「もはや●●後ではない」と「30年サイクル」
2024年2月22日、日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新しました。翌朝の日経新聞の1面では、『もはや「バブル後」ではない』をタイトルに、「日本人の行動が変わる契機」とこの局面を表現した記事が掲載されました。
このタイトルは、もちろん1956年の経済白書のメッセージの「もはや戦後ではない」を意識させようとしているでしょう。1956年の少し前から始まった日本の急速な経済成長は、バブルがはじけるまで続きます。1989年末の前回の日経平均株価最高値まで33年。大きな好景気の波でした。
34年と33年。人々の意識が変わるには一世代かかる。上述の記事にもそんなことが書かれていて、30年くらいの景気の長期サイクルを感じました。
では1956年の33年前はどんな出来事があったでしょうか。その年、1923(大正12)年は、関東大震災が起こっていました。1923年から1956年の33年は、大震災、世界恐慌、昭和恐慌、第二次世界大戦、敗戦そして占領、と下降トレンド。なるほど。やはり上昇と下降を繰り返していますね。
その前の1890(明治23)年から1923年は、上昇傾向。1890年は、工業化が実を結び、紡績では生産量が輸入量を上回るようになったタイミングです。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦と軍事でも勝利を収め、それに伴う需要が経済を潤したた時代です。(その戦争の後不況になるというわけですが。)
上昇30年と下降30年で計60年。この景気の長期循環が正しいのなら、ここからの経済成長は30年ほど続く可能性があります。独立系資産運用会社のコモンズ投信の社長の伊井哲朗さんが先日、そうおっしゃっていました。会長で渋沢栄一の玄孫の渋澤健さんも同じことをよく話すそうです。
経済学では長期循環(40~60年程度)サイクルをコンドラチェフの波といい、その要因はイノベーション(技術革新)だとされています。
私は経済学については素人なので感想に過ぎないのですが、イノベーションだけでなく、世代交代も後押ししていると思いました。イノベーティブな新しい発想が生まれるには、過去の成功体験からの脱却が必要で、世代は重要な要素と思います。また、イノベーションを受け入れる人々の意識変革にも、30年くらい時間がかかりそうです。
敗戦の苦い記憶を忘れ好景気に沸いたバブルの頂点まで33年。頂点から転げ落ちた苦い記憶を持つ世代が主役から徐々に脇役になるまでに34年。
「失われた30年」は私を含むバブルを知る世代が「失わせた」30年だったと思います。失ったものの代表は、経済ではなく、「挑戦」の精神や「人」への投資だったのではないでしょうか。
ようやく人的資本投資や、スタートアップ支援の施策が整ってきました。
次の30年、バブルを知らない世代が挑むイノベーションを、受け入れ、応援したいと思う日でした。
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IR(インベスター・リレーションズ)の経験などに基づいたテーマで記事を書いています。幅広い層のビジネスパーソンにも読んでもらえたら嬉しく思います!