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<商標昔話>ライオンの歯みがき粉の商標

東京商工会議所の機関紙「東商新聞」の[老舗の神髄]という連載企画記事に、歯みがき、石けん・洗剤等の衛生製品分野で著名なライオン株式会社が取り上げられていました。

その記事の冒頭に以下のような一文がありました。

”1896(明治29)年、ライオンの創業者・小林富次郎は、『獅子印ライオン歯磨』を発売。歯みがき粉としては後発だったが、商品を売るだけでなく、「歯をみがく」生活習慣と衛生思想を一般に広めていった。”

記事の下方には、『獅子印ライオン歯磨』のパッケージ写真も掲載されています。

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永続的に事業を営んでいる企業は、創業間もないころから商標を上手に活用した事業展開をしているものです。

ライオン株式会社(当時は、小林富次郎商店)は、上記のパッケージで、「LION」の文字やライオンの図柄を、自社の「歯みがき粉」を示す目印(=商標)として前面に押し出して売り出していたのです。

カッコいいパッケージです。ディズニーランドのウエスタンランドに置いても違和感なさそうです。

そして、商標を上手に活用して事業展開する会社は、商標を権利化すること(商標登録)も忘れません。

それは、商標を権利として自社の財産として保有・管理することで、類似パッケージが出回るのを防止でき、お客様に「LION」の文字やライオンの図柄を用いたパッケージさえ覚えてもらえば、間違いなく、自社の製品を容易に見つけて買ってもらえるからです。

小林富次郎商店が歯みがき粉の販売を始めた明治29年から数年の間に、小林富次郎は、歯みがき粉に関して、次の商標を権利化しています。

ライオン一覧

上記のうち、7番が、パッケージ全体をそのまま商標権として権利化した態様といえますが、そのほかにも、「LION+ライオンの絵柄」や「リング状の図形」、「花柄(上下逆さ??)」など、『獅子印ライオン歯磨』として認識されそうな要素を分解して権利化していました

この権利化手法は今日の商標実務でも参考になる方法です。

なお、現在では、ライオン株式会社は、『獅子印ライオン歯磨』の発売から10年が経過した明治42(1909)年11月30日に出願された登録第39127号について権利を保有しています(下図)。

第39127号

歴史ある会社の商標を調べると、その会社の当時の商品や、ブランド保護に対する考えを見てとることができます。

今回取り上げたライオン株式会社は、歯みがき粉の販売当時から、製品パッケージに使われている『獅子印ライオン歯磨』として認識される要素を、全体だけでなく、要素ごとにくまなく保護して、「LION」ブランドを守り、育てていく考えが実践されていたことが分かります。

このような地道な保護の施策ができたからこそ、今日のライオン株式会社の発展にまで繋がったのだと思います。

※今回取り上げた[老舗の神髄]全文をご覧になりたい方は、東京商工会議所のウェブサイトで閲覧することができます。こちらのリンクをご覧ください(4ページ目です)。


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