見出し画像

第71回全国高校駅伝 備忘録

2020年12月20日に京都で男女の高校駅伝が開催され、世羅高校(広島)が昨年の仙台育英高校(宮城)に続いて男女アベック優勝を飾りました。九州旅行の移動中に、NHKプラスのライブ中継をスマホでちらちら観ていました。47チームで競った男子第71回記念大会を振り返ります。

第1区10km(たけびしスタジアム京都~烏丸鞍馬口)

高校長距離界のトップランナーが顔を揃える花の1区。前半だらだら上りが続く難コース。7㎞過ぎからのペースアップによる競り合いが見所です。

今季はコロナ禍で競技会が限られる中、中学時代から注目されている石田洸介選手(東京農大二・群馬)が、5000mで13分34秒74と16年振りに日本人高校最高記録を更新しました。ランキング2位の伊藤大志選手(佐久長聖・長野)も13分36秒57と従来記録を上回っています。

精鋭揃いの中、その石田選手がスタートからひとり飛び出し、序盤をリードします。伊藤選手、昨年区間3位の鶴川選手(九州学院・熊本)、尾崎選手(浜松商・静岡)、若林選手(洛南・京都)、徳丸選手(鹿児島実・鹿児島)、森下選手(世羅・広島)、太田選手(大牟田・福岡)ら、5000m13分台のタイムを持つ選手達は後方の大集団でレースを進めます。高校2年生歴代最速タイムを持つ山口選手(学法石川・福島)が遅れ気味です。

有力選手で形勢する集団が先行する石田選手を5.5㎞で吸収。好調の尾崎選手が積極的で、7㎞手前からは若林選手、鶴川選手の3人で集団を抜け出し、3人の先頭争いとなります。残り300mの紫明通りで鶴川選手がスパートを決めて後続を振り切り、区間賞を獲得しました。昨年の佐藤選手(八千代松陰・千葉)がマークした28分48秒の日本人最高の更新はならなかったものの、ただひとり28分台で走破。自身二年連続の28分台をマークしました。

6秒差の2位に健闘の尾崎選手が続き、3位に若林選手、4位に徳丸選手、5位に伊藤選手と実力者が上位を占めました。3区に強力な留学生ランナーを持つチームでは、連覇を目指す仙台育英の吉居選手が21秒差の7位、世羅の森下選手が22秒差の9位とまずまず。倉敷は長塩選手が42秒差の16位とやや出遅れました。力のある石田選手は14位、山口選手は31位と不本意な結果になりました。

区間賞 28分56秒 鶴川正也(九州学院・熊本)

第2区3km(烏丸鞍馬口~丸太町河原町)

 2区は下り基調の短い3kmのスピード区間。

首位で襷を受けた九州学院の木實選手が快調なペースで飛ばし、首位をがっちりとキープしました。2位には村尾選手が3人抜きの区間賞の走りを見せた佐久長聖が8秒差で続き、3位は洛南、4位に仙台育英、5位には世羅が進出してきました。須磨学園(兵庫)が6位と健闘しています。

残念ながら、今年も佐藤清治選手が1998年にマークした7分55秒の区間記録更新はなりませんでした。

区間賞 8分1秒 村尾雄己(佐久長聖・長野)

第3区8.1075km(丸太町河原町~国際会館前) 

  
3区は、上り基調の8.1075km。力のある留学生ランナーの爆走が見られ、チームの順位変動が激しい区間です。

首位を走る九州学院・田島選手を、20秒差の5位で襷を受けた世羅のコスマス選手が最初の1㎞を2分30秒のハイペースで入って逆転すると、そのまま引き離して独走態勢を築いていきます。抜かれた田島選手に5000m13分台ランナーの佐久長聖・越選手と洛南・佐藤選手が追い付き、2位集団を形成します。佐藤選手が力強い走りで単独2位に上がります。

コスマス選手は従来記録を1秒更新する区間新記録を樹立。4区中継では2位の洛南に55秒差をつける圧巻の走りでした。3位は佐久長聖が粘り、4位がキプチルチル選手が7人抜きを見せた倉敷、5位は期待のムテチ選手が区間9位と今一つ伸びなかった仙台育英となりました。

後方では例年通りごぼう抜きが起こっており、大分東明・キサイサ選手が22人抜きで8位、小林・倉掛選手が14人抜きで12位、札幌山の手・パトリック選手が9人抜きで13位、青森山田・ムイガイ選手が23人抜きで16位とジャンプアップしてきました。

4区中継地点で、1時間00分06秒と高校最高記録を16秒上回っています。

区間賞 22分39秒 コスマス・ムワンギ(世羅・広島)=区間新

第4区8.0875km(国際会館前~丸太町寺町)

