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“捕手”イップスの抑え方

捕手はイップス(投球障害)に陥りやすいポジションである。グラウンドでは常に気を遣ってプレーしなければならないし、チームのために行動することが捕手に求められることであるからだ。そのため「人に気を遣える」ということは捕手にとって必要不可欠なスキルであるのだが、その性格故、デメリットとなることがある。それがイップスを患わせるといくことだ。

しかし、イップスはセルフケアによって抑えることが可能な症状である。その方法を自分の体験と実験をもとに記していく。

結論を言うと、イップスを抑えるために必要なことは3つある。一つ目に、チームメイトへの開示、二つ目に正しいフォームの習得と反復、三つ目にメンタルの改善である。

ステップ1 チームメイトへの開示

イップスになったと自分が感じだ場合、一番初めにやらなければいけないことがチームメイトへの開示である。「自分はイップスである、だから送球がおかしくなる可能性がある」とチームメイトに伝えることが非常に大事なことだ。イップスというのは対人に対する症状であり、人にボールを投げようとするとイップスが発動する。捕りやすいボールを投げなければいけない、相手の胸に良い回転で投げ投げなければいけないと相手に気を遣えば使うほど、その気持ちが強い人ほどイップスは発動しやすいのだ。

チームメイトにイップスであることを公言して、チームメイトの理解を得ることがイップスを抑える上で最も重要になる。ボールを受け取る側が「暴投してもいいから思いっきり投げてこい!」と言ってくれるだけで投げる側の選手はとても安心して投げることができる。チームメイトに公言をして、理解を得るだけでイップスが治まるということもある。野球は個人スポーツではない。テニスやゴルフのように自分一人でイップスを抱え込む必要はないのだ。チームで協力して足りない部分はお互いが補い合う。野球というスポーツの素晴らしい部分である。


ステップ2 正しいフォームの習得と反復

イップスの原因として大きなものは2つ、技術の不足とメンタルである。技術によってメンタルを向上させることができる生物学的に正しい投球フォームを身につけてそれを身体に覚えさせることがイップスを抑え込む処方箋になる。

自分はPL時代、イップスになった一年生の頃、一番送球の良い先輩の投球フォームを研究し、それをコピーしながら毎日ネットスローで300球投げ込んでいた。自分の場合、野球生命が終わる程の重度のイップスだったので、そのときの心情としてはイップスで野球が終わるよりも練習のしすぎで肩肘の怪我で野球ができなくなるほうがまだカッコがつこと決断し、ガムシャラに努力をした。過度の投げ込みは推奨はしないが、自分の場合、その経験がメンタルの強化に繋がり、結果イップスを抑え込む要因となった。

フォームが安定してくると当然だが送球が安定する。そこからはネットスローとキャッチボールを交互に行う。キャッチボールで課題が見つかれば、その反省点を改善するために、ネットスローを行う。普段のキャッチボールを披露回(本番)と捉え、そのリハーサル(練習)をネットスローで行う。

ステップ3 メンタルの改善

チームメイトにイップスであることを公言し、正しい投球フォームを身につけるためのネットスローを行ったら最後にメンタルの改善を行う。

メンタルを強化するというよりは、メンタルを安定させる。イップスを無くすと考えるのではなく、イップスである自分を受け入れることがとても大切である。イップスの選手が目指すメンタルの境地としては、

「これだけ練習をして、やれるだけのことはやったのだから、これでイップスが発動したらしょうがない」

と思うことだ。一度イップスを発動した人は、完全にイップスが消滅することはない。イップスとはナルトの世界の九尾のようなもので自分の中に居座り続ける。だから如何にイップスを表に出さずコントロールをするかが鍵なのである。イップスをコントロールする術としてのスリーステップなのだ。


以上がイップスを抑えるためのスリーステップであるチームメイトへの開示、正しいフォームの習得、イップスを受けいれるメンタルがあれば、イップスとうまく付き合えることができる。その時、送球があなたの武器になり、また野球を心から楽しめるはずだ。チームを勝利に導く扇の要となって。


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