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No.5 「pool」

第五回目は、だいぶ飛んで9枚目のアルバム『Cicada』から「pool」をご紹介します。

さてこの「pool」ですが、前回紹介した「夏のスピード」と実は大きな関わりがあると考えています。この曲単品ではそれはわかりません。次回紹介する曲を「かすがい」として、全てが一直線に繋がるんですね。

え、どこが関係あるの???という疑問を胸に読んでいただけると、次回がより面白くなると思います。それでは見ていきましょう。

プールの監視員が よそ見をしている
本当の夏はそっちの方に見えますか
誘う水にだれも 見向きもしない
まるで水着を濡らさないようにしてるみたい

この「pool」、初めからとりつく島もないことを言ってしまえば、歌詞自体に考察の余地はあまりありません。素朴な情景描写と、ブラジリアンなサウンドの交わりをお手軽に楽しんでもらう、そんな感じの一曲だと思っています。この歌が重要なのは、あくまで前述した二曲との関わりにおいてなのです。

とはいえ個人的には大好きな一曲ですし、情景描写のクオリティとしては実は一頭地を抜いている部分がある作品だと思っているので、今回は大感想大会と洒落込むことにしましょう。大切な箇所は太字にしますから、そこだけ追ってもらえれば次回への導入は完璧です。

さて。「プールの監視員」も、そこにいる「だれ」も、バシャバシャと「誘う水」に見向きもしない。「本当の夏はそっちの方に見えますか」という皮肉めいた表現が小洒落てます。

壁の向こうではジワジワとセミも鳴いているのでしょう。日差しと、真っ白なプールサイド。すぐ近くのはずの、しかし遠くに聞こえる喧騒。水飛沫、水面の乱反射。その中で主人公だけがスポットライトを浴びているように、孤独に、際立っている感じが伝わってきます。

しかし、この「誘う水」。誰がバシャバシャやっているんでしょうかね...?

これについては後述します。

準備体操もろくにしないまま
誰よりも先に飛び込んだ
16の時のガールフレンド

そこに突如現れるのが「ガールフレンド」です。奇妙な、ギラギラとした静寂の風景を横切る一条の裂け目。

早速めちゃくちゃ大事な要素が出てきました。それが、彼女は主人公が「16の時」の「ガールフレンド」なのだということです。これは是非とも頭に入れておいてください。

「誰よりも先に」というのはどういうことでしょうね。安全点検の時間でみんな水から上がっていたのでしょうか。

主人公と「ガールフレンド」が集団でやってきていたとは考えにくいので、ここではプールサイドの「誰よりも」ということでしょうね。仲間内の「誰よりも」という限定された意味では、おそらくないのだと思います。確定はできませんが。

君にもう一度あいたいな
氷イチゴの真っ赤な舌で笑ってた
君にもう一度あいたいな
毎年僕の夏に咲いてたひまわり

「氷イチゴの真っ赤な舌で笑ってた」なんて、ストレートな表現が素敵ですね。
ここはそんなに解釈の余地はありません。

「ひまわり」は、そのままの名前で一曲あるほどマッキーにとっては重要なモチーフのようです。また後日ご紹介する機会があると思います。

指をさしながら 笑った後で 
ちゃんと僕に泳ぎ方を教えてくれた
おもちゃ屋の軒先に並ぶ花火
小遣いがたりなくて諦めたやつも
今は買えるくらいにはなった

「ちゃんと僕に泳ぎ方を教えてくれた」。「僕」をからかいながらも、なんだかんだちゃんと向き合ってくれるいい子だったということです。「僕」は、泳ぐのがあまり上手ではなかったのでしょうかね?

「花火」のくだりは一見何にも関係ないことをつらつら書いているようにも見えますが、当時から「今」までかなりの時間が経ってしまったということを振り返っている表現だと見るのが妥当でしょう。

君にもう一度あいたいな
案外違う名字になっていたりして
君にもう一度あいたいな
毎年僕の夏に咲いてたひまわり

ここもストレートな表現が続きます。気になるのは「名字」です。

他の誰かと結婚してしまっているかもな、ということですよね。かなり長いこと、「君」とは会っていないのだということが分かります。

少し脱線しますが、マッキーの曲には度々、誰かから手紙が送られてくる描写が登場します。(「CLASS OF 89」や「merry-go-round」。)そして特に後者では、「名字」のことがはっきり話題に出ています。この辺はおそらく彼の中で、決まった誰かがイメージされて書かれているのだろうと睨んでいます。「涙のクリスマス」とかはちょっと別なのかと思いますが...。

