見出し画像

私の好きだった曲㉔:サム・ガイズ

本日の私の好きだった曲シリーズ(第24弾)は、ロッド・スチュワート『サム・ガイズ Some Guys Have All the Luck』(1984)です。当時は、ロッド・スチュワートのコミカルなPVと共に楽しく聴いていたこの曲について、今にして気付いた点、思う所を書き記しておきます。


ロッド・スチュワートの真骨頂

この曲は、ロッド・スチュワート(Rod Stewart 1945/1/10-)のアルバム『カムフラージュ Camouflage』からの2枚目のシングルカットとして、1984年7月に発売され、スマッシュヒット(Billboard Top 100で最高位10位)を記録しました。軽快なメロディに乗せて、ややダサめに踊るお茶目なロッド(当時39歳!)のPVが魅力的で、私の当時のお気に入りの一曲でした。

伝説的なキャリアを持ち、偉大なロック・ボーカリストのリストに確実に名を刻む存在であるカリスマ・シンガーにも関わらず、私にとっては妙に親しみ易さを感じるアーティストでした。どんなジャンルの楽曲にも果敢に手を出し、ロッド流に歌いこなしてしまう雑食性が素晴らしいと思います。この曲は、そんなロッド・スチュワートの真骨頂が発揮された作品だと思っています。今も現役で活躍し続けている彼のステージを、一度は観たいと思いつつ、まだ実現していません。

多くのアーティストにカバーされている名曲

『サム・ガイズ Some Guys Have All the luck』は、ロッド・スチュワートのオリジナル曲ではありません。作詞・作曲は、1970年代の一時期、ソングライターとして活躍した、イェール大学出身のジェフ・フォートギャング (Jeff Fortgang)で、R&Bヴォーカルグループのパースエイダーズ(Persuadersa)が1973年に発表して、スマッシュヒットさせています。

以来、ロッド・スチュワート含め数多のアーティストがカバーしてきた名曲です。その中で出色の出来だと言われているのが、英国のシンガー、ロバート・パーマー(Robert Palmer 1949/1/19-2003/9/26)の『サム・ガイズ Maybe It's Live』(1982)に収録されているバージョンです。歌詞もメロディーもオリジナルの楽曲からは大胆に改編され、ダンサブルな一曲に仕上がっています。色々なバージョンを聴き比べて見るのも面白い一曲です。

現代の「非モテ」を代弁した歌詞

ロッド・スチュワートのバージョンは、軽快で楽し気な曲調とは裏腹に、歌詞の世界がなかなかに辛辣な内容です。当時は全く意識していなかったものの、さしずめ現代の「非モテ」のやるせない気持ちを代弁したような歌詞であり、平易ながらなかなかに奥が深いな、と感じてしまいます。

何度も繰り返される印象的なサビの部分は、以下の内容です。

Some guys have all the luck… Some guys have all the pain.
Some guys get all the breaks…. Some guys do nothing but complain.
物凄く運の良い男もいれば、苦難を引き受けてばかりのヤツもいる。
全ての幸運を手にする男もいれば、不平不満ばかりほざくヤツもいる。

歌詞より(私訳)

50年以上生きてきて、この歌詞を聴くとなかなかに複雑な気分です。また、

It seems so unfair when there’s love everywhere but there’s none for me.
至る所に愛はあるというのに、僕には何もないのは不公平じゃないか!

I know I would die if I ever found out she was fooling me.
彼女に遊ばれてるとわかったら、きっと死にたくなる。

I called you collect, you didn’t accept, you had nothing to say.
コレクトコールしたのに、君は受けてくれなかった。何も言わなかった。

歌詞より(私訳)

切ない歌詞の数々に唸りました。今も、昔もモテないことは、切実な問題であることに変わりはないようです。稀代のモテ男であり、have all the luckの代表格のようなロッド・スチュワートが、この歌詞を軽やかに歌うのが何とも皮肉な感じです。


サポートして頂けると大変励みになります。自分の綴る文章が少しでも読んでいただける方の日々の潤いになれば嬉しいです。