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マッチングアプリの教科書(全)―トラブルが起きる前に知っておきたい初動対応



増補版発刊に寄せて

この度、本書を増補し、「マッチングアプリの教科書(全)―トラブルが起きる前に知っておきたい初動対応」と改題したほか、マッチングアプリの教科書の抜粋版(以下、本書では「廉価版」という。)を発刊致しました。廉価版については「マッチングアプリの教科書」として1,980円で販売しております。

廉価版では、本書のうち第1章〜第5章のみを掲載しました。
本書では、本改訂に合わせて、新たに新章<出会ったあと交際に至るまで、交際期間中に気をつけること>を付加し、増補版としました。
新章については、すでに発刊していた<交際相手が既婚者だとわかった時に考えるべきこと>というnoteを引用したものになり、事実上の増補となります。
多少内容が前後で被る部分もあると思いますが、具体的に場合分けして詳述しておりますので、ぜひご活用ください。
なお、本書と廉価版の違いは以下の通りです。

1 特典のオンライン面談によるフォローサービスを省略
2 一部コンテンツの省略
本体コンテンツのうち、以下については削除しています。
6 交際相手が既婚者だとわかった時に考えるべきこと
7 証拠の残し方―残念な証拠にしないために
8 トラブル発生後の具体的な法的救済の結果について

基本的に本書は廉価版の全てを網羅しているため、本書お買い上げの方はご購入なさらないようお願い致します。

はじめに

弁護士運営の結婚相談所Marriage Baristaです。
男女関係紛争、離婚、刑事事件を専門とした法律事務所と共に結婚相談所事業、マッチングアプリコンサル事業をやっています。

このnoteは、男女関係紛争の相談や代理人経験を数多くこなしてきた立場から、マッチングアプリのリスクをうまく回避して使うために必要なエッセンスを中心に作りました。
もともとはMarriage Baristaのマッチングアプリサポートプランをお申し込みの方に初回セッションで行う座学部分の一部を開放したものになります。
なお、購入者限定で30分面談の特典をつけています!

マッチングアプリってすごい便利ですよね。
「出会い系サイト」のレッテルからオシャレなイメージに転身へ成功し、コロナ禍での出会いの激減も手伝ってもはや男女の出会いのインフラになったといっても過言ではないでしょう。
異性の出会うために、夜な夜なコスパの悪い合コンに一晩費やし、趣味が合うか合わないかすら3人くらいの異性のアドレスを赤外線通信して得るしかなかった2000年代に比べたら隔世の感に堪えない思いがあります。

マッチングアプリは、登録している会員のスペック、会員数、コスト、どれをとっても、結婚相談所より優秀であることは仲人である僕も認めざるを得ず、結婚相談所がこれと対等に戦うことは難しいと思っています。

他方で、マッチングアプリには、業者や、「低コストで異性と交際ができる側面」からモラルない既婚者も押し寄せ、無法地帯化していることはご承知のことと思います。

トラブルをなくすためにアプリ側が相談所並に身分確認をきっちりすればいいじゃねぇか!というのは正論ですが、おそらくそれを期待することはできません。
マッチングアプリは、あくまで出会いの機会の提供に徹しており、それ以上のフォローについては意図的に行っていないように見えます。
アプリの場合有料会員数が収益に直結するため、厳格にすると有料会員になりうる人たちの利用忌避が生じてくる。
言い方が悪いけれど、ここまで来たらストレートに言い切ってしまおう。
会員の魅力と参入コストの低さ(特に女性にとって)は、都合よく遊びたい男のお金で成り立っているため、そこを切ると収益が激減し、それがアプリ自体魅力の低下と会員数の低下へと直結してしまうため経営が立ち行かなくなってしまうんですよね。
なので、現状のアプリのメリット享受しつつ、身分確認の厳格さを相談所並に求めることは、公費で慈善事業としてなされるようなプラットフォームができるかマチアプの収益構造の大きな変革でも無い限り永遠に不可能です。

とは言えこんな現状を悲観することはありません。
明治安田生命が実施している夫婦の日アンケートによると、年々アプリ婚は増大の一途であり、2022年は全体の22.6%まで増加しています。
5人に1人はマッチングアプリで結婚しているという力強い事実を無視することはできません。

結婚した年別 「マッチングアプリ」で出会った人(明治安田生命保険相互調べ)

つまり、マッチングアプリのリスクマネジメントをしっかり行うことで、うまいこと結婚することは可能であり、マッチングアプリを切り捨てる理由にはならないのです(注:それでも僕は結婚相談所の仲人です)。


マッチングアプリで勝つ(成婚を獲得する)こと。
それは、マッチングアプリの良し悪しを清濁併せ呑む覚悟と自分を守る知恵です。

僕はこれまで職務上、マッチングアプリで生じた金銭トラブル、刑事トラブル、既婚者と交際してしまったというような貞操権侵害のトラブル等、様々な事件を経験してきました。
特に近年では、貞操権侵害に関しては注力しており、積極的に受任をするように心がけているところです。


