佐藤二朗に恐怖を覚える『はるヲうるひと』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:91/109
ストーリー:★★☆☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★☆☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
家族
売春
【あらすじ】
その島は、至るところに「置屋」が点在する。本土からは日に2度連絡船が出ており、客の往来の足となっている。
住民たちはこの閉塞された島で一生を過ごす。女は客から「外」の話を聞いて思いを馳せる。男は、女たちのそんな「夢」を一笑に附して留まらせる。
ある置屋にその「三兄妹」はいた。長男の哲雄(佐藤二朗)は、店を仕切り、その凶暴凶悪な性格で恐れられている。次男の得太(山田孝之)は、哲雄にこびへつらい、子分のように従っている。長女のいぶき(仲里依紗)は、長年の持病を患い、床に伏してる。
ここで働く4人の個性的な遊女たちは、哲雄に支配され、得太をバカにして、いぶきに嫉妬していた。女を売る家で唯一女を売らず、それどころか優遇された箱入り娘。しかも、いぶきは誰よりも美しかった。
なぜ哲雄は弟と妹に辛く当たるのか。三兄妹にまつわる秘密とは。
【感想】
置屋を舞台にした三兄妹と遊女たちを描いたシリアスなヒューマンドラマですね。生きる場所が限られた中での息の詰まる人間関係は観ているだけで窒息しそうになりました。
<得太といぶきの肩身の狭さが尋常じゃない>
兄に怯える毎日を過ごす得太と、同じ女性なのに自分だけ特別扱いされ、遊女たちに疎まれているいぶきってのは、この映画の中でもずば抜けて肩身が狭く、とてつもなくストレスフルに感じました。しかも、島なので逃げ場がないですからね。。。この閉塞感は観客から見ても辛い状況ですよ。。。
<ハンパない演技力に脱帽>
その辛い設定をさらに際立たせているのが、役者の圧倒的な演技力です。島に暮らす人々の淡々とした日常がメインなので、正直物語そのものに動きは少ないんですよ。でも、この前観た『女たち』同様、役者の演技ですべてカバーしていましたね。
中でも、普段コメディな役が多い佐藤二朗さんの、冷酷かつ残忍なキャラクターは際立っていましたね。それは、自分の両親にまつわる幼少期の体験に端を発するのですが、「この人こんな役もできるのか」と思うほど、観ていて恐怖を感じます。
そんな兄に服従しつつも、妹の身を案じ続ける得太を演じた山田孝之さんもすごいんですよ。あの死んだような目つきからの、感情が爆発してしまう演技は凄まじいものがありました。
この2人のキャラクターと演技でもってるようなもんかと。
<遊女たちをもっと目立たせて欲しかった>
その分、遊女たちがちょっと地味だったんですよね。自分たちの置かれた状況を受け入れ、今ある中に小さな幸せを見つけるような姿勢に逞しさを感じるんですが、あらすじに書かれてるような、得太をバカにして、いぶきに嫉妬するっていうのがあまり伝わって来なかったんですよ。また、4人いる遊女のうち、体張ってたの実質2人だけだったので、あんまり置屋って感じもせず。。。ここらへん、彼女らの素性なども交えて掘り下げたら、もっといい味出たんじゃないかなーって思いますけど、、、まあそれやったら2時間に収まらないか(笑)
<その他>
この映画、脚本を書かれたのも佐藤二郎さん本人ってこともあってか、セリフの言い回しがものすごく彼っぽいんですよね。そのせいか、シリアスなシーンでもあんまりシリアスに感じないというか、どうしてもコメディのイメージが出てきてしまい、少し笑いそうになってしまいました。
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