「モノクロの光」
第5章 現像する
山にいった翌年の夏、レンゲショウマを撮った。バルナックライ
カで撮ったレンゲショウマのモノクロ写真はその年の新人写真家の
登竜門で賞を取った。賞の授賞式でカエデ先生は、私に抱きつきマ
スカラが落ちて目を真っ黒にさせながらわんわん泣いた。「おかえ
り、おかえり」と何度も言いながら。
小さな花を見ると思い出す。「その帽子、かわいいね」「ワタス
ゲの実を紡いで編んだんだ」「その首飾り素敵だね」「マツカサの
実だよ。大きくなったらこれで鎧を作るんだ」何気なくしたこびと
との会話。かけがえのない私だけの光の思い出だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?