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雑貨デザイナーとして生きていきたい私の #雑貨のはなし

初めまして。雑貨デザイナーのMiaと申します。企業の雑貨デザイナーを経験し、現在はフリーランスで活動しています。

今回は、雑貨デザイナーとしての生き方にこだわる私が雑貨にまつわるお話を書いていきます。

かわいい雑貨で世界が変わる

学生の頃は特に、洋服やネイルなど全身のおしゃれに存分にお金をかけることはできませんでした。

それでも毎日使うポーチ、パスケース、ステーショナリーなどはいつもお気に入りのとびっきりかわいいものを選んで使っていました。
かわいいものに囲まれると気分が上がるからです。
"ミアちゃんはバッグの中身がかわいいね"とよく人から褒められていました。

私は特段ファッションがおしゃれな方ではありませんでしたが、そんな人にも雑貨・小物は抵抗なく取り入れられるのです。

かわいいアイテム一個を持っているだけで、女性は上向きな気分になれたり毎日がもっと楽しく変わったりする…
雑貨の持つそんな魅力に惹かれ、いつしか雑貨のデザイナーになりたいと考えるようになりました。

雑貨デザイナーになるには

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新卒で雑貨デザイナーになるには、主にメーカーの企画デザイナーの試験を受ける必要があります。
試験では作品審査が特に重視されます。

作品審査とは、自分が今まで作ってきたデザイン画やイラスト、作品たちを企業に提出して見てもらうという試験です。

重要なのは、単に絵の上手い下手ではありません。その企業がどんなデザイナーを求めているか考えること。「私はまさにあなたが求めている人材ですよ」とわかるように描くことです。

本命の企業に向けてそこで使ってもらえるようなタッチで描いた作品を提出したり、企業があらかじめ課題を出してきたりもしました。(オリジナルのキャラクターを好きなだけ描くという課題などがありました)

エントリーシートを書いたり、説明会に行ったりと忙しい就活の時期に作品も用意するのは大変でしたが、私は喋るよりも絵で自分を表現することの方が得意だったので「こっちのほうが楽だな」なんて感じていました。

普通ではあり得ないことですが、こだわりが強い私はどうしても行きたい3社だけを受け、そのうちの一つ「SWIMMER」に内定をもらいました。

私の青春SWIMMER

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多くの方がご存知の通り、SWIMMERは2017年にブランド終了をしてしまい、社員は会社を去りました。
(その後ブランド復活の動きがあるとニュースで知りましたが詳しいことはわかりません。)

私が働いたのは2年にも満たない短い期間でした。

1年目は会社の決まりでデザイナーの仕事ではなく店舗研修=ショップ店員として働きました。


どんな客層が何を買うのか、何色が一番売れるのか、どんな素材のどんなデザインが受け入れられるのか…私は分析が大好きだったので、毎日見たことがどんどん頭の中にデータとして蓄積されていきました。

毎日夢のようにかわいい雑貨に囲まれて、次々と新作が入荷するたびに感性が刺激されっぱなしでした。「何でデザイナーで入社したのに接客しなきゃならないの?」と当時は不満に思っていたけれど、この1年間の経験は今でも役に立っています。

2年目からはやっと商品企画の仕事をやらせてもらえるようになりました。

デザイナーの仕事内容は、市場の商品の調査(マーケティングリサーチ)、企画書の作成、それが通ったら工場に提出する指示書(色、形、サイズ、素材などを細かに指示した設計図のようなもの)の作成、
そして工場から試作品が届いたら問題がないかチェックすること、などです。

SWIMMERでは自由な発想で企画を提案し、社長が気に入ったら採用、商品化という流れでした。
正直ここまで自由な進行が許される会社は他にないと思います。

いい意味でも悪い意味でもワンマン、だからこそ他にないぶっ飛んでかわいい雑貨が作れるのです。
しかし経営面ではこだわりが強すぎるあまり効率性に欠けているように感じていました。社長のgoがなければ企画が何一つ進まないので数日間待ちぼうけすることもあったし、お店では発注システムや棚卸しが手書きと古いパソコンの上マニュアルが全く整備されておらず、働いている人の負担が大きかったです。
びっくりするくらい安くてかわいい雑貨の裏で、頑張っても頑張っても薄利多売…人が幸福でないビジネスは、私はあってはならないと思うのです

本来生存できないようなアンバランスさの生き物がむくむくと大きくなり、ある日パッと弾けて死んでしまった。そんな風でした。

あの時、「安くてかわいい」を売りにするファンシー雑貨の いち時代が終わったのだな…と思ったのでした。

それでも多くの人々にあんなに痛烈に刻まれる"カワイイ記憶"って他にありません。

私は製作者としても消費者としてもブランドを本当に心から愛していたので、早くものを言える立場になって会社を何とかしたいとずっと思っていました。新人のくせに生意気だなと自分でも思いますが、それくらい本気でこの会社でやりたいことがたくさんあったのです。突然のブランド終了で世に出ることなく終わってしまった企画もたくさんあり、悔しい思いをしました。

