見出し画像

娘を持つ映画マニアの父による優しくも悲しい復讐劇『共謀家族』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:56/156
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

サスペンス
映画マニア
復讐劇

【あらすじ】

東南アジア、タイ。リー・ウェイジエ(シャオ・ヤン)は、幼き日に中国からこの地に移り住んできた。今は妻のアユー(タン・ジュオ)、高校生の娘ピンピン(シュー・ウェンシャン)、まだ幼い娘アンアン(シラン・チャン)の一家4人で幸せな毎日を送っている。

小さなインターネット回線会社を経営しているリーは、信心深く穏やかな人柄で、地域の誰からも好かれていた。『ショーシャンクの空に』が大好きなリーは、暇さえあれば事務所で映画ばかり観ている映画マニアでもあった。

そんなある日、サマーキャンプに出掛けたピンピンが、不良高校生に睡眠薬を飲まされて暴行され、その様子をスマホで撮られてしまう。ネットに動画を上げると脅されたピンピンは、自宅にやってきたその不良、スーチャット(ピエン・チョンヤン)からスマホを奪おうと揉み合いになり、誤って彼を殺してしまう。スーチャットは地区の警察局長の一人息子だった。

出張から帰り、妻からすべてを聞かされたリーは、愛する娘と家族を守るため、完璧なアリバイ作りに着手する。常々「映画を1000本も見れば、世界にわからないことなどない」と考えていたリーは、それまで観てきた膨大な犯罪映画のトリックを応用し、捜査の先の先まで読み尽くした完全犯罪を計画する。

警察の事情聴取に備え、妻子に想定尋問を繰り返すリーと家族との「共謀」の先にはしかし、予想もつかない結末が待っていた―。

【感想】

暴行を受けた娘のために一肌脱ぐ父親の話です。娘を持つお父さん視点だったら、最後とか泣いちゃうかもしれません。。。娘のいない僕ですら、ちょっとウルってきましたからね。

<映画マニアは一旦忘れた方がいい>

最初から設定にケチつけるようで恐縮なんですが、この映画は主人公のリーが映画マニアで、過去の作品のトリックを利用するとあります。なので、いろんな過去の名作からの引用があるのかなって思ったんですが、正直そんなでもなかったです。

「映画を1000本も見れば、世界にわからないことなどない」というセリフがある割には、有名な映画は『ショーシャンクの空に』ぐらいで、あとの映画はわからなかったんですよね。。。いや、映画好きな人からしたらわかるのかもしれませんが。。。でね、過去の名作のトリックを使うというよりも、その映画の“とあるセリフ”に着想を得るだけなので、この映画マニアっていう設定に引っ張られるとやや物足りない感じがしてしまいます。

<犯罪映画として普通に面白い>

ただ、本作はそんな映画マニアという設定なんかがなくても、犯罪映画として普通に面白いんですよ。誤って殺してしまったスーチャットの遺体を隠し、自分たちは一切彼のことを知らないというふうに家族全員で口裏を合わせ、アリバイもうまく作り上げ、警察の捜査を撹乱させます。警察の尋問にビビりながらも、事前に打ち合わせした内容を父・母・姉・妹の4人がしれっと答えているところは、どこかでボロが出るんじゃないかとヒヤヒヤしました。

また、リーは誰からも好かれる人物だったことも幸いして、まわりからの証言も好意的なものばかり。スーチャットを殺してしまったことに変わりはありませんが、こういうときに日頃の行いは出るよなって思います。

<本作のテーマはまさに子を愛する親>

犯罪映画ではあるんですが、この映画の本質は親から子への愛ですよ。リーは傷つけられた娘を守れなかったことを悔やみ、どんな手を使ってでも刑務所に入れまいとします。一方、スーチャットの母親であるラーウェン警察局長もまた、子供を愛するがゆえにどんな手を使ってでも犯人を捕まえようとします。個人的には、もうこれは10対0でスーチャットが悪いし、死を以って償って欲しいという気持ちは強いです。でも、どんなにクズな悪ガキだろうが、彼もまた人の子。あんな息子でも、愛してくれる母親がいるんですよね。

だから、この映画は子を持つ親同士の、子を愛するがゆえの戦いでもあるんですよ。とはいえ、スーチャット側にはまったく同情や共感の余地はありませんが。

<その他>

僕には子供がいませんが、この手の映画はきっと子を持つ親目線だと、また違った印象を受けるのではないかと思います。とにかく、リーの娘に対する想いや行動に感動するお話で、基本サスペンスなんですけど、ヒューマンドラマっぽい部分もあるので、興味があったらぜひ観てみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?