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映画初出演にしてこの演技力、悩めるティーンを演じたら右に出る者はいないジェームズ・ディーンのすごさがわかる『エデンの東』

【個人的な評価】

「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:5/6
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ヒューマンドラマ

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 ジョン・スタインベック『エデンの東』(1952)

【あらすじ】

1917年、第一次世界大戦下のカリフォルニア州サリナス。キャル(ジェームス・ディーン)は、農場を営む父アダム(レイモンド・マッセイ)が兄ばかりをかわいがっていると反抗し、問題児扱いされていた。兄の恋人アブラ(ジュリー・ハリス)は、そんな愛情に飢えたキャルを何かと気にかけていた。

ある日、キャルは死んだと聞かされていた母ケート(ジョー・ヴァン・フリート)が実は生きていて、モントレーで酒場を経営していると知るが―。

【感想】

「午前十時の映画祭12」にて。1955年のアメリカ映画。ジェームズ・ディーンはこの作品で名実共に一躍スターの地位を不動のものとしたらしいですね。

<映画初出演とは思えない演技力>

昔の映画と言うのはけっこう好みが分かれると思います。まあどこまでを昔というのかは人によって様々だと思いますけど、特に50年代~60年代の映画は今とはかなり作り方も違うし、何がかっこいいかっていう美的センスもちがうと思うので、現代人からしたら理解できないこともあるんじゃないかなと。それは僕自身も含めてですが。

でも、そういう差があることを踏まえても、この映画ですごいなと思うのが、まずはジェームズ・ディーンの演技ですね。彼、厳密には過去にエキストラで参加した作品がいくつかあるものの、きちんと出演という形になったのはこの映画が初めてなんですよ。それでいて主演。『理由なき反抗』(1955)でもそうだったんですが、悩めるティーンという役どころがメチャクチャハマってるんですよね。現代においては、ちょっと前まではティモシー・シャラメが悩めるティーンをやらせたら右に出るものはいないんじゃないかって個人的には思ってましたけど、ジェームズ・ディーンはまさにその元祖って感じですかね。

特に目が離せないのが終盤のシーンです。誕生日である父親を喜ばせようとあるプレゼントを用意するんだけど、それを受け入れてもらえなくて。そのときのあの悲しそうな悔しそうな、「なんでいつも俺だけ……」っていう表情と声がものすごくよかったんですよ。ジェームズ・ディーン自体も父親に愛されず、母親も幼くして失くした経緯があるからか、こういう家庭に居場所のない役っていうのは、自分事として演じることができたのかもしれませんね。

<すべての映画の元祖と言えるんじゃないかというストーリー>

で、そんな彼を引き立たせているのが、この映画のもうひとつよかったポイントであるストーリーだと思いました。自分を捨てた母親に対する愛情への飢え。兄ばかりひいきする父親との確執。優秀な兄に対する羨み。これらって現代映画でもよく題材とされますよね。そういうオーソドックスというか、基本の設定がすべて詰め込まれているんですよ。そういう意味ではまさに現代映画の元祖と言えるかもしれません(いや、実は僕が知らないだけでもっと昔に元祖と言える映画があるかもしれませんがw)。

今から65年以上も前の映画なので、感覚からしたら「そんな映画にするほどの内容かな?」っていう思いもなくはないですし、進行自体は淡々としているので、ちょっと退屈に感じてしまう人もいるかもしれませんが、ここまでいろんな要素を詰め込んでひとつの形にできるのは単純にすごいなと思いました。

<そんなわけで>

映画が好きでいろいろ観たいっていう人は絶対に押さえておいて損はない作品だと思います。ジェームズ・ディーン、交通事故で24歳にしてこの世を去ってしまいましたが、彼が伝説と言われる所以がわかります。様々なポップカルチャーやライフスタイルに影響を与え、美の価値観にも影響を与えた人物。彼と同じ時代を生きてみたかったですね。


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