 3区を逆走する下り基調の4区8.0875㎞。スピード自慢の準エース級の選手が集います。

首位の世羅は、5000m13分台の記録を持つ主将の新谷選手。途中腹痛のアクシデントに見舞われ区間13位の走り。後続には詰め寄られたものの、首位はキープしました。1年生ながら5000m13分台の佐久長聖・吉岡選手が区間賞を獲得する走りで、世羅と33秒差の2位へ。3位は37秒差で洛南が粘り、4位は44秒差で倉敷、5位は52秒差で仙台育英と続きます。

区間賞 23分05秒 吉岡大翔(佐久長聖・長野)

第5区3km(丸太町寺町~烏丸紫明)

 2区を逆走する上り基調の短い3km。優勝候補を争うチームは、ここにも5000m14分台前半の持ちタイムを持つ好ランナーを起用してきます。

首位の世羅は1年生の石堂選手が区間5位で手堅く走りました。区間賞を獲得して2位に上がった洛南の内藤選手には29秒差まで詰め寄られたものの首位を守り切りました。3位は32秒差で佐久長聖、4位には小原選手が同タイムの区間賞で走った仙台育英が44秒差、5位には48秒差で倉敷と続きます。

区間賞 8分41秒 内藤一輝(洛南・京都)・小原快都(仙台育英・宮城)

第6区5km(烏丸紫明~西大路下立売)  

近年勝負を左右する重要区間になっている6区の5㎞。前半の約3㎞がだらだら上り、以降は一気に下るチェンジ・オブ・ペースの難しいコースです。

首位を走る世羅は、2年生の吉川選手が区間6位でまとめ、首位を死守。31秒差の2位には、堀選手が区間賞の力走で2人を抜いた仙台育英が浮上。3位は32秒差で洛南、4位は34秒差で佐久長聖。5位は倉敷が死守したものの、首位とは59秒差と開きました。

以降8位入賞争いは、6位九州学院、7位須磨学園、8位大牟田はそれぞれ単独走になっています。8位から15秒差で、9位小林、10位智弁カレッジ、11位大分東明が秒差で中継。8位入賞争いはまだまだ熾烈です。

区間賞 14分28秒 堀颯介(仙台育英・宮城) 

第7区5km(西大路下立売~たけびしスタジアム京都)

最終7区は下り基調の5km。優勝を争うチームは、トラック勝負を想定してラストの斬れ味があるスピードランナーを起用してきます。

逃げる世羅のアンカーは、5000mチーム最速タイムを持つ2年生の塩出選手、追う仙台育英のアンカーは、昨年2区で区間賞を獲得している3年生の白井選手。共に13分台の記録を持ち、実力は互角。連覇を目指す白井選手が前半から懸命に追い上げ、7区中間点で19秒差まで詰め寄ります。

実力者の塩出選手はそこから踏ん張り、高校最高記録に僅かに及ばなかったものの2時間1分31秒の好タイムでゴールテープを切りました。世羅は午前中の女子の部と合わせてアベック優勝。今年就任の新宅監督の初陣を見事に飾りました。

2位は13秒差まで追い上げた仙台育英、3位には地元京都の洛南が入り、2時間2分7秒と日本人高校生最高記録を更新しました。4位には、山田選手が区間タイ記録で走った倉敷、5位佐久長聖、6位九州学院、7位須磨学園、8位大牟田と、高校駅伝の伝統校が上位を占めました。

区間賞 13分58秒 山田修人(倉敷・岡山)

勝手に寸評

チームのレベルアップが着実に進んでいることが感じられる大会でした。

5000m14分台が高校生ランナーの一流の証と呼ばれていた時代は完全に昔の話となりました。2020年度ランキングでは13分台ランナーが22名(2020年12月8日現在 留学生除く)もいます。全国優勝を狙う強豪校ならば、チーム内に複数の13分台ランナーがいることも珍しくなく、優勝の世羅は、留学生以外に3人の13分台ランナーが走りました。花の1区で高校生トップを争うランナーは、13分30~40秒台の走力を持っています。

優勝となると、外国人留学生ランナーの存在が依然として大きいものの、入賞を果たした洛南、佐久長聖、九州学院、須磨学園、大牟田の5校は留学生のいないチームであり、3区で強力な留学生ランナーとも臆せず互角に渡り合える強い選手の育成も着実に進めているなと感じました。

サポートして頂けると大変励みになります。自分の綴る文章が少しでも読んでいただける方の日々の潤いになれば嬉しいです。