その中で一貫して言えるのは、トラブルになる人ほど、一旦好きになると根拠のない性善説に基づき、無策で安易に相手のフィールドに乗っかってしまいがちということです。
しかし、これはもうその人自身の変えられない性格の問題でもあり、逆にいうと人を最後まで信じぬける力という魅力とも言いかえられ、結婚生活維持という面では絶対的に優れた魅力です。
性格なのでなおしようがないし、なおす必要もない。それでいいんです。
婚活のその先で素敵な人にぶち当たったとき、その魅力がかならず生きてきます。
だからこそ、ご自身のその性格の素晴らしさはそのままに、リスクは知識で避けて欲しい
一生分どころか人生数十周分の男女問題にぶち当たりこじらせにこじらせまくった僕(子供の頃はまさかこんな人生になるとは思ってなかったね)が、その知識という武器を提供します。

本書では、僕のこれまでの職務経験や判例分析から、マッチングアプリトラブルでの相談が圧倒的に多い2分野のトラブル、①既婚者トラブル(主に女性へ)、②詐欺・金銭トラブル主に男性へ)、という2点を中心に、アプリをインストールしたそのときから、心構えをふくめ、訴訟を見据えた知識武装をしておくことでトラブルを回避しよう!というスタンスで構成しています。
※ヤリモクに関しては、①既婚者トラブルとかぶるところが多いため、既婚者トラブルに統一して説明しています。

なお、トラブルに遭ってしまった場合の対応は、それはそれでとても大切なのですが、今回はトラブルを防ぐことを主眼にしているので、そこは別書「マッチングアプリの教科書(全)」に譲りたいと思います。

マッチングアプリでモテるためのnoteが実技であれば、本書は座学にあたり、一般的にはとても眠たいジャンルです。読んでも絶世の美女に爆モテしたり、ハイスペイケメンと出会える確率はちょっとしか上がりません。
しかし、運転と同じように、座学を受けずに適当に運転すれば普通に事故るのは言うまでもありません。
そして、一旦法律上のトラブルに陥ると時間とメンタルががっつり削がれるし、解決を弁護士に依頼すると軽く結婚相談所の活動費用以上の金額を持っていかれるし、残念ながら大半は泣き寝入りに近いような結果に終わることが多いです(「7 トラブル発生後の具体的な法的救済の結果について」参照)。
だからこそ、「幸せな恋愛・結婚をしたい」という情熱は大事にしつつ、その中で1%でいいから基礎知識として護身術を身につけておき、その情熱が裏切られる可能性を激減させていきましょう。

なお、アプリトラブルの被害相談は圧倒的に女性の方が多いのですが、男性からの相談も少なからず寄せられます。
男性で誠実に婚活をしたい人にも、是非、ご覧頂きたいなと思います。

本書の構成について

本書の構成は以下のとおりです。

1 裁判所の事実認定、弁護士の交渉の仕方のルール
結局トラブルの解決の最終ツールは裁判です。裁判には特殊なルールがあり、法廷でどれだけフリートークで苦痛を訴えても、そのルールを押さえていなければこちらに有利な判断はしません。
交渉段階から弁護士が動く場合、担当弁護士は将来的な裁判を見据えた動き方をします。そのため、相手の弁護士からの言い分を潰しておくためには、裁判になったときのルールを押さえておくことが重要です。
とはいえ民事訴訟法の教科書ではないので、正確性よりもわかりやすさを優先して噛み砕いてざっくり説明します。

2 アプリの選び方
たくさんあるアプリから使うアプリを選ぶ時、何かあったときに救済が難しいアプリ、という目で選んでいる人はいないと思います。中にはそもそもの救済が難しくなるアプリもあるため、そういう観点からアプリ選びの考え方についてご説明します。

3 プロフィール文の書き方
完全にトラブルを防ぐには
①そもそもマッチングアプリをやらない
②プロフィールに「詐欺お断り既婚者お断り何かあったらすぐに通報するし顧問弁護士に相談して速攻訴えます」とやばい感じに書いておく
あたりになりますが、①は論外だし、②みたいなプロフィールだとまともな人とすら出会いに繋がらないでしょう。
そこで、プロフィール文について、自然にマッチングアプリを使いつつトラブルを避けれる実用的な方法を意識して執筆しています。

4 マッチング後のメッセージ〜ファーストアポまで留意すべきこと
多くの場合、トラブルは初めて会った以降に起こるので、できれば、ここでヤバイやつのスクリーニングを掛けておく必要があります。また、貞操権侵害トラブルの場合はマッチング時の相手方のスタンスを立証する必要があるので、その点メッセージのやりとりも一定の配慮をするだけでトラブルのリカバーがしやすくなります。
この章ではそれぞれトラブル別に工夫すべき点が異なるので①金銭トラブル防止、②既婚者トラブル防止の観点からそれぞれ書き分けて説明します。

