見出し画像

近況と写真


COSA

カメラ :Nikon NikomatoFTN
レンズ :Nikkor-S・C Auto 1:1.4 f=50㎜
フイルム:富士フイルム NeopanAcros100Ⅱ モノクロネガ

大月町の港のある小集落。地区の中央を流れる川を見下ろしながら遡上したところ、連坦する人家の終着に真新しく改装された木造校舎がある。当地区の小学校であったその建物は地域の文化教育交流拠点として昨年より始動した施設「COSA」である。

地域おこし協力隊が主体となって運営する当施設では、アート制作やものづくりを体験するワークショップが頻繁に開催される。上に掲載した写真もそうしたイベントのひとつ「奥宮誠次×COSA ポートレート撮影ワークショップ」でのひとコマだ。

私の写真はほとんど我流で、必要を感じたときに知識を入れ実践を繰り返しながらの試行錯誤なもの。また被写体に選ぶのは物言わぬ=怒りを買わない物に向けられ、特に花はもっとも当り障りない対象として選択されがちだ。誰もがスマホで撮影する祭ででもない限り、ほとんど人物を撮ることはない。仮にそうした場面があり撮影してみても、物足りないものになる。

このワークショップに参加して、現像したものを見なおしてみると、その理由が一歩踏み込めない怖気によるものだとよく分かる。代わる代わる参加者がモデルとなって複数のカメラが被写体に集中すると、背後のフレームに入ってしまうことを気にする自分がいて、人の背後に背後に回ろうとする傾向がある。すると私自身の撮影したものは殆ど意図せず被写体の遠い写真となってしまう。同じ被写体を撮影した他の参加者の踏み込んだ写真を見ていると、それがよく見えるのだった。遠慮や惧れから自由になって踏み込む一歩をもってみよう、そう思える体験だった。

ワークショップのあとで

足摺岬さんぽ

金剛福寺境内で

カメラ :同前
レンズ :同前
フィルム:Hands on film 400

同人から貰ったフィルム。ラベルをはがすとKodakのラベルが現れるパトローネに、映画用フィルムを写真用に加工したフィルムが封入されている。シンガポールのメーカーとのこと。フィルムを試すのは楽しい、以前にも映画用フィルムを使ったことがある。

帯電防止のためにレムジェット層をもつ映画用フィルムを写真用とする際この層を除去する。層はハレーション防止も兼ねているため眩しい写真が出来上がる。それが独特の演出効果を出すため、仕上がりの面白いフィルムのひとつだ。

どうしてここに来たのか覚えていない。とにかく足摺岬だ。

いやに縦写真が多い。

竜ヶ迫

石垣の美しい漁村を訪う。このごろは人を見かけると会話をするようにしている。見ない顔が大きくない地区をカメラを手にうろついているのは、住民にとって気色のいいものではない。自己紹介がてらに他愛ないインタビューをして、一応のあいさつにしている。

カメラ :同前
レンズ :同前
フィルム:Kodak ColorPlus200

以下はまた同人から貰ったフィルム。しばらく寝かせていてようやく使ってみる気になり、このとき港でパトローネを交換した。

港を見守る恵比寿さんの祠

フィルム:Kodak Portra160

カメラのキタムラによる現像だとこのフィルムは高松の工場に出荷する必要がありひと月弱待つことにはなったが、ガラス質な印象をまとう仕上がりに驚いた。また使ってみたいと思わせられる名品。

街歩き

同じくPortra160による撮影。

ポートレートのワークショップに参加して、ひとつ呪いにかかったとすれば、絞り5.6~4に設定したがってしまうことがある。もっと自由に手法を切り替えられる柔軟さをもつことが今後の課題になる。これはマニュアル露出の勘が多少とも備わってきた時期にも覚えた自己呪縛だ。

やっぱり植物は撮りがち。彼らはカメラのもつ暴力性に無頓着なので撮影に躊躇せずにいさせてくれる。

以前も書いたことだが雨粒の残る雨後の景色が好きで、雨が降ると嬉しくなる。雨上がりの直後に陽が射すともう最高だ。

高知市行

『ゆきゆきて、神軍』を代表作にもつドキュメンタリー監督 原一男の全作品を高知県立美術館が上映すると聞いて、いてもたってもいられず汽車に身を放り込んだ。

駅前を撮る

ここでPortraが終わり、最近の普段使いになっているKodak ColorPlus200に切り替える。

出発
三連休のため高知駅前では祭が催されていた

「じんじもばんばもよう踊る」とよさこいの文句にあるが、ほんとうにギャラリーも銘々の場所で一緒になって踊っていて、陽気な会場だった。

露店でコーヒーを買ってひと時滞在したのち、さて美術館へはどうやって行こう、前回は駅から歩いたが足が棒になるので公共交通機関にしようと決め、駅に併設する観光案内所で尋ねてみることにした。

美術館へ映画を観に行くのだというとパンフレットを出してくれた。「どの時間の映画をご覧になるのです?」とプログラムをなぞっていた係員の指が止まる。その日、初日の上映は3本あった。114分、215分、248分とあるのはそれぞれの上映時間である。これを観に行くのか? 正気か? と問いたいところ「ドキュメンタリーってこうなんですか……?」と言葉を選んだらしいのが面白かった。

ずいぶん親切なその人は、そんな私が興味をもちそうな色々のチラシを持たせてくれた。チラシを集める傾向がある私は嬉しくなって全部もらい、着替えだけ入れたかばんにいきなり紙束がばさばさと詰め込まれる。なお、美術館へはバスがなく路面電車がよろしいという。

乗り込んでから気づく。ひょっとすると路面電車って初めて使うのでは。昂る。

楽しすぎ。

高知県立美術館
それでいいのか
時間が居る

映画については別の機会に書けたら書こうと思う。3日間の原一男三昧が終わった。

この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?