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『推し、燃ゆ』を読んで

夏休み読書感想文企画ということで、それぞれ課題図書を用意し、読み、感想を書いていくという流れです。みんなの感想文を読みたいがために一生懸命感想を書いていきます。

私が課題図書に『推し、燃ゆ』を選んだ理由

 この作品を選んだ理由、それは三次元にいる推し特有の『炎上』が取り扱われているからです。ひとの『推し』の炎上を見るたびに可哀想…と思い、推しはクリーンだからそんな炎上なんてしないよね♪と推しへの想いを強くします。実際推しが燃えたことはまぁ普通にあるんですが、その時はシンプルに私の実生活に影響を与えました。推しが燃えることは推しだけではなく推しを取り巻く全てに支障をきたし、炎上から這い上がってこれるひとたちは一握り。炎上の大小はあれど燃えた以上は一生レッテルを貼られます。『推し』の炎上を描いた作品だから気になったと言えばまぁそれまでなんですが、実際純文学読んでる私カッケーーーーーって思って選んだ節もあります。そういう感じで買う本ってあるよね。ドグラ・マグラとか。

私が思う作品のサビ

私が思うこの作品のサビは二つです。
ここで言うサビは、1番盛り上がるところという意味で使用しています。
個人の感想なので正直私が響いたところというのが正しいですね。

この物語は推しとの出会いをきっかけに主人公が自我を持つ所から始まります。よく言う、推しを推す前の人生は何をしていたのか記憶が無い、的な描写なのかなぁとやんわり思ったりなどしました。

推しを推すという事

 三次元の推しを推すことは、必ずしも握手しなければならないわけでも会いに行かなければいけないわけでも、認知されないと推せない訳でもありません。人それぞれの推し方があります。推しと接触しないこと、自分の存在を知られない事(推しと交わる世界線を不要とする)を良しとする推し方もありますからね。こちらからの推しを推す活動は一方通行でありながらも推すことそのものに幸福感を感じられるのは推しがいる人なら誰でもわかる感覚なのではないでしょうか。    『付き合えるわけないのになんでそんなに応援するわけ?』という問がよく推しがいない人間から発せられますが、推しに好かれたい訳でもない、ただ、推しを推したいそれだけだからです。そこにある理由は推す人間ごとに様々ですが、根底にあるものは皆同じかと思います。

怠惰な自分への理解

 この作品は他の人と同じように生きれない、不器用な主人公が描かれています。(作中で医者から病名をつけられた描写がある。恐らく鬱かADHDなどのような精神系の疾患)
バイトでは何度も同じ失敗をし、怒られ続ける。
友達も1人しかおらず、推しを推す事しか趣味が無い。
勉強もできず、高校を中退。
(言われた事をやらない為親からも姉からも蔑まれる。
激しく詰られている訳ではなく、母親も姉も主人公を愛そうとしているが、人よりできない主人公への期待をやめられず、疾患への理解のなさからくる侮蔑)

 高校を中退したあと、バイトも探さずにダラダラしている主人公に親は『働かない人間をいつまでも養えない』と、独り立ちを促されます。

 引用は独り立ち後の主人公が、ひとりぼっちの部屋でゴミに囲まれて考えている場面です。私もこれに心当たりがありすぎる。普通の人間ならゴミを捨て、ご飯を作り、洗濯をして、働くことが当たり前にできるのですが、私にはできません。厳密にはすごーーーく頑張るとできるんですが、まぁ無理です。うわーーーーこれ、私じゃん……。となりました。これって健常者は共感という目線ではなくて難解な話として受け取るんですかね。これは恐らく、私と1本線のズレた、でもいつでも繋がってしまいそうな世界だ……と思わされます。

おわりに

 作品を読み終わってすぐ、Twitterで検索をかけました。私と同じような気持ちになっている人たちを探したくて。作品としては賛否両論ありました。気持ちいいオチがある作品がある訳では無いので否の気持ちもわからなくは無いのですが、自分がやんわりと脳内にあった気持ちを主人公も持っている、考えている言葉を文字にしてもらった節があるので私はこの作品、読んで良かったです。
 現代のキャッチャーインザと評する人が居ましたが、まさにそうだなと読み終わって感じます。独り立ちをしようと思えば出来てしまう、大人とも子供ともつかない微妙な年齢、人と同じように生きることが出来ない自分の気持ちを誰もわかってはくれない、むしろ悪く思われ腫れ物のような扱いの状況はキャッチャーインザライと重なるところがあります。

 この作品の主人公は、推しの炎上をきっかけにダメな人間になってしまったように見えますが、恐らく違うのでしょう。元々少しづつ歪みが見えていた人生が推しの炎上をきっかけとして歪みが最大に可視化されただけのように感じます。なんとなく昔から人と違って上手くいかないと感じていた、よく人と比べられていた、でも、なんやかんやみんなと自分は同じだと思っていた。そういう女の子のお話です。推しが炎上してどうこうと言うより、推しの炎上がきっかけに何かが変わった話でしたね。

 月並みですが、3次元に推しがいたり、自分が人と違っているんじゃないかと思って劣等感を抱いている人、学生に特に読んでもらいたいです。


まろに

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