5 出会ったあと交際に至るまで、交際期間中に気をつけること
初めて会ったあと、いいなと思った場合には、交際等の関係に入っていくわけですが、親しくなればなるほど、裏切られるかもしれないというリスクが増えて行きます。いちいちそれを気にしていたら交際なんてやっていけないだろ!という正論を大事にしつつ、ちょっとでも留意すべきこと、例えば相手の話した内容の証拠の残し方等について解説します。

6 交際相手が既婚者であることが分かったとき
途中で交際相手が既婚者であることがわかったとき、あなたはどうしますか?
相手を激詰めする、そっとブロックして縁を切る、見て見ぬふりをして交際を続ける、話を聞いた上で対応を決める…その人の性格によって取る方法は様々だと思います。
しかし、既婚者で分かったときは、こちらの精神的苦痛について慰謝料請求をするかどうか、だけではなく、場合によってはこちらの立ち居振る舞いいよって、相手方配偶者から金銭請求されるおそれが生じるため、大変危険な状態であります。
嘘をつかれた挙げ句、慰謝料請求をされる立場になったとなれば目も当てられません。
本章では、(1)相手から既婚である旨告白を受けたor相手がいる前でわかったとき、(2)相手がいない場面でわかったときに分けて対応について述べていきます。

7 証拠の残し方―残念な証拠にしないために

いちいちそんな事言わなくても、証拠が大事なんでしょ!
私は証拠ちゃんと残しているから大丈夫!
と満を持して証拠を持って弁護士に相談に来る方にも、証拠の残し方を自己流でやった結果、相談・依頼時に証拠としての価値が喪失した残念なモノをお持ちになって残念な結果になってしまう方が結構いらっしゃいます。
証拠の残し方も型があります。
今回は証拠として使えなかった残念なケースを挙げながら証拠の残し方について丁寧に説明することをこころがけました。

8 トラブル発生後の具体的な法的救済の結果について
実際に何かあったとき、お客さんからは、勝ち目はどれくらいあって、どれくらいの金額もらえるの?と聞かれます。
既婚者トラブル、金銭トラブル共に僕のこれまでの経験からの感覚や判例研究に基づいたよくも悪くも率直な話(見立て)を取り上げました。

本書の内容は結構難しいし、僕の経験則に頼った論調になりがちなので、テキストでの説明に限界があることは否定できません。
そこで、購入後半年間に限り、アフターフォローとして、30分のオンライン面談によるフォローを無料で行います。

※なお、あまりないことですが、弁護士職務基本規程という弁護士の決まりみたいなものがあり、現に私が相談を受けている人を相手とする相談や、顧問先のお客さんを相手にする相談をお受けすることができない決まりがあります。そのため、星の数ほど人がいるこの世界で不幸にも、職務上相談ができない状況になった場合には、3300円をお返し致します。

なるべくライトで面白く書こうと心がけましたが、眠くなる人はななめ読みで構いません。また、何かあった時に辞書的に使ってもらっても構いません。必要なときに必要な限度で読んでいただければOKです。

本書はマッチングアプリの便利さ、万能さを否定するものではなく(むしろ褒め称えてます)、自衛すべきところはちゃんと自衛して、皆さんが最高の結果を得るためのトリセツです。
本書を読んでくれたみなさんがトラブルを回避してそれぞれいい感じにアプリを使っていくことを願ってやみません。

お買い上げいただく前に…

なお、本書は予防法務の観点から記載したものであり、この通りに動けば必ずトラブルに遭わないことを保証するものではありません(具体的事案は星の数ほどあり、パターンによって細かい動き方は変わるため)。
また、請求ができる場合であっても相手の支払能力(請求途中で相手が死亡・蒸発・生活保護受給など)により金銭的な救済が不可能となる場合もあります。
個別具体的な相談については、できるだけ早く弁護士に具体的な法律相談を行いましょう。


1 裁判所の事実認定、弁護士の交渉の仕方のルール

ここでは将来なにか起こったときのことを踏まえて、日本のトラブル解決の最終手段である「訴訟(裁判)」についてかんたんになぞっていきます。

訴訟とは、一方の請求について、裁判官が法廷で双方の言い分を聞き、当事者が提出した証拠をみて、最終的に判決を言い渡すことで紛争を解決する手続です。

とは言え、裁判所は、トラブルに駆けつけた警察官のようにそれぞれの言い分を自由に聞いてくれるわけではありません。また、被害者のポジションであっても絶対に肩入れはしてくれません。
どんなにかわいそうな話であって本人がかわいそうな顔をしてディベートしても、ルールに基づいて進めなければ請求は棄却される(認められない)、非情なルールです。
結構誤解されている方がいるのですが、

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