折角なのでもう少し突っ込むと、マッキーはシングルのカップリング(それもアルバムに縁遠めの曲達)に特定の誰かをイメージしている説が濃厚な匂わせ曲を盛り込みがちです。「勝利の笑顔」、「夏のスピード」、「キミノテノヒラ」などなど。そして上述の二曲も漏れなく該当するんですね。なんかあると見るのが筋ってもんでしょう。めちゃ野暮ですけどね。歌っちゃってるのが悪い!笑

「はやくおいでよ」って笑う声と水音が
あわてて脱いだシャツに集まったんだ
時間が止まればいいと思った

さあ、ちょっと難解な表現の登場です。気合を入れていきましょう。

「声」、「水音」。聴覚的なものが「シャツに集まった」...。どういうことなんでしょうか。状況を整理してみます。

まず、「先に飛び込んだ」「君」がプールの中にいるんですよね。それで、「僕」は急いでプールに入ろうとしている。「君」は、「早くおいでよ」と笑いながら、僕に水をパチャパチャやって「水音」を立てている...。

気がつきましたか?ここで、一番で投げかけた疑問を振り返ってみましょう。

誰にも見向きもされない「誘う水」...。これ、「君」が「僕」を「誘う水」なのではないでしょうか?

歌詞の中で時系列が結構グチャグチャなのでわかりにくいですが、次のように整理できると思うんです。

彼女が真っ先に飛び込む...一番の中盤、「誰よりも先に飛び込んだ〜」のところ

僕をパチャパチャと誘う...一番の序盤、「誘う水に誰も〜」のところ

僕も慌てて飛び込み、泳ぐ...二番の序盤、「指をさしながら〜」のところ

「プールの監視員」や他の客が反応していなかったのは、「ガールフレンド」の行動に対してだったということですね。周囲から切り離された、「僕」と「君」だけの空間が現出していたわけなんです。

さて、「シャツに集まった」話に戻ります。

今の話を考えると、「君」が呼ぶ声、「水音」は「僕」に集中している、と言えませんか。つまり、他の人はそれらの音に一切反応しないわけですから、その音たちの行く先・聞き届け人は、「僕」だけだということです。

「僕」は「君」に続いて「あわてて」プールに入ろうとしている最中だったのでしょう。その「僕」に、「君」の放つ「声」や「水音」が独占的に向けられているのです。「集まっ」ているんです。「シャツ」というのは、「あわてて」プールに入ろうとする僕が「シャツ」を脱ぎかけていたので、ここでは「君」からの音が「集まっ」ているのを僕自身ではなく、「脱ぎかけのシャツ」で置き換えただけだと思います。そっちの方がお洒落でいい表現ですよね。

「早くおいでよ」というのは早く(シャツを脱いで入って)おいでよ、ということだと思うので、「シャツ」に「君」の意識が向いていたのだろうという感じもします。

そしてだからこそ、「時間が止まればいいと思った」のでしょう。「君」と「僕」の、二人きりの世界を強く感じることができた、幸せな瞬間だったから。

君にもう一度あいたいな
氷イチゴの真っ赤な舌で笑ってた
君にもう一度あいたいな
毎年僕の夏に咲いてたひまわり

最後はまたストレートな表現でシメ。爽快感のある、夏にぴったりの一曲でした。


さて。この曲からは、

・「16の時」、「僕」には「ガールフレンド」がいたこと
・二人は夏晴れのある日、「プール」に遊びに行っていたこと

が読み取れますね。ぜひ覚えておいてください。
次回、「夏のスピード」と「pool」と繋ぐ曲を紹介するのですが、それにも大きく関係してきますので。

そして、その曲とは...。

ファーストアルバム(シングルも)二曲目、
RAIN DANCE MUSIC」です!

やっと、「ANSWER」から逸れに逸れた紹介もアルバム順に戻ってきたわけです。(全部計算の内ですよ!笑)

言葉の表面的なつながりだけを頼りに行なっている、かな〜り冒険的な解釈ですので、一ファンの大妄想物語だと思って読んでいただけると幸いです笑。


それでは。

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