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意識低い系経営のススメ 会社の「型」を作ってみる ~意識低い系経営者ができるまで~その5

本記事は基本、毎週水曜日に更新の予定で進めております。
どうぞよろしくお願いします。

仕事をセンスで片づけたらダメ

「型」を作る話の続きを綴っていきたいと思います。

「センスってなんなんすか????!!!!!」

と社員から叱られた私は、その答えを見つけるべく
模索し、とあるブランディングマーケティングのセミナーでの学びで「型」を作るというヒントを見出しました。
そこで、その講師の方に直接お会いして、
自社の「型」を作りたいとお願いをしたところご了承いただけたことから、
その型作りを始めたわけです。

発想の「型」を作ってみる

結論から言うと
いわゆる自社用の「クリエイティブブリーフ」を作成しました。
企画書やその企画のキャッチコピーを作るプロセスにおいて
考えるべき観点や情報の整理を、質問形式で問いかけ続けるフレームワークを作成したのです。
著作権や企業秘密の部分もあるので、
ごく一部のみ少し変えて書き出しますが、
例えばこんな感じです。

「お客様はその商品を使う時にどんな思いになりますか?」
「まずお客様はその悩みを解消するのにまず何からしますか?」
「お客様が思わず人に話したくなるようなエピソードはありますか?」

と言った具合の質問を55個用意し、それに答えていく、或いは考える、情報を集める、誰かに相談する、誰かと話し合って埋めて行き、企画を考えて行くという使い方です。

他にもポジショニングやデモグラデータの洗い出しなど、いくつかのアプローチを盛り込んでいますが、
これによってセンスの裏側にある思考のプロセスを言語化、手順化したのです。

この使い方にはもうひとつあって、
センスのある人がある日「天から降りてきたアイデア」を、
後付けで論理的に説明できるように分解するという使い方もできます。
「センス」の人が論理的に説明しづらい段階を、後から質問にそって答えることで、
説明(=プレゼン)しやすくするためのツールにもなります。

型を作るのは大変そう?

会社の「型」を作るなんで大変でしたでしょう?と
聞かれることは多かったです。
実際はどうだったと思いますか?

実はクリエイティブブリーフを作るのにかかった時間は、
すみません。あんまり覚えてません。
何しろ10年以上前の話なので。。。

確かですが、数か月間、時間を作って話し合って、宿題を出し合って、
また話し合ってというのを数回繰り返したと思います。
その中で、それぞれの観点の違いに気づきがあり、
ネタの共有や深掘りもできました。

2人の社員を仲間に引きずりこみ、アイデアをどうやって形にしているかを話し合ったり、
お互いに過去の成功例や失敗例を共有したり、
時に居酒屋で一杯やりながら話し合ったりもしました。

だから、苦労した、きつかった、苦しかった、
というネガティブな思い出はありません。
むしろ楽しかった記憶しかないです。

うんうん唸りながらという時間もありましたが、
それもまた楽しかったのです。

そして最後に講師の方と内容を煮詰めて
「型」に落とし込んでもらったという流れでした。
この「型」が今後どんな使われ方をするだろうか?
これをきっかけにアイデアの質や、仕事、会議の進め方が変わるかも、
という期待が高まっていきました。
そう、「型」作りは大変どころか、むしろ楽しく面白く進んでいったのでした。

新しいことはひとりでやらない

上にも少し記載しましたが、自社用のオリジナル版を作るにあたって、
社内でプロジェクトチーム(PT)を結成して時間をかけて作り上げました。
実績をあげている社員2名を選抜して、私も含めた3人と講師の方の4名のPTです。

私は何か始める時には、だいたいこのようなPTを作ります。
なぜかと言うと、その方がラクだからです。
何がラクかと言うと、
実際に社内で運用を初めて浸透させていく過程で彼らが協力者になってくれるからです。
説明や使い方、使ったうえでの質問や疑問がPTのメンバーに分散するので、
私への負荷も減ります。
彼らも自分たちが作ったという自負があるので、
できれば使ってほしい、役立ってほしいという思いから、積極的に協力してくれますし、
逆にブラッシュアップのアイデアも出してくれます。
私としては、孤軍奮闘ではなく仲間がいてくれるので非常に心強い。

この手法が先に書いた評価制度構築でも使った手法なのですが、
とかく「孤独だ」という認識に陥りやすいトップの心の平安を保ち勇気を与えてくれ、
さらに作業量や範囲を分担できるので、面倒なことが減るのです。
チーム故の手間になるところもありますが、
相対的に考えれば、私にとっては圧倒的に面倒が減る進め方でした。

このオリジナルのクリエイティブブリーフは
今でも社内で使われています。
日常的に当たり前にではないですが、
何か迷ったら使ってみるとか、部分的に活用するといった柔軟な使い方で残っています。
この辺もむやみにルール化せずに、道具として引き出しに仕舞っておいて、
必要な人が必要な時に必要な使い方で使うという、ある種大雑把さを取り入れたのが
良かったと思います。
使い方が面倒なものって、結局誰も使いませんし、私も教えるが面倒になるので、やはり使わなくなってしまう。
この意識の低さが功を奏した気がします。

もったいない?いや手っ取り早い

あと、この道具の使い方の利点をもうひとつ言うと、
思考のプロセスが記録に残るということです。
過去のものをデータで保管することで、
あのヒット企画の思考のプロセスが後から確認したり、参考に出来たりするのです。
自分で見返すもよし、誰かに見せてもらって学ぶもよしです。

企画会議に出る前段階の思考プロセスなので、議事録には残りませんが、
こうした道具を使うことで後の学習教材にもなり得ます。

ちなみにこうした二次的利用法を考えるのはお得です。
いわゆる一石二鳥なので。
この発想は、通販の広告でもよく使っていました。
広告制作には制作費がかかるので、一度使って終わらすともったいないのです。
その宣材を他の広告とかで再利用できれば有効活用になります。
「もったいない」精神と言えば、エコ的ですが宣材にエコはあまり関係ない。
本質はあるもので済ませば早いという「手っ取り早い」精神です。

「どうしたら企画が当たりますか?」という漠然とした、だけど差し迫った質問に対して、
クリエイティブブリーフをやってみたら?
誰かに過去の見せてもらったら?
と回答すれば、
少なくとも「センスってなんですか????!!!!」
って社員に叱られることはなくなったので、
それだけでも私にとって大いなる成果となりました。

ラクしたっていいじゃない!

この取り組みをかっこよく語ることで、
経営者の先進的なマネジメントと綴ることも可能です。
「物はいいよう」を売りにしている私にとってはむしろ得意分野かもしれません。
しかし、違うのです。
この取り組みを進めることができた本当のエネルギーは

「もめごとを減らして自分の精神的なストレスを減らしたい。何よりも自分が少しでもラクしたい。」

でした。
経営者としての志が低いか、という自問があったことも否定しませんが、
今改めて思うことは、

「ラクしたっていいじゃない!」

です。
だってその方が、やる気になるのですから。

そして、いよいよ課題の本丸
「会社が何を目指しているのか分からない」
「この会社は何が正しくて、何が間違っているのか分からない」
といった社員からの質問に答えていくことになります。

その6につづく


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