J-PlatPatの文献蓄積情報(商標)の「最新日付」の罠
2020年11月13日(金)~16日(月)にかけて、INPIT(工業所有権情報・研修館)が運営するJ-PlatPatのメンテナンスがあり、そのメンテナンス期間に「調査の仕事が進まない~(涙)」となりました。
日々の検索では、別の商用データベースも使っていますが、気軽に利用できるJ-PlatPatは普段の業務でも必須のツールですね。
さて、そんなJ-PlatPatですが、データの蓄積範囲を確認する際に注意しなければいけない点があります。
先日、知人の商標弁理士と話しをしていて、この注意点についてあまり知られていないことに気付いたので、周知の意味も含めて投稿したいと思います。
データの蓄積範囲の意味
商標の調査報告書では、通常、調査でカバーしている出願や権利の時期的な範囲(J-PlatPatの蓄積範囲)を明示し、その範囲以外は調査報告の対象外であることを伝えます。
これは、商標出願されるとすべての出願がJ-PlatPatで公開されるものの、J-PlatPatに掲載されるまでにタイムラグがあるため、J-PlatPatでの検索を実施した時点ですべての先行する商標を網羅できるわけではないためです。
商標権は先願主義により、先に出願した人が権利を取れる制度になっていることから、調査でカバーできなかった出願を理由に、こちらの出願が拒絶される可能性が無きにしも非ずということです。
蓄積範囲の確認方法
この蓄積範囲は、「商標検索」の場合は、ページ最下部の「+関連情報」をクリックしたら出てくる、「文献蓄積情報」から確認できます。
文献蓄積情報の表示例です↓
「商標検索」の対象範囲
J-PlatPatによる商標調査では、一般的に「商標検索」を用いて、商標の称呼や図形コードを使って検索を行います。
その蓄積範囲は、「文献蓄積情報」の下段部分「出願・登録情報」で確認することができます。
例えば、この投稿を執筆している2020年11月24日時点では、出願日については「2020/11/4(2020-136286)」になっています(↓)。
つまり2020年11月4日の出願まで、調査対象に含まれているんだ、ということになりそうです。
が、しかし、そこには罠があるのです。
どういうことかというと、この最新日付の出願日を検索すると、ヒットするのはたったの2件!
年間19万件の出願があるのに、1日2件なんてことはありません!
どういうことかというと、ここでヒットした2件はいずれも分割出願なのです。
あくまでも推測ですが、分割出願の元となった親出願のデータがすでにJ-PlatPatに蓄積されているから、分割出願も早期にJ-PlatPatに蓄積できたってことなのでしょう。
通常の出願の蓄積範囲は?
そこで、出願日を一日ずつ遡っていくと、2020年10月22日(木)までは、一日あたり0~数件程度でした。
しかし、2020年10月21日(水)では、405件と一気に増えました。
内容を確認するとビンゴ!
2020年10月21日の検索でようやく通常の商標出願がヒットしました。
そうすると、通常の出願についての蓄積範囲は、2020年11月4日ではなく、2020年10月21日です。
分割出願の件数が一日当たり数件程度であることを考慮すれば、J-PlatPatの商標検索でカバーされる出願は、1ヶ月程度のタイムラグはあるものだと理解したほうがよさそうです。
INPITとしては、文献蓄積範囲の最新日付をなるべく新しく見せたいのかもしれませんが、ちょっと誤解を与えるんじゃないかなぁと思う次第です。
「文献蓄積情報」の最下部には「※蓄積データ最新日付内であっても、一部未蓄積のものがあります。」と記載されているので間違ってはいませんが、「※蓄積データ最新日付のデータは、大部分が未蓄積です。」としたほうが正確かと。。。
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