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夜はともだち

絞り出すように毎朝起きている。もう毎日毎日絞り出しすぎて、カラッカラだよ。携帯を握りしめて寝るから、画面の明かりに夢の中の私が言う。
「目がチカチカする」
無意識の中で充電器の先を穴に挿し込む。電子機器はエロいな、なんてバカみたいなことを思うのは深夜だから、です。
洗濯機を回す。日付が変わって数時間の頃の外気。さらされた洗濯物は少し寒そうにしてる。蒸し暑い夏が終わったね。涼しい秋はすぐにいなくなって、寒い冬が来る。この間、今年はプール行こう!なんて呑気なこと考えてたはずなのに今年ももうすぐ終わる。
寝言が食べ物のことばかりの友達は、わたしの話を聞きながら寝てしまう。わたしは無料通話の終話ボタンを押して、ひとりの夜をやっと迎える。
今日のお供はミュージシャンか、お笑い芸人か。どちらにせよパソコンの中から出てきてはくれない。何回目か分からない映画を観たって、近すぎる画面に自分が映るから、嫌になってそっぽを向く。
しょうもない思い付きを呟いては消す。
鏡越しのすっぴんを撮ってみたり。
眉毛を抜いたりする。
お茶のペットボトルをボコボコいわせて飲む。
もう何年も会ってない友人にメールしたりする。
起きると、わたしの夜は終わっている。永遠だと思えた、わたしだけの夜。
夜中あんなに駆け巡った思いが、朝にはなかったことのようになっているから、少し寂しいんだ。夜のわたしは何処へ行ってしまったの。
流したままの音楽や漫才がうっすら聞こえ、目覚まし時計はシャララシャララと8分ごとに鳴る。太陽がうっとおしく話しかけてくるから、あと5分黙っててくれと頼む。
滞り淀んだ部屋の空気は、ドアを開け一歩出た瞬間に侵されてしまう。我が物顔で、今日という日がわたしの部屋へ侵入してくる。たった24時間の今日。わたしの夜は居場所をなくし、下瞼の下に張り付いてしまう。今日もクマがスゴイよ。

別に愛してなんかいないけど、とにかく。
夜はともだち。

(2016.9.24 朝方のわたし。)

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