ上には涼ちゃんとひろぱ。
涼ちゃんの手にはステッキ。
ひろぱはギターを抱える。
涼ちゃんが語りかける。
ここは夢のようで現実のような不思議な空間。
皆が箱に閉じ込められ夢を見ているよう。
共に音楽を楽しむそんな空間だと。
そして中央に設けられた、
サーカスのテント小屋のような舞台。
もうすぐ始まるよと声がかかり観客が集まる。
真ん中に三人で立ち、
そして披露される「ケセラセラ」。
手拍子を全員で合わせる。
2回目の手拍子は完全に忘れてしまった。
多くの人がそうだった。
圧巻の歌声に聴き浸ってしまったのだ。
あぁ歌ってくれた…と心から感謝した。
曲が終わると、
『お疲れ様でした』と人がはけていき、
舞台も片付けられる。
そんな光景を呆然と眺めるもっくん。
何か夢の中のような、
楽しかったことが終わってしまったような、
ぽっかりと胸に穴が空くような感覚があった。
そして真っ白な世界で、
あなたに会いたいと「Soranji」る。
徐々にステージ上に広がるスモーク。
滝雲のようにステージから溢れ流れ落ちる。
そこはまるで雲の上のような、
あの世のような現実味のない空間があった。
心苦しそうに歌う彼を見て、
わたしは(あ、消えてしまう!!)と思ってしまった。
それほどまでに儚い世界が広がっていた。
そして暗闇へ。


ステージはラウンジ。
「フロリジナル」が流れ、
今日の舞台のハイライトをカラフルに振り返る。
エンドロールだ。
荷物をまとめ、
中折れ帽を被り、
中央扉の前へ。
一瞬立ち止まり、
手元のトランクケースをラウンジに残していった。ケースに閉じ込めているのは昔話。
次の旅へは過去を置いていく。
過去へは引き返せない。
怖いけれどまた明日へと一歩を踏み出そう。
そして扉の奥へ消えていき、
扉が閉じられる。
舞台上にモザイクがかかり、
プツンッと電源が落ちた。


暗闇の中、静寂が広がる。


終わっ…た?


ステージ上に明るさが戻り、
出演者が手を振りステージ上に集まってきた。
ようやく沸き起こる拍手。
夢から覚めたのだ。
立ち上がって拍手したかったが、
周りに倣ってしまった。


大好きな3人のワチャワチャが見られた。
耳の調子は相変わらずだけど元気だよと言っていた。
もっくんの高笑いも聞けた。
途中ひろぱ一人に任されたMC。
戸惑いながらもなんとか話を続ける。
それをもっくん・涼ちゃんが少し離れた所から黙って見守っている。
話す内容に困り、
客席に話のネタを振ってもらう。
ラップして、とか。
じゃんけんしよう、とか。
ナンジャモンジャ!!とか。
ようやく助けたもっくんによってステージが閉じられる。
去り際のラップ、
嬉しかったです。


ホールを後にし、
白い人々でごった返すエントランスを出て、
それぞれの帰路へ。
バスで帰る人。
迎えの車に乗り込む人。
近くのパーキングから運転して帰る人。
自転車に乗って帰る人。
少し離れた路面電車の駅まで歩く人。
その道中でも、
路面電車の中でも、
親子や友人との会話にはホワイトラウンジのことだ。
誰かと話をシェアできる様子を羨ましく思った。
路面電車を降りてJRに向かう人混みに混ざる。
どんどんと散らばっていく様子がまた、
夢から覚めていってしまう寂しさがあった。
白が徐々に染まっていく感じというか、
混ざっていく感じというか。
そんなことまで想定していたのだろうか。
いやまさか。
でもあり得るかもしれない。


この時間を忘れたくないと、
二日がかりでまとめた。
おそらくその間にも記憶は抜け落ちていっているのかと思うと寂しい。
忘れたくない。
忘れることが怖い。
わたしはここにいることができて本当に良かった。


最後に、
大森元貴はこのツアーが始まる前に、
賛否両論あると思う。
けれどファンを信じている。
そう言っていた。
見終えた感想は、
なるほど彼が言わんとしていることがわかった。
あれはライブではない。
間違いなくミュージカルだった。
全曲にアレンジがされ様相がまるで違った。
もっくんの演奏はなく、
演技と踊りと歌と。
われわれ観客は歓声を上げることもなく、
ただただ舞台に釘付けになっていた。


さらに彼は言った。
なんの情報も予想もなく、
まっさらな状態で見てほしいと。
だから白がドレスコードだったのかもしれない。


さて、
今回のツアー。
走り終えた彼らは自分たちに合格点を出すだろうか。
昨年の多忙な日程の最中に同時進行され、
大森元貴の体調不良など、
決して万全な状態ではなかったと思われるが、
わたしとしては、
満点をあげてほしいと願う。
同情なんかではない。
喝采しかないと思ったからだ。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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