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1年越しの「おかえりなさい」を伝えに

これは、昨日の記事

の続編として、NANA-IRO ELECTRIC TOUR 2019 大阪公演に寄せて書いたものです。



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気づけばELLEGARDENの復活ツアーから一年が経とうとしていた。
偶然か必然か、ZOZOマリンでライブが行われた日と同じ8月15日。
私の携帯に一通のメールが届いた。

ーー以下の内容で「当選」が決定しました

それは、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ストレイテナー、そしてELLEGARDENに会えることを約束する内容のものだった。


私は、"ELLEGARDENを知った頃には活動休止していた世代"だ。
復活ツアーはどうしても古参ファンの人達に申し訳なくて諦めてしまった。
そのため、生で見るのは今回が初めてになる。
とはいえ、画面越し・イヤホン越しでは数え切れないほど聴いてきた。

だから、
「初めまして」なんかじゃない。
「おかえりなさい」
私だって同じ言葉を言いたい。

そんな思いを胸に、会場へと向かった。


会場につくと、大半の人がELLEGARDENのグッズを身にまとっているのが目に入る。ブロックごとに整理番号順に並ぶと、いよいよ周りがソワソワしてきたのがわかった。

番号が呼ばれブロックにつくと、待ってましたとばかりにそれぞれが思い思いの場所へと向かっていく。整理番号が良かったお陰で、なんとかステージに1番近い柵の最前列を確保することができた。


一息ついて辺りを見回すと、予想よりも全体的に年齢層が低いことに気づいた。とはいえ、やはり少し年上が多いことには変わりない。

後ろの人達が、「やっぱり昔のツアーTを着てる人を見るとテンション上がるよなあ」なんて話している。

─私、ここに居てもいいのかな。

途端に不安になった。
でも、

─いつ好きになったかなんて関係ないよな。

それに、この世代のライブキッズの方達は、心の広い人が多いからきっと大丈夫。
だって、ステージに立つ人がそういう人だから。
案の定、隣にいた優しい人が話しかけてくれて、開演まではあっという間だった。

1番手は、ストレイテナー。
宣戦布告をするかのようにMelodic Stormからスタートした。
今日という日にどれだけ気合いが入れているかが、音を通じて伝わってくる。

DAY TO DAY、REMINDERなどミドルチューンが続いた後、ホリエさんがキーボードに座り、
「みんなで幸せになって帰ろう」
と言って、灯りのイントロを奏でた。

"喜びの歌が 聴こえてくる"

優しい灯りが会場にともる。
まるで今日という日をお祝いしてるみたいだ。


続くスパイラルではスクリーンに映像と歌詞が表れた。小さなライブハウスでライブをする映像を背に、

"触れようとして 届けようとして
何度も諦めようとして
でも君がいると思えば そこにいたい"

という文字が浮かぶ。

沢山の苦労があったんだろうな。
でもその度にスクリーンに映る幸せそうなファン達に助けられ、乗り越えてきたんだろうな。
そんなことを考えていると、なぜか涙が流れていた。


新曲、吉祥寺が披露され(本当にいい曲で大好きなのだが、話すと長くなってしまうので
泣く泣く割愛する。ぜひPVと併せて聴いて欲しい)、大好きな曲のフレーズが響いた。

"君の目で 世界を見てみたい
僕には見えないモノが 見えるはずだから"

落ち着いた声とは裏腹に、激しいドラムとベースが身体の奥底まで響き、漣のように少しずつ広がってゆく。

シーグラス。
こんなにも魂を揺さぶられる曲を、私は他に知らない。


最後は細美さんを迎え、20th anniversaryのアルバムでMONOEYESがカバーしたROCK STEADYで終了。
完璧すぎるセトリだった。


2番手はアジカン。
君という花で始まり、リライトでは何かの宗教か?!と思ってしまうほど、想像を超える盛り上がり。

"消してえええええ!!!!
リライトしてええええええ!!!!"

(いや、付けるんならもう最初から消さんでええやん…)なんて、心の中でツッコミを入れながらも私も全力で叫ぶ。


この日もゴッチダンスは絶好調。
拳をフリフリし、純粋に"音"を"楽"しむ姿を見て、こっちまで笑顔になってしまう。

「本来ならここにいてもいいんじゃないか
と思うバンドの曲をやります」
と、ART-SCHOOLのFADE TO BLACKをカバー。
曲は全くの初見だったが、今日の中に元ARTのメンバーがいることは知っている。
OJとひなっちも見てただろうか。

「まだ始まったばかりという曲です」
と言って始まったのはボーイズ&ガールズ。
20年以上続けていても尚、"We've got nothing"と歌うアジカンには恐れ入る。

独特の余韻を残し、出てきた時と同様、自然体のままで5人はステージを後にした。


バックスクリーンの下方からスカルのマークが現れ、ELLEGARDENの始まりを告げた。
いよいよだ。


期待していた通りのイントロが聴こえた。
11年前、再会を誓ったSupernova。
そういえば、復活ツアーはすべて東日本で行われたため、関西でのLIVEは今日が復活後初めてだった。

