小説こころ⑥ 来訪

 小説こころ⑥ 来訪
 
 信じる者は救われる。という言葉がある。これはあながち間違いではないようだ。私は腐りきっており、出世からも見離された会社の中でも、結婚をしておらず没交流な社会の中でも浮遊している感じがすごくある。一体私という存在は何なのだろうと透明にすけすけに存在がすけていきそうになる今日この頃である。しかしだ。そんなときに今後運命の人や推しに出会い結婚すると信じたらどうなるだろうか。そんなことは現実にはありえないとしても、信じるだけで不思議な力が湧いてはこないだろうか。きっと行動のパフォーマンスも変わってくる。腐りきっている心に、少し張りができないだろうか。きっと少しだけ前向きに生きられる。信じる者は救われる、あながち間違いではない。
 恋だけじゃなく、夢とか仕事とかもそうだろう。夢は必ず叶うと信じれば、行動が変わる。今やることが違ってくる。何もせずにボケーっと過ごすだけの休日が、少しだけ有意義なものになるだろう。インプットやアウトプットなどの何かしらをするだろう。こうしてはおれない。私は私のやるべきことをやらなければ・・・と。
 信じるだけで、こんなに世界は変わるのである。
 そうして私という花を咲かせよう。生まれてきた役目というのが何かあるはずだ。思っていたのとは違っていたとしても。
 
 
 
 ピンポーン。僕の部屋の呼び鈴が鳴った。はい、と出るとそこにはマドカがいた。マドカは超まぶでちょっとびっくりするぐらいかわいい。
「どう?作業は進んでいる?」と大きな瞳で話しかける。
「やあ、よく来たね。まあ上がってくれたまえ。散らかっているが気にしないでくれ」
「うん、突然来たんだし、気にしないよー」
実際部屋はゴミやらほこりやら物やらで散らかっていた。空気の入れ替えに窓を開けて、とりあえず椅子に座らせ、コーヒー入れるねと言った。
「インスタントだけど、ミルクと砂糖は?」
「あ、お願いします」
マグカップにコーヒーを入れて、
「ミルクの変わりに牛乳だけどね。はい、砂糖はオリゴ糖を入れて」
とカップとオリゴ糖をテーブルに置いた。
 
「さてとそれで何の話だっけ?」
「作業はどんな感じかなと思って」
「うん、アンドロイドスマホのアプリでドラムマシンとかシーケンサーないかなと探してみたんだけど、なかなか上手く見つけられなくて、苦肉の策でウォークバンドのドラムマシンの1小節のリピートで8ビート16ビート、3連と三種類作ったから、練習には使えると思う。シーケンサーは見つけられなかった。シーケンサーあれば伴奏が楽だと思うんだけどね、アレンジ勝手に作ってくれて。
 だけど、結局ねスマホじゃなくてパソコンにして、いつも使ってるキューベースのソフト使ったらドラムもちゃんと打ち込みできるし、コードトラックっていうの使えば、伴奏とまでいかなくてもマドカとリカが音乗せるのに調度いいオケは作れるところまで調べは進めたよ。
 たぶんループ素材っていうのを使えばシーケンサーっぽく使えるとも思うんだけども・・・」
「いろいろ調べてくれてたんだね、ありがとう」
「ところでどんな音楽の方向性なの?好きなアーティストは?」
「私もリカも赤い公園とか緑黄色社会とか好きだね」
「へーリョクシャカかあ。ボーカルがこの前コラボしたよね。東京スカパラダイスオーケストラfeat.長屋晴子の「青い春のエチュード」聞いた?」
「聞いた。マジやばかった。歌上手すぎだよね。
ちなみにうちのバンドでは赤い公園の「オレンジ」と緑黄色社会の「sabotage」がセットリストに入っていたよ」
「なるほどバンドっぽい感じの路線なんだね。それならシーケンサーなくてもなんとかなるかなと。YOASOBIとかヨルシカの路線だったらシーケンサーばんばん必要だろうけどね」
昼飯時になったので僕はパスタを茹でた。ソースは市販のツナマヨやたらこ、明太子などがある。マドカは明太子を選んだ。僕はツナマヨを食べた。
「いや~急に来て、いろいろごちそうになってわるかったね。ごちそうさま。リカにはちゃんとやってたわって報告しとくね」
「やっぱりちゃんとやってるか偵察しに来たんだね」
「まあね」
 

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