北海道 フィールドワーク日記 その1

3月の半ば、まだ冬が続いている北海道に調査に出かけた。その調査の裏側・・・起きた出来事、経験したこと、思ったことなどを淡々とまとめていこうと思う。
3月12日 釧路への移動
 沖縄は暑かった。私が住んでいるところは久しぶりの晴れ模様で、気温もかなり高くなっていた。これまでの雨と打って変わって、気持ちの良い晴れだ。
 この日から学校の研究で北海道に1週間ほど滞在する。前半は主に道東に滞在し、後半は苫小牧や札幌の方に行く。北海道では、沖縄では見られない雪が積もっているだろう。季節の違いに思いをはせながら、最後の出発の準備をした。
 旅で使うボストンバックに上着をはじめ、防寒具を一敷き詰めたの。しかし今思うと、この判断がちょっとした間違いであった。
 那覇空港にはお昼前についた。そこで買い物を済ませ、お昼過ぎの飛行機に搭乗した。ここから羽田空港を経由して、夕方の便で釧路空港に向かう。


那覇空港にて 羽田行きの飛行機 機種はA350

 なぜなら、那覇から釧路の直行便はないからである。そのため、羽田で乗り継いで、釧路に行かないといけない。多少、出発が遅れたものの、羽田空港にはほとんど定時に到着したと思う。しかし、ここで一つの懸念点が生じる。そう、それは天気である。この時、関東には発達した低気圧が接近しており、かなり悪天候になっていた。そのため、私が搭乗していた沖縄からの飛行機も降下・着陸時には揺れることがあり、機外カメラを見ると、雨や雲でほとんど地表が見えない状態であった。でも、まだこれは到着時であったから特に問題が無かった。
 ここからがかなり大変であった。羽田から釧路に向かう飛行機である。まず、釧路に行く飛行機は所謂「沖止め」といわれる駐機の仕方をしている。そのため、ターミナルのボーイングブリッジを使わず、駐機場に移動してそこで搭乗する方法がとられる。つまり、飛行機までバスで向かい、そこからタラップで搭乗する。



羽田空港にて

 そのため、ターミナルのバスラウンジで待機をしていたのだが、ドアを隔てた先は外である。そのため、出発準備などでドアが開いた際に、冷たい空気が室内に入り込む。ここで、上着を手元に持っておくべきだと後悔した。もちろん暖房が入っているだろうが、時間になれば飛行機に乗るために外に出る。そのため、寒さをしのげるものが一つでも手元にあると安心だった。そして、搭乗する時間が来た。タラップには屋根がついているが、バスから降りるときは、雨に打たれると思った。しかしバスの運転手さんのご厚意で、タラップに一番近い出入口のみを開閉してくれた。おかげで、あまり雨に打たれずに済んだが、一難去ってまた一難。今度は離陸である。滑走路に向けて走行を飛行機は開始したが、なかなか滑走路から飛び立たない。そのうちに、機長からアナウンスが入る。どうやら、悪天候によって、離発着に支障が出て、離陸待ちの飛行機が重なってしまったようだ。相手は自然現象だ。心を落ち着かせて、天候が落ち着くことを願ったり、離陸する順番を待ったりするしかない。実際、この釧路行きが出発した後の便では欠航するものも見られた。それだけ、羽田周辺は天候が悪かった。
 なんとか私の飛行機は離陸したが、気流の影響でかなり揺れる。天候の影響で揺れることが多いという旨のアナウンスは事前にあったが、雲の上にでても揺れは続いていた。窓の外を見ると、西の方がオレンジ色に輝いていた。そのようなきれいな景色が見えるが、飛行機は航路の荒波を超えていく。正直、釧路到着までベルト着用サインが出ることも若干覚悟していた。ただ、東京から釧路まではだいたい1時間30分から2時間である。ちょっと我慢すれば、なんてことはない。幸い、水平飛行に入ってしばらくしてからベルト着用サインが消灯し、自由に動ける様になった。その時は安堵した。
 飛行機が降下を開始するころには、当たり前だが外は真っ暗になっていた。高度がだんだんと下がると、進行右側に少しにじんだオレンジ色の灯が見えてきた。釧路市街である。釧路空港は、釧路の中心部から見て西側に存在する。そのため、右側の窓から灯が見える。それを見て、私は緊張感が増した。当然、これから調査が始まるからである。全てとは言わないが、今回の調査はうまくいくのか不安に駆られる。沖縄を出発するときは何ともなかったが、到着間際になって、かなり気持ちが引き締まってきた。
 道中は決して順風満帆ではなかったが、無事に釧路空港についた。悪天候の中、安全第一で飛行をしてくださった乗務員の皆さんに頭が下がる。移動中、様々なことがあったが、不思議とそこまで疲れを感じることは無かった。きっと、釧路に着いたことの安堵感が高まっていたり、調査に向けて気持ちが作られていたりしたからかもしれない。その日の夜は、海辺の寒さをかみしめながら、独りで過ごした。(続く)

釧路空港ターミナル(ボーイングブリッジから撮影)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?