細美さんが「ただいま」
と言ってくれてる気がした。
今しかない。
1年越しの想いを込めて、
「おかえりなさい」
と叫んだ。
気持ちが溢れて声にならなかったけど。


夢だったPizza Manで"ペパロニ・クワトロ"を大合唱して、泣きながら風の日を歌った。既に、横を向くだけで後ろの熱気が伝わってくるほどの盛り上がりである。

それにしてもみんなよく歌う。
細美さんも「足りねぇよ、もっとこいよ」とばかりに煽るものだから、更にその声は大きくなり、まるで会場にいる全員でLIVEをしてるようかのような気分になる。
シンガロングなんて綺麗なものではない、今ここにいる一人一人が生きてる証の声が会場に響いていた。


「10年前だったらお互いのことを全部知っていたんじゃないか」と紹介され、出てきたのはホリエさん。一緒に金星を歌う2人は心の底から楽しそうで、嬉しそうだ。
その笑顔は客席にも伝染していた。


前回のナナイロは15年前らしい。
当時、私はまだ小学生。3バンドのことなど知る由もなく、ライブなんて行けるはずもなかった。

15年という時を経て、小学生だった私は社会人になり、そして苗字も変わった。こんな何でもない私でも、15年間でこれだけ変化している。15年と言う月日はそれだけ重く、長い。

だからこそ、ホリエさんが言ってたように、「3バンドとも誰一人欠けることなく、今日みたいな日を迎えられたのは、本当に奇跡で、幸せなこと」なのだ。


聞き慣れたイントロが響き、思わず声が出た。
私をELLEGARDENと出会わせてくれた曲。
ひたすら演奏するだけのシンプルなPVに心を鷲掴みにされ、くる日もくる日もYoutubeで見ていたあの曲が、今目の前で鳴っている。
奇跡を目の当たりにしている実感がようやく湧いてきた瞬間だった。

"Just let it slide Wasting time"
忘れちまえ 時間の無駄だ

そういえば失恋した時に聴いてたなぁ、なんて思い出しながら、口ずさむ。
歌詞は完璧だった。
生で聴くSalamanderは、ただひたすらに格好よかった。


ラストはMake A Wish。

"We know that for sure
Nothing last forever"
僕らは確かに知っている
永遠に続くものはない

という歌詞は、休止期間を経て更に深い意味をもたらしているように思えた。
スクリーンに映った誰かが、涙を流していた。

そこからのサビはもう言わずもがな、ダイバーと大合唱の嵐。

"Make a wish
You'll be fine
Nothing's gonna let you down
Someone's there next to you
holding you now"

もみくちゃになりながらも、
メンバーがずっと元気でいますように
彼らを悲しませることが起きませんように
辛い時にどうか隣で抱き締めてくれる人がいますように
願いを込めて、歌った。

アンコールではスターフィッシュを歌い、あっという間の3時間が終わった。



正直もっと泣くものだと思っていたが、不思議とあまり涙は出なかった。

1年という年月は短いようで長い。
復活を知ったあの時の新鮮な気持ちは、残念ながら私の中で埋もれて見えなくなってしまっていたらしい。
あの3公演にしか存在しない雰囲気があって、きっとそれは行った人にしか分からないものなのだろう。
正直、悔しい気持ちが残ったのは確かだ。

でも、それでもいいと思えたのは、1年間待ち焦がれた分、幸せな時間をより「幸せ」だと感じて、それをしっかり噛み締めながら過ごすことができたからだと思う。

それに、「また小さい箱で会いましょう」と、未来の約束をしてくれた。
倍率はきっととんでもないだろうが、また会える可能性がある。
それだけで十分すぎるくらいだ。


この3バンドの再会の瞬間に立ち会えたことを心から幸せに思う。
どうか、10年後、20年後もその音を鳴らし続けていて下さい。
何度だって会いに行こう。
その度に、「おかえりなさい」を叫ぼう。
その言葉を言える幸せを噛み締めながら。


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久しぶりに読んだら、薄れていた記憶が蘇ってきた。あんなに待ちわびて、あんなに熱狂したのに、ほとんど覚えてないなんて人間の記憶は儚いな、と思いつつ、ちゃんと文章に残した当時の自分に拍手を送りたい。

そういえば、Twitterで1つ前のエルレの音楽文を読んでくださった方が、「ナナイロも楽しみにしてます!」って言ってくれたから、頑張って書いたんだよなぁ。音楽文に載らなくて悔しかった。1年4ヶ月越しではあるけれど、読んでくれたら嬉しいな。

文章を書くことは「頭を整理すること」であり、「記憶から零れ落ちてしまうものを残しておくこと」でもあることを改めて思わされました。うん、やっぱ書くのが好きだな。


長ーい文章でしたが、最後まで読んで下さりありがとうございました!

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