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運転中に眠たくなったら

北海道八雲町で、バスとトラックの悲惨な事故が発生した。
亡くなられた方のご冥福をお祈りする。
また負傷された方の1日も早い回復もお祈りする。

今回の事故の原因はまだ明らかになってはいないが、道路は見通しがよく、現場は緩いカーブになっている。
少々スピードを出していたとしても、プロのドライバーがハンドル操作を誤るような道路には見えない。
もちろん、トラックの場合には積み荷の状況によってはバランスを崩すことも考えられるが、写真を見るかぎり、トラックは横転していない。

そこで、いちばん考えられるのは、居眠りだ。
トラックを管理する会社の報告では、直近の勤務で過重労働に当たるような勤務状態は見られなかったとのこと。
しかし、これは居眠り運転を否定する材料にはならない。

人は、何時間寝ようが眠たくなる。
また、眠たいと思ったら、その眠気には人間は勝てない。
これは、僕が長年タクシー会社の管理職として勤務して得た結論だ。

僕が勤務していた会社では、毎朝、1人ずつ前日の睡眠時間の確認をしていた。
少なくとも7時間以上の睡眠時間は確保するように指導しており、もし6時間を切ればその日の出庫は認めない。
もちろん、これは本人の申告しかないので、信用するしかない。
あとは、顔色などでの判断になる。
これからは、たとえばApple Watchなどを全員に配布して、データとして管理することも可能にはなるだろう。

そして、そんな指導をしていても、居眠り運転は起こる。
居眠り運転は、実際には、何分間も眠ったままハンドルを握っているケースはまずない。
ほとんどは、ほんの一瞬、カクンと首が折れたその瞬間だ。
事故につながるのも、その一瞬だ。
だから、もし運転していて、カクンときたら、もう危ないと思った方がいい。
人は何時間寝ても、眠たくなる。
これは、ドライバーに限らず、誰でも日常経験することだ。

またこんなケースも何度かあった。
本人は、自分の眠気を自覚している。
そろそろ休憩しないと危ないとわかっている。
そこで、少し先のコンビの駐車場に止めようと思い、そちらに車を向ける。
その少し手前の赤信号。
そこで、前の車に追突してしまう。
居眠り運転だ。
自分はもう危ない、あそこで休憩しよう。
ところが、そのあそこまでが持たない。
これが、眠気の恐ろしさだ。

僕も最初は、精神論で指導していた。
とにかく近くの休憩場所までは、頑張って運転しろと。
しっかり目を開けろと。
また、いろんな眠気防止グッズも試してみた。
眠たくなったら会社に電話して来い(もちろんハンズフリーで)、眠気が消えるまで話し相手になってあげる。
そんなこともした。
ところが、眠気はそんな人間の力などいとも簡単に乗り越えてやってくる。
そこで僕は指導の仕方を変えた。

眠たくなったら、駐停車禁止でない限りは、その場で車を止めろ。
極論を言えば、後ろの車に怒られてもいい。
事故をするよりは、何十倍、何百倍もマシだ。
それに、怒られたら目も覚めるやろ。

まあ、極論からあとは内輪での話になるが、でもそうでないと居眠りによる事故は防げない。
それが僕の考えだ。

体調管理も大切だが、人間の体はそんなに簡単なものではない。
眠たくなる前に休憩すればと思われるかもしれないが、早めの休憩をしても、その直後に眠気に襲われることもある。
眠たくなったら、どこかで休憩は間違い。
眠たくなったら、その場で止める。
これはプロドライバーでなくとも、運転される方は覚えておいてほしい。
必要なのは、運転を続ける精神力ではなく、止める勇気だ。

もちろん、今回の事故の原因が居眠りであるかどうかは、これから明らかにされるだろう。

※トップ画像は、今日の読売新聞朝刊から。

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