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人の経験とカンの自動化(組立業者編)

 こんにちは。前回の続きで、人の経験とカンの自動化(簡素化)を、組立業者に関してまとめたいと思います。組立業者と一言で言っても様々な業者があり、最終製品の組立や一品一様の製品等、製品それぞれで作業の内容が全く違いますが、大まかに組立作業として考えました。

組立業者の人のカンの作業


1. 組立手順を考える作業

 組立手順を考える作業は、主に作業内容・工数把握→標準化→作業手順書の作成となりますが、この工数把握と手順書の作成に時間がかかるため、これらをデジタル化することで短縮できると思います。
・工数手順シュミレーション
 下記には組立作業のシュミレーションソフトを使って、手順書の作成を自動化するものの例です。
一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブの事例

日立の3DCADデータから3D作業手順書を自動生成するシステム

・工数把握
 作業標準化するためには、実際にかかった作業工数を把握することが必要となります。機械であれば簡単ですが、人が行う組立工数を把握するためには、多くの労力が必要となります。カメラで録画しておき後から見返すこともできますが、余程時間に余裕がなければできません。多品種少量の現場では現実的ではないと思います。
 一般的にはバーコードリーダーで管理されます。作業指示書を発行して、開始時と終了時にその作業を読み取ることで、ログを残します。
 最近では、別のロガーを使った管理を試しているところが増えてきました。今までは人が紙に記録していた作業内容・時間を、予め用意しておいたスマホの画面をタッチしたり、スマートウォッチ等でログをとって把握するというものです。スマホで行う場合、作業内容名も記入できるため、予期していなかった作業を随時新たに追加できるので、少しは現実味があるのではないかと思います。

ロガーでの管理システム


バーコードでの工数管理システム


 ただ手順書の作成時間短縮、工数把握のいずれも、産業機械のような一品一様の製品を生産している現場は、非常に困難です。大体は社長や、製造責任者の頭の中で考えられていることが多いです。これらを自動化するには、作業を細分化して、可能な作業から標準化して、工数把握することが必要となります。これらの業者は、受注量が景気によって左右されることが多いため、ロガーなどでデータ(記録)をとっておき、今の時期のように仕事が減った際に見直しても良いかもしれません。実際私の知っている機械装置業者は、今年にそのような取組をして、今後需要が増えた際に備えているところも数社聞いています。


2.  生産計画を立てる作業 (どの場所・機械で誰が行うかを判断する作業)、生産管理 (工程進捗管理・修正、在庫管理を行う作業)、調達作業 (購入品の金額を判断、納期・在庫管理を行う作業)

 組立手順がわかったあとで、いつ・誰がどの場所で行うか等の計画を立てて・進捗管理することが必要です。これらは生産管理システムで行うことが一般的で、ほとんどの業者が導入されていると思います。
 加工業者との違いは、購入・外注部品がいつ入るか、誰が適任か、どの場所で行うか等、生産する製品によって違うこと、外的要因による計画変更が多いことです。
 組立業者では購入部品も多く、それらの納期管理・過去実績との金額比較・管理等も生産管理システムで行うことで短縮できます。調達としては、そのような細かな事務手続き、確認作業をシステムに任せることで、実際に調達先を訪問したり、交渉したり、新たな調達先の開拓に時間を当てるべきだと思います。

 組立業の生産管理システムに関しての記事が大塚商会のHPにありました。

 テクノアでは、産業機械などの一品一様生産に特価したシステムもあります。部品加工業者ように比べて、購入品の納期・価格管理ができるシステムになっています。




3. 組立部品を選別する作業   デジタルピッキング

 組立ライン内、または倉庫、部品棚で、部品選別をする作業の自動化です。この辺りから少し現場よりの手法となります。
 製品ごとに組立に使用する部品の棚が光り、個数を明示します。人が組立手順書をみて、部品を選別する作業を短縮します。
 詳しくは下記アイオイシステムの事例のページで参照ください。動画もあります。



4. 見た目の判断を要する作業 (組立部品があっているかの検査)  

 組立部品があっているかの検査は、スマートグラスで可能となってきています。スマートグラスに作業指示を出し、製品を写すことで、部品があっているかを確認できます。さらに上記に出てきたようにピッキングの指示も行えます。ただこれらはまだ開発されたばかりの技術になり、より一般的に使用できるぐらい普及されるには少し時間がかかると思われます。
参考例、及び生産現場で使われているVRをまとめた過去の記事です。


5. 製品、機能検査  試運転・調整・修正作業  

 一品一様の組立製品では、製品検査作業自体の自動化は困難と思われます。最終的には人が動かしてみて検査する必要があります。ただし、検査記録を残す作業を自動化することは可能です。紙の検査書を電子化することで、記録・保存作業を短縮します。保存された検査書の検索もでき、さらには規定値を設けて、入力した数値が検査基準を満たしているかの確認を行うこともできます。
 下記は検査書に限らず帳票関係を電子化するソフトです。既存の生産管理システム等ともエクセルファイルで流用できるシステムになります。


6. 設計

 設計も人が行う作業で、一品一様ですと非常に時間がかかります。顧客要望に合わせてシュミレーションソフトでその設計が成り立つかどうか等をよく検証しなければなりません。それらの時間はなかなか短縮が難しいですが、下記記事で紹介した本にもあるように、製造現場と設計でのデータのやりとりを統一することで、部門間のやりとりの時間は短縮されます。


 

 今回は組立業者の人の経験やカンの自動化に関して考えてみました。組立行は製品、作業自体も非常に幅広く、単純に自動化と言っても困難なところもありますが、だからこそできるところから効率化し、考える作業や実物検証をする作業に時間を割いていくことで、他社と差別化できるのではないかと考えました。

 本日も最後まで読んで頂きありがとうございます。

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