マッチングアプリのトリセツ-離婚専門弁護士による男女間紛争回避の心得
マッチングアプリのトリセツについて
弁護士運営の結婚相談所Marriage Baristaです。
男女関係紛争、離婚、刑事事件を専門とした法律事務所と共に婚活支援事業(結婚相談所、マッチングアプリコンサル)をやっています。
このnoteは、今年3月に上梓した拙著マッチングアプリの教科書(全)の廉価版になります。
前作については、かなりの時間と手間暇をかけて紛争に巻き込まれたときに動くべき方法として初動から裁判で勝ちやすい証拠保全の方法まで網羅して作りましたが、
そもそもトラブルに巻き込まれていないし今のところ弁護士に聞きたいこともないから、もう少しサクっとした価格でサクッと読めんかね?
というお声にお答えして、本体から以下の点を編集してお求めやすい価格に仕上げました。
マッチングアプリの教科書(全)との違いは以下になります。
本書はマチアプでトラブルに遭わないために事前に読んで準備しておくもの、マッチングアプリの教科書(全)はトラブルに起こったときに最速で対応できるようにしておきたい、がっちり対面フォローがほしい場合に読むもの、という位置づけにしておりますので、予算と場面に応じてお買い求めください。
なお、既にマッチングアプリの教科書(全)をお買い求めになられた方は、本書は内容が100%被るため、購入しないようご注意ください。
はじめに
マッチングアプリって便利ですよね。
「出会い系サイト」のレッテルからオシャレなイメージに転身へ成功し、コロナ禍での出会いの激減も手伝ってもはや男女の出会いのインフラになったといっても過言ではないでしょう。
異性の出会うために、夜な夜なコスパの悪い合コンに一晩費やし、趣味が合うか合わないかすら3人くらいの異性のアドレスを赤外線通信して得るしかなかった2000年代に比べたら隔世の感に堪えない思いがあります。
マッチングアプリは、登録している会員のスペック、会員数、コスト、どれをとっても、結婚相談所より優秀であることは仲人である僕も認めざるを得ず、結婚相談所がこれと対等に戦うことは難しいと思っています。
他方で、マッチングアプリには、業者や、「低コストで異性と交際ができる側面」からモラルない既婚者も押し寄せ、無法地帯化していることはご承知のことと思います。
トラブルをなくすためにアプリ側が相談所並に身分確認をきっちりすればいいじゃねぇか!というのは正論ですが、おそらくそれを期待することはできません。
マッチングアプリは、あくまで出会いの機会の提供に徹しており、それ以上のフォローについては意図的に行っていないように見えます。
アプリの場合有料会員数が収益に直結するため、厳格にすると有料会員になりうる人たちの利用忌避が生じてくる。
言い方が悪いけれど、ここまで来たらストレートに言い切ってしまおう。
会員の魅力と参入コストの低さ(特に女性にとって)は、都合よく遊びたい男のお金で成り立っているため、そこを切ると収益が激減し、それがアプリ自体魅力の低下と会員数の低下へと直結してしまうため経営が立ち行かなくなってしまうんですよね。
なので、現状のアプリのメリット享受しつつ、身分確認の厳格さを相談所並に求めることは、公費で慈善事業としてなされるようなプラットフォームができるか、マチアプの収益構造の大きな変革でも無い限り永遠に不可能です。
とは言えこんな現状を悲観することはありません。
明治安田生命が実施している夫婦の日アンケートによると、年々アプリ婚は増大の一途であり、2022年は全体の22.6%まで増加しています。
5人に1人はマッチングアプリで結婚しているという力強い事実を無視することはできません。
つまり、マッチングアプリのリスクマネジメントをしっかり行うことで、うまいこと結婚することは可能であり、マッチングアプリを切り捨てる理由にはならないのです(注:それでも僕は結婚相談所の仲人です)。
マッチングアプリで勝つ(成婚を獲得する)こと。
それは、マッチングアプリの良し悪しを清濁併せ呑む覚悟と自分を守る知恵です。
僕はこれまで職務上、マッチングアプリで生じた金銭トラブル、刑事トラブル、既婚者と交際してしまったというような貞操権侵害のトラブル等、様々な事件を経験してきました。
特に近年では、貞操権侵害に関しては注力しており、積極的に受任をするように心がけているところです。
その中で一貫して言えるのは、トラブルになる人ほど、一旦好きになると根拠のない性善説に基づき、無策で安易に相手のフィールドに乗っかってしまいがちということです。
しかし、これはもうその人自身の変えられない性格の問題でもあり、逆にいうと人を最後まで信じぬける力という魅力とも言いかえられ、結婚生活維持という面では絶対的に優れた魅力です。
性格なのでなおしようがないし、なおす必要もない。それでいいんです。
婚活のその先で素敵な人にぶち当たったとき、その魅力がかならず生きてきます。
だからこそ、ご自身のその性格の素晴らしさはそのままに、リスクは知識で避けて欲しい。
一生分どころか人生数十周分の男女問題にぶち当たりこじらせにこじらせまくった僕(子供の頃はまさかこんな人生になるとは思ってなかったね)が、その知識という武器を提供します。
本書では、僕のこれまでの職務経験や判例分析から、マッチングアプリトラブルでの相談が圧倒的に多い2分野のトラブル、①既婚者トラブル(主に女性へ)、②詐欺・金銭トラブル主に男性へ)、という2点を中心に、アプリをインストールしたそのときから、心構えをふくめ、訴訟を見据えた事前準備をしておくことでトラブルを回避しよう!というスタンスで構成しています。
