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PL学園硬式野球部一年(平成版PL飯編)

この時のために生きてきた。時刻は深夜3時。僕たちはゴキブリの如くクッキング室へと忍び込み一年生だけの静かなる宴を開催しようとしていた。

1日の全ての仕事を終わらせた深夜3時。最後に食べ物を口にしたのは夕方の6時。ほとんど味のしない食堂の晩飯を流し込みその後ぶっとうしで9時間の労働を終わらせた。

空腹とメンタルは限界を迎えていた。このまま寝ることも可能だが今眠ってしまってはメンタルが回復しない。

「何かを食べろ」 脳が僕に命令を下す。ロッカーの奥の方に隠し持っていた日清の袋焼きそばとサトウのご飯、ホテイの焼き鳥(たれ味)を持って唯一簡易的な料理のできる部屋でる「クッキング室」に忍び込んだ。

上級生が寝静まっているとは言え、音を出すことは許されない。僕は絶対的な寮のルールである、「一年はクッキング室を利用してはいけない」を破ろうとしてるのだ。

恐る恐る、調理をする為にクッキング室に入る。中に入ると僕と同じようにメンタルを回復させる為にクッキング室に潜り込んだ同胞の一年が何人かすでに勢いよくラーメンをすすっていた。豚骨ベースの醤油のいい匂いが僕の体を包み込む。

その匂いに反応するかのように僕のお腹がギューーールと高い音を奏でる。

その場に一年はいるのだが、各々の目的は食事をすることなので、基本的には言葉を発さない。全員が食べることに必死なのだ。

僕は一目散に丼 を棚から取り出す。そこに日清の袋麺を入れ、熱湯をかける。その丼を3分30秒電子レンジにかけるのだ。その間にホテイの焼き鳥の缶詰をオーブンで温める。

電子レンジで焼きそばが茹で上がると間髪を入れずに全てのお湯を一滴残らず切り落とす。そこに日清の粉末ソースを加え、まんべんなく麺に絡める。その後に付属の青のりを均等にかける。そして極め付けはマヨネーズ。これでもかというほどに日清の焼きそばの上にマヨネーズをかければ、PL焼きそばの完成だ。

オーブンで温めた焼き鳥を取り出し、レンジでちんをしたサトウのご飯の上にその焼き鳥をたれの一滴も残さずにかける。極め付けはマヨネーズ。ここにもこれでもかというほどにマヨネーズをかければ、PL焼き鳥ご飯が完成する。

何品かあるPL飯の中でも軍を抜いて人気のある、日清の焼きそばと焼き鳥ご飯のセット。なんども、なんども先輩にこのセットを作らされていたので、一年の中でこのセットを食べることはある意味希望であり、夢であり生きがいだった。

とにかく味の濃い食べ物に飢えていた僕はそのPLセットをものの五分で平らげた。全身にその味が行き渡り、幸せを噛みしめる。

これで明日も頑張れる。またこのPL飯を食べるために。 。

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