小説こころ③ 倉庫にて

小説こころ③ 倉庫にて
 
 僕はめまいがある。普通の人より悪いのか軽いのかわからないが、自分的にはけっこうきつい。ふらふらして仕事にならなくて困るときがある。感情もどうしても自分に向いてしまいがちだ。体調が芳しくないと意識が自分に向きやすいのだろうか。内にこもりやすいのだろうか。くよくよしすぎてひねくれてしまった。イライラもしやすい気がする。
 何の因果かわからないが、ハンディキャップだらけのような僕の人生。神はいったい僕をどうしたいのだろう。わからない。
 「ええやん」というと人生の9割は解決するらしい。
 「ふらふらして仕事にならん」
 「ええやん、適当にやってればええやん」
 「何年たっても出世しなくて辛い」
 「ええやん、その方が気楽でええやん」
 「自分に意識が向きすぎて、イライラくよくよしてばっかりで辛い」
 「ええやん、そうゆう修行を生まれてくる前に選択したんやん。人生は結局はずっと修行やん」
 ふう、少しは気が楽になったかもしれない。
 
 
 リカとマドカの練習倉庫におじゃまして彼女たちの演奏を聴く、ガールズバンドっぽくてなかなかいい。リカはベースを指弾きしている。
「けっこういいじゃん。さすがだね。スーパーの仕事ぶりからしてテキパキとしてるもんね。いいカンジです」
「ありがとう。でもドラムとギターが辞めてしまってね・・・」
「曲はオリジナルなの?」
「いや、これはカバー。オリジナルもやりたいんだけどね。曲作れる人がいないからね」
「そうか、そしたら俺がプロデュースしちゃおうか?ドラム音源作ったり、よければ曲も作るよ。リードギターはドラムに重ねて録音してもいいし」
「でも下手なんでしょ?」
「まあ、そうなんだけどね。試しにどうかな。新しいメンバーが見つかるまで。ベースとギターのパートのアレンジは任せるよ」
 リカとマドカは笑いながら渋々承諾した。
「実力が全然わからないから、怖いけどね(笑)」
「くれぐれも期待しないでくれたまえ」

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