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強制収容所の実情を告発するために命がけで脱獄した2人の囚人の逃避行『アウシュヴィッツ・レポート』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:106/155
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:☆☆☆☆☆(本編でBGMなし)
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
ホロコースト
ユダヤ人
ナチス
逃避行

【あらすじ】

第二次世界大戦中の1944年。ユダヤ人が収監されたアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で、過酷な労働を強いられて殺害される人々の遺体記録係をしているスロバキア人のアルフレート(ノエル・ツツォル)は、ナチスドイツによるその残虐な行為の証拠を持ち出し、有力者に届けるために脱走を企てる。

協力した仲間たちは「正直に話せば全員宿舎に戻れる」と執拗に拷問される一方、アルフレートたちはホロコーストの真実を世界に伝えるため国境を目指す。

奇跡的に救出されたアルフレートとヴァルターは、赤十字職員にアウシュビッツの実態を告白し、レポートとして提出するが……。

【感想】

復讐者たち』に続き、本日ホロコースト系映画の2本目です。これもまた事実に基づいて作られた作品ですね。

<映画としての面白さと歴史的事実を知れる有意義さ>

個人的にはさっきの『復讐者たち』よりも、この映画の方が面白いと感じました。これはアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で行われていた非人道的な行為の数々を告発しようと、脱走したユダヤ人2人の逃避行です。強制収容所内における拷問の怖さと、逃げている2人がいつか見つかりやしないかというスリルが、映画としても楽しめる構図になっています。とはいえ、全体的に暗く重いテーマなので、メチャクチャスピード感あふれるドラスティックな展開かというとそんなことはないんですが(笑)こういうことをしたユダヤ人がいたんだということすら初耳だったので、歴史を知れる上でも貴重でしたね。

<信用されないもどかしさ>

この映画で、個人的に一番印象的だったのは終盤のシーンですね。無事に脱獄して、ポーランドにある赤十字社にたどり着くんですが、そこで強制収容所の悲惨な状況を伝えても信じてもらえないんですよ。ドイツがこの強制収容所を「難民キャンプ」と発表していたから無理もないんですけど。しかも、赤十字社はそこへ食糧や石鹸なども寄付していたんですよね。当然、囚人たちには届いていません。

映画を観ている側、というより歴史的事実を知っている側からしたら、なかなか信じようとしない担当者にイライラしてきます。「その証言の確からしさは?」なんて、会社で上の人が言うようなことをしれっと言ってくるあたりが、「このポンコツたぬきが!」って思っちゃっいましたけど、まあ当時からしたら仕方ないことかもしれません。

結局、脱獄した2人によるレポートによって、12万人の命は救われたようですが、それが正式に受理されるまでにはけっこうな時間がかかり、その間に失われた命も多いようです。どこまで正確な数字かはわかりませんが、250万人がアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所に送還され、そのうち110万人が何らかの形で命を落としたという、本当に胸が痛くなる事実です。。。

<エンドクレジットに注目>

そして、この映画、エンドクレジットまできちんと観て欲しいです。ここでいろんな人のスピーチ音声が流れます。いつ誰が発したものかは僕にはわからなかったんですが、ユダヤ人や黒人、LGBTなどのマイノリティに対する差別的・侮辱的な発言のオンパレード。今これをリアルで発信したら間違いなく炎上かつ下手したら殺されるんじゃないかってぐらい、聞いていて衝撃を受ける発言の数々でした。

当然、かなり昔のものでしょうけど、そもそも映画の冒頭で、「過去を覚えていない人は、過去を繰り返す運命にある」と、ジョージ・サンタヤーナという哲学者の言葉が紹介されるんですよね。このユダヤ人への迫害は、現在も形を変えて残り続けているというメッセージかもなって感じました。

<その他>

自分はホロコーストでユダヤ人が大量に殺されたという事実を学校で習った程度でしか知りませんが、その中でも抗うことができずに死んでいった人、この映画の2人のように抗って脱獄できた人、そしてさっきの『復讐者たち』のように生き延びて報復をしている人など、いろんな人がいるんだと改めて知りました。ホロコーストの話だと、『シンドラーのリスト』のように、ユダヤ人を救った話が有名ですが、強制収容所内での生活やユダヤ人が受けた様々な苦痛に関しては、まだまだ知らないことが多そうです。。。


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