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多言語話者の「頭の中の教科書」4

ヨーロッパ人には多言語話者が多い。
でも、年齢層が上がると英語もたどたどしい人もいる。
と言うことは言語教育が時代とともに進化しているのだと思う。
最近の20代のヨーロッパ人の英語力は本当に高い。
同じ人間なのだから、方法さえ間違わなければ
若い日本人も同じようになれるはずなのだが。
私が一番多く関わってきたのは30代以上の大人世代のヨーロッパ人だ。
また、母国語を感じさせない癖のない英語を話せる人は特に言語習得能力が高い印象だ。そしてとにかくよく話す。中上級のレッスンでは3時間ぶっ続けというのも
ある。2時間45分は生徒さんが話している。私は15分以内だと思う。
それは、完全な初心者であっても例外ではない。

今日は二つの矢印をイメージしていただきたい。
「入れる方向」と「出す方」、この二種類で。

日本の英語教育はほとんど「入れる方向」の矢印だけだ。
とにかく多くを記憶させる。そして異常なまでに正確さを問われる。
生徒は受け身だ。教えられるのを待つ。自分から発話しようという
発想そのものもないようにさえ見える。

多言語話者の学びの「型」の特徴は「出す方向」の矢印を
感じることだ。とても強い矢印だ。生徒は質問する。レッスンは
質問をもとに展開していく。質問の内容は彼らが言いたいことだ。
彼らの頭の中には多言語話者共通の教科書があるようだ。

彼らの初期のレッスンは、こんな感じだ。
私と彼らの間にある本当に必要な日本語から日本語で話そうとする。

例えば、
よく耳にする日本語の意味を知りたい時にはどう聞けばいいのか。
ある英語を日本語で知りたい時に聞けばいいのか。
(これは私から誘導することも多いが)

「まもなく」って何ですか?
weekend って日本語で何ですか?

そして、覚えたてのこの二つの文をレッスン中、とにかく使い倒す(笑)

他には

質問があります。
ゆっくりお願いします。
もう一度言ってください。

少し語彙が増えると

AとBはどう違いますか。
AとBは同じですか。

こういった、いわゆる「レッスン中に使えるフレーズ」などを駆使し
彼らが話し出すことは驚くほど単純なことだ。
イメージで言うと小学生の絵日記だろうか。

どこに行く、行った。
何を食べる、食べた。
誰と会う、会った。

この段階で多くの日本人は「大人の話題」を好む印象だ。
今、自分が言いたいことをそのまま英語にしようとする。
(これは会話力と乖離した試験に挑戦するかしないかの
判断に似ている)

そして、与えられた文よりも(むしろ与えられる前に)
自分の文を話してみようとする。

自分の会社の所在地、自宅の場所、よく行く場所、への往復
本当に自分が食べるもの、飲むもの
実際に自分が会う人

そういう語彙を使って自分の頭の中に思い浮かぶ
状況、情景、絵のようなものを直接日本語に脳内変換して
口から音としても日本語が出せるか、じっくり取り組む。

わかっていても、口からちゃんと音として
出せるかどうかは別問題ということを熟知している感じだ。
今まで習得してきた言語もおそらくそうやってきたのだろう。
最初は少ない語彙で短い文で、でも、本当に自分の文で。
とにかく話してみるということを
最初からやってきているのだろうと予測できる。
とても強くて太い「経験の回路」のようなものを
見ていて感じる。「出す方向」の太い矢印だ。

多くの日本人はこの段階でも「話せる」ということを
教わっていない。だから仮に英語以外の言語を始めたとして
はっきり促されなければ、人によっては話そうとする発想さえも
ないかもしれない。「入れる方向」の太い矢印はおそらく世界一
強い力を持っているのだが。






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