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街をふらつく写真記


大阪を退いて、ふたたび郷里の撮影に戻った。
この頃はカメラを持ち歩いていると、自ずと公園に行き着いてしまう。それは市営の公園で、日本庭園を多少は意識した作庭である。それがどれだけ巧みなものか、私には測れるものではないものの、なんといっても名高い足立美術館(島根県)の日本庭園を見たあとでは、何もかもかすんでしまうように思う。その辺が素人を脱していないということを示しているのだろう。

日本庭園風の公園というのは、それによる部分をたしかに具えているが、やはりガチ日本庭園には劣る迂闊さというか目配せの粗さが目立ってしまう。なんといっても足立美術館なんかは思想を保存するために、借景となる山(美術館の敷地外にある)さえ買い取ってしまっているというのだから、それは財力のなせる景観美である。美しい庭園を保存するとはいえ、それはそれで釈然としない心持ちにならないでもない。

もうひとつよその日本庭園を挙げるなら、一宮市立尾西歴史民俗資料館(愛知県)別館として保存される商家林氏住宅の庭がある。あれはとてもよいのでぜひ近くを通りかかったら見てほしい。記憶では入場無料だったはず(本館は数百円したかもしれないが)。

ともかく、そんな格別目を惹く庭というのは私の住むあたりにはないのではあるが、道から覗く個人宅の庭や鉢植え盆栽などはときにハッとするほど美しいものがあったりする。「思いがけず」目に飛び込んでくるというのもまたよいのだろう。

そんなわけで、さほど趣向を凝らして……というわけでもないだろう(といったら失礼かもしれない)市営の公園も、視点を変えて見てみると案外さまになる構図もなくはない。

飛び石
枯山水

周囲に電柱や電線や観光店舗やアスファルト道路やバカでか案内看板などがあるので、それを画面から外したり丘に隠したりしながら撮影してみると、割合にそれらしい絵になってくれるのだった。

駐車場を丘に隠して撮影

ざっとこのようである。以下別の日、別の公園で撮影したものを挙げてみよう。ここもやはり埋め立てて市が造成した公園である。そこについては日本庭園を意識した風はあまり感じられないが、その丘の丸みにはそれに近いものがあり、撮りようによって日本庭園の風合いに近づけるかと思い始めている。

ちなみに、この時使用したフイルムはMARIX100Dというもの。今回初めて使用するが、古いカラー映画のような質感が楽しめるフイルムである。

じつはこれら撮影しているときに使用していたニコマートELはミラーが剥離してしまい、上の3連のうち3枚目はノーファインダーで撮影した。このときはうまくいったが、慣れていないのでレンズキャップを取り忘れたり、ピント調節を忘れたりなどしているときがある。以下に連続する写真はノーファインダーで撮影したもの。今は使用されていない船舶用の給油設備。


と、まあ思ったよりはフォーカスもまずくなくいってるので気をよくしているのだが、そうはいっても頭を使う量が多くなるため、やはりファインダーは覗きたいということになってくる。そこで使い慣れたOM-1を取り出して歩くことになる。

OM-1はずいぶん使いならしたもので、その操作性はピカイチだと思う。ただ、ニコマートELに使用しているレンズがかなり美品なので、それを使いたいという欲もやはりあるのだ。

OM-1のシャッターは布幕横走り式を採用している。これが耳触りのよい柔らかな音で鳴ってくれる。対してニコマートELは金属板を数枚組み合わせた縦走りの金属シャッター。そのためかパチャン、パチャンと金属的で微かに残響が尾を引く。布幕と比較するとチープにも聞こえてしまう。が、このへんは好みや慣れの問題かもしれない。

サイズ感や重量の面ではOM-1は、発売当時、小型軽量化競争の口火を切ったとも聞くだけあって、軽量でコンパクトな仕上がりである。片手に持っていてもあまり気にならない。ニコマートELはそれとは思想を異にするもので、頑丈なNikonと称されるのも納得の重量感、硬質性を具える。私は割合この重たいカメラが気に入っている。ずっしりと手にかかる加重はいつもカメラの存在を否応なく意識させてくれるし、OM-1に比べると大きいボディも手が大きめの私なんかは指が多少ともごちゃつかなくなるので丁度いいのだ。

明るく撮りすぎたためスキャン時に暗くした

ニコマートELのために買ったレンズが美品と書いたが、OM-1のほうがややカビ、くもりのあるレンズしかないので、その加減でそれが強く意識される。このごろは専らELばかり使っている理由のひとつにはそこがあり、普段はそこまで気にならないとはいえ、やはり光の加減でぽわぽわした感じにもなるのだった。

とはいえ、ぱっと見は気にならない程度のもの。でもやっぱり美品のレンズも付けてあげたい親心もなくはない。いつか買ってあげるからね……

今回はこのあたりでとっぴんぱらりんのぷぅ。さよなら

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