※ヤリモクに関しては、①既婚者トラブルとかぶるところが多いため、既婚者トラブルに統一して説明しています。
マッチングアプリでモテるためのnoteが実技であれば、本書は座学にあたり、一般的にはとても眠たいジャンルです。読んでも絶世の美女に爆モテしたり、ハイスペイケメンと出会える確率はちょっとしか上がりません。
しかし、運転と同じように、座学を受けずに適当に運転すれば普通に事故るのは言うまでもありません。
そして、一旦法律上のトラブルに陥ると時間とメンタルががっつり削がれるし、解決を弁護士に依頼すると軽く結婚相談所の活動費用以上の金額を持っていかれるし、残念ながら大半は泣き寝入りに近いような結果に終わることが多いです。
だからこそ、「幸せな恋愛・結婚をしたい」という情熱は大事にしつつ、その中で1%でいいから基礎知識として護身術を身につけておき、その情熱が裏切られる可能性を激減させていきましょう。
なお、アプリトラブルの被害相談は圧倒的に女性の方が多いのですが、男性からの相談も少なからず寄せられます。
男性で誠実に婚活をしたい人にも、是非、ご覧頂きたいなと思います。
本書の構成について
本書の構成は以下のとおりです。
1 裁判所の事実認定、弁護士の交渉の仕方のルール
結局トラブルの解決の最終ツールは裁判です。裁判には特殊なルールがあり、法廷でどれだけフリートークで苦痛を訴えても、そのルールを押さえていなければこちらに有利な判断はしません。
交渉段階から弁護士が動く場合、担当弁護士は将来的な裁判を見据えた動き方をします。そのため、相手の弁護士からの言い分を潰しておくためには、裁判になったときのルールを押さえておくことが重要です。
とはいえ民事訴訟法の教科書ではないので、正確性よりもわかりやすさを優先して噛み砕いてざっくり説明します。
2 アプリの選び方
たくさんあるアプリから使うアプリを選ぶ時、何かあったときに救済が難しいアプリ、という目で選んでいる人はいないと思います。中にはそもそもの救済が難しくなるアプリもあるため、そういう観点からアプリ選びの考え方についてご説明します。
3 プロフィール文の書き方
完全にトラブルを防ぐには
①そもそもマッチングアプリをやらない
②プロフィールに「詐欺お断り既婚者お断り何かあったらすぐに通報するし顧問弁護士に相談して速攻訴えます」とやばい感じに書いておく
あたりになりますが、①は論外だし、②みたいなプロフィールだとまともな人とすら出会いに繋がらないでしょう。
そこで、プロフィール文について、自然にマッチングアプリを使いつつトラブルを避けれる実用的な方法を意識して執筆しています。
4 マッチング後のメッセージ〜ファーストアポまで留意すべきこと
多くの場合、トラブルは初めて会った以降に起こるので、できれば、ここでヤバイやつのスクリーニングを掛けておく必要があります。また、貞操権侵害トラブルの場合はマッチング時の相手方のスタンスを立証する必要があるので、その点メッセージのやりとりも一定の配慮をするだけでトラブルのリカバーがしやすくなります。
この章ではそれぞれトラブル別に工夫すべき点が異なるので①金銭トラブル防止、②既婚者トラブル防止の観点からそれぞれ書き分けて説明します。
5 出会ったあと交際に至るまで、交際期間中に気をつけること
初めて会ったあと、いいなと思った場合には、交際等の関係に入っていくわけですが、親しくなればなるほど、裏切られるかもしれないというリスクが増えて行きます。いちいちそれを気にしていたら交際なんてやっていけないだろ!という正論を大事にしつつ、ちょっとでも留意すべきこと、例えば相手の話した内容の証拠の残し方等について解説します。
なるべくライトで面白く書こうと心がけましたが、眠くなる人はななめ読みで構いません。また、何かあった時に辞書的に使ってもらっても構いません。必要なときに必要な限度で読んでいただければOKです。
なお、以下の章については、マッチングアプリの教科書に掲載しております。こちらは30分のフォロー相談も付帯しているため、具体的にトラブルが起きている、起きそうで不安、という方はこちらの購入をオススメしております。
本書はマッチングアプリの便利さ、万能さを否定するものではなく(むしろ褒め称えてます)、自衛すべきところはちゃんと自衛して、皆さんが最高の結果を得るためのトリセツです。
本書を読んでくれたみなさんがトラブルを回避してそれぞれいい感じにアプリを使っていくことを願ってやみません。
お買い上げいただく前に…
1 裁判所の事実認定、弁護士の交渉の仕方のルール
ここでは将来なにか起こったときのことを踏まえて、日本のトラブル解決の最終手段である「訴訟(裁判)」についてかんたんになぞっていきます。
訴訟とは、一方の請求について、裁判官が法廷で双方の言い分を聞き、当事者が提出した証拠をみて、最終的に判決を言い渡すことで紛争を解決する手続です。
とは言え、裁判所は、トラブルに駆けつけた警察官のようにそれぞれの言い分を自由に聞いてくれるわけではありません。また、被害者のポジションであっても絶対に肩入れはしてくれません。
どんなにかわいそうな話であって本人がかわいそうな顔をしてディベートしても、ルールに基づいて進めなければ請求は棄却される(認められない)、非情なルールです。
結構誤解されている方がいるのですが、
ここから先は
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?