小説こころ⑦ 来訪セカンド

 小説こころ⑦ 来訪セカンド
 
 破滅は止まらないようだ。
 私の人生は終わったようなものなのだろう。ただでさえ人の3割ぐらいの力しかなくて、何とかついていこうとしていたが、それが耳を痛めてからさらにその3割に、つまり普通の人の一割程度の能力になってしまった。さすがにこれで無理やりついていくのは厳しい。
 それがどうした。ええやんで9割のことは解決するらしい。ええやん、そんな人ごまんとおるとよ。メニエール病とかもっと大変な人もいる。普通の人とは違うかもしれないが、俺みたいな状態におちいった人もごまんといるだろう。
 それで人生が上手くいかなかったとしてもそれはそれ。人間万事塞翁が馬。そこで逆に開ける道もある。新しい視点もありうるのだろう。
 絶望を感じながらも、私がこんなに元気に前を向いていられるのも、最近推し活にはまってるおかげだろう。普段とは違くて、元気が私を腹の底から支えている。夢中になれる推し活がこんなに元気をくれるものだとは・・・。
 
 
 
 ピンポーン。
 玄関のドアを開けるとリカがいた。リカは長身の美人だ。
「やあ、今日はリカが見張りに来たんだね」
「うん。作業は進んでる?」
僕はリカをこの前より少し片付いた部屋に上げ、コーヒーを入れた。
「とりあえず、赤い公園の「オレンジ」と緑黄色社会の「sabotage」のドラムとコードトラックのオケは作っといたよ。あとはオリジナル曲を作ることだね。ところでバンド名ってなんて言うの?まだ聞いてなかったよね」
「ぺガすず」
「ぺガすず?」
「うん、バンド辞めたドラムの子がつけた名前なんだ。ペガサスを少しなまった感じにして、なおかつみんな広瀬すずと山之内すずが好きだったから、すずってつけて」
「へえ、なかなかしゃれた名前じゃん」
「辞めたドラムがつけてくれた名前だからね。大切にはしたいんだ」
「ビーズの「いつかまたここで」みたいだね。♪愛すべきは仲間 たとえ去って行っても 忘れない♪って」
 その後僕らはパスタとコーンポタージュの昼食をとり、解散した。
「これから仕事なんだ。ちゃんとやってったってマドカに報告しとくね。また偵察に来るかもね」
「おいおい、どんだけ君たちは俺を信用してないんだよ」
「まあね」

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