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臨床心理士による放課後等デイサービスへのコンサルテーション10
#10~#11「枠を越える~コンサルタントが現場に入る」
そんな中、10回目の事例検討会の中で、「コンサルタント(筆者)が支援をしているところを実際に見たい」という要望が上がる。
基本的なコンサルテーションのスタンスとしては、スタッフへの間接支援であり、子どもへの直接的な支援はしないという条件のもと支援に入っている。
非常に迷ったが、この悪い流れが打開できる一手になればと思い、スタッフとともに現場に入ることにした。
これまで事例検討会の中で、対象児についての議論を複数回重ねてきていた。
また、実際に療育の現場にも立ち会っており、Aくんへの対応の難しさはわかっていたつもりであった。
しかし、実際に現場に入ってみると、まったく世界が違って見えた。
外側から見ている世界とはまったくの別世界だった。
手足をばたつかせながら奇声を出すAくんに対して、思いつくかぎりのあらゆる対応法を試したが、何を試してみてもうまくいかない。
Aくんを前にしながら、どうしようもない強烈な無力感に襲われた。
そして、背後に感じるスタッフの視線。
これまで外側からいろいろとコメントをしてきた自分はなにもわかっていなかったのだと、自分を恥じた。
結局その日は何もできないまま、スタッフの助けを借りながらなんとか療育を終えた。
後から振り返って、あの時感じた無力感は、Aくんが日常生活の中で感じている無力感と似た類のものかもしれないと思えた。
また、コンサルタントに見られながら支援を行うというやりづらさという点においては、コンサルティであるスタッフの思いも感じることができたように思えた。
次の事例検討会の中では、コンサルタントが感じた無力感を正直に開示した。
そして、この無力感はAくんが日常生活の中で感じている無力感ではないかということを全体で共有した。
また、自身の支援を後ろから見られていることに対してのやりづらさも共有し、スタッフにヘルプに入ってもらったことの感謝を述べた。
スタッフからは納得の声が上がり、Aくんをまた深く理解できたような気がするという発言が聞かれた。
この回の事例検討会がブレークスルーとなり、全体の流れが変わり、動き始めた。
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