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アオハルを感じた日

初めて彼の家に遊びに行ったのは、彼が引っ越したばかりの頃だった。まだテーブルもなく、お布団とテレビと小さな冷蔵庫。そんな空間。私は彼の家に遊びに行ける事が嬉しくて、お寿司を買って行った事を覚えている。まだ出会って間もない頃だったから、プライベートな空間に行っていいものか悩んだりもしたけれど、男の子の家に行くと言う事にウキウキしていた。

「まいちゃんが来るから僕たくさんお酒買ったんだ。」って言われて、お酒が好きな私は一緒に飲める事も嬉しかった。飲みながら色んな話をした。少しでも彼の事を知りたかった。今となっては知らなくていい事も知りすぎたくらい。笑。

テーブルがないから、衣装ケースをテーブル代わりにして一緒にお寿司を食べて乾杯してたら、彼がうどんを作ってくれた。「適当に作ったよ~。」なんて言われたけど、お寿司なんかより断然美味しかった。それは多分、彼のおもてなしの心が嬉しかったから。誰かの手料理を食べるなんて久しぶりで、本当に美味しかったなぁ。一人暮らしを始めて料理に目覚めたと言っていた彼とは、その後も一緒に色んな料理を作ったりする事になる。

朝方始発が動き出した頃「帰るね。」と私は言った。泊まっても良かったとは思うのだけど、私はどうしても男の人と一緒に寝られない。と言うか寝たくない気持ちが強い。変な拘りなのは分かっているんだけどずっとそう。帰り道、彼の自転車の後ろに乗せられて何だか恥ずかしかった。まだ薄暗くて、夜明けな感じの空の色が綺麗。自転車の2人乗りなんて、高校生の時以来だったからどういう風に乗っていいのかすらも忘れてた。笑。彼が全力で漕ぐ自転車の後ろは風が気持ちよくて初夏の匂いがして、あぁなんだか青春ぽい事をしてるなぁなんて1人で思った。

この日を境に彼とは会う機会が一気に増えた。翌月からは毎週末一緒に過ごしていたし、いつかは終わる関係だと言う事を私は初めから分かっていたけど、この先彼の事をどんどん好きになっていく事をこの日の私はまだ知らない。

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