デザイナーに向いている人とは

よく「好きなことを仕事にできていいね」と言われますが、私はデザインを仕事と捉えており、自分の好きの感情とは距離を置いて考えています

企業デザイナーの仕事は、上から指示された事をかたちにすること。売れるもの(会社に利益をもたらすもの)を作ること。顧客が求めているものをデザインすること。
(デザイナーの形態によって違いはありますが…)

だから私は自分の「好き」を押し通さず謙虚に表現することが、デザイナーの美学だと考えています。

時々、自分の好きなふうに描いて、自分のこだわりを実現したい、という思いが強いデザイナーがいます。
私はそういう方はデザイナーというよりアーティスト向きだと思います。

多数の人が関わっている組織の中で、多額の資金をかけてもらい自分のデザインが商品化するのだから「自分の思ったものを作りたい」「売れるかどうかわからない」が通る世界ではありません。

もちろん、消極的になりすぎず自分からの提案というのも必要ですが、この仕事をしていると上からの指示、クライアントの意向、コストの兼ね合い、工場の技術…………色んな問題が降りかかってきます。

基本的に、最初に思った通りには進まないんです。その中でなんやかんやどうにかする、というのが仕事です。

感情が豊かでこだわりが強いアーティスト気質と違って、デザイナーは論理とセンスを持ち合わせたバランス感覚の良い人が向いています。

こんな風に書くとクリエイターの割に冷たいという印象を持たれてしまうかもしれませんが、私はこの仕事が本当に好きで情熱を持ってやっています。

消費されてもいい

雑貨のあり方として、流行に左右されず長く使えるものがいい。と言われたり、そもそもモノを持たないミニマリストというスタイルもあったりします。

私はずっと、次々新しいものに興味を持つ若い女性をターゲットにしたものを作ってきました。
だから自分の作ったものはかわいい!と興味を持たれては飽きられる、その繰り返しでも良いと思っています
モノ自体を消費してもブランドはずっと好きでいてほしいという考えです。

エコとかモノの持ち方についての良し悪しを言える立場ではありませんので、
これは単に自分の好き嫌いの問題です。

この仕事は、新しいものを作っても作っても、もうトレンドじゃないと言われ
半年先、一年先のことをずっとぐるぐる考えながらトレンドって何だ?顧客は何を求めているんだ?ってしがみついて、激しい逆流の中でかわいいものを作り続けていくのです。

かわいいものが好きな誰かの一瞬の記憶になりたい。

その逆流の中にいるとき、作るのがたとえ辛くても「生きてるなぁ」と実感するのです。

フリーランスという生き方

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その後転職した会社では、よりファッショナブルな雑貨のデザインに携わりました。
しかし、仕事・プライベート共に自分に限界がきたのか、うつ(双極性障害)と診断され会社を辞めてしまいました。(この事については今後記事に書くかもしれません)

自宅で寝たきりの状態での療養ののち、少しだけ元気が出た私はフリーランスでオリジナルの雑貨ブランドを立ち上げることにしました。
それはごく自然なことでした。

企業デザイナーであろうとフリーランスであろうと、雑貨を通してやりたいことに変わりはないからです。

ただ企業と違うのは、個人で作るとロットが稼げないということ。
企業が雑貨を大量生産するときは数100個、数1000個単位で中国などの工場で作ります。
そうするとかなり凝った作りをしても単価ではそんなに高くなく済むので、フルオーダーで色んな作りができてしまいます。
(例えば、オリジナル生地のポーチやバッグ、レースやリボンを縫い付けたり、ビジューを使用したり、金属のオリジナル型のアクセサリーやキーホルダーが作れたり。皆さんがお店で目にする雑貨たちのほとんどは大量生産です。)

ところが個人だと、1個から〜とかせいぜい100個の生産なので、そもそもの生産方法が全く違います。製作単価もとても高くつきますので、市場の価格のように安く販売できないのです。
元々ある白いバッグやTシャツにオリジナル印刷をする、なんてことしかできませんので本当にごく限られた条件でできるだけバリエーションを見せおしゃれに見せる工夫が必要です。

ただ、企業が挑戦できないようなマイナーなジャンルのグッズや、オリジナル性の高いものが、自分の責任で自由に作れるのでとても楽しいです。

雑貨をデザインするとき、私はどんな服を着た何歳の〇〇が好きな女性が買って…とか、このポーチにこんなものを入れて旅行に行って…とか
具体的なストーリーまで考えています。

デザインは商品の絵を書くことではない。商品のその先を考えることです。モノではなく、価値を作るという風に心掛けています。

主役は雑貨を手に取った人。デザイナーはシンデレラに魔法をかける魔法使いみたいなもので、ストーリーの一部に過ぎません。

でも「この魔法が好き」と選び続けてもらえるようなブランドであるために、これからもずっと、挑戦する人、作り続ける人でありたいと思います。

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