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Markover 50 の読んだ本

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Markover 50の読んできた本の読書感想文を収めています。
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2022年3月の記事一覧

『老人支配国家日本の危機』を読む

本日は、エマニュエル・トッド『老人支配国家日本の危機』(文春新書2021)の読書感想文です。 親日家の提言フランスの人口統計学者・歴史学者・人類学者のエマニュエル・トッド氏(Emmanuel Todd, 1951/5/16-)には、多くの著作があり、その発言が注目されている論客です。 人口動態を根拠にした鋭い社会分析に定評があり、ソ連の崩壊やトランプ大統領の当選を的中させてきました。私も数年前にその名を知ってから、何冊か書籍を読んできました。EUの絶対王者として我が物顔に

『かもめのジョナサン』を読む

三連休最終日の今日は、30年以上振りに読み直したリチャード・バック作・五木寛之訳『かもめのジョナサン』(新潮文庫1974)の読書感想文です。 数少ない高校時代に読んだ小説私が本格的に『本を読むオトナになる!』と決める前の中学・高校時代に読んだ小説が数冊だけあります。覚えているのは、 ● アラン・シリトー『長距離走者の孤独』 ● 村上龍『限りなく透明に近いブルー』 ● 三島由紀夫『初恋』 そして、この『かもめのジョナサン』です。当時本読みのど素人だったにしては、なかなかセ

『日本を追い込む5つの罠』を読む

本日は、カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本を追い込む5つの罠』(角川oneテーマ21 2012)の読書感想文です。 著名なジャーナリストであるウォルフレン氏が、日本に迫る5つの罠について解説する書です。「一度罠に嵌ったら抜け出せない」ということばが意味深です。丁度10年前に刊行された本ですので、当時の記憶を振り返る機会にもなりました。 ①TPPTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)については、その後の顛末(アメリカの不参加)を知っているため、ウォルフレン氏が本書で指摘されて

『村上春樹はくせになる』を読む

やるべき課題が山積みであるにもかかわらず、何もやる気がしない一日でした。朝6:00過ぎには目が覚めたものの、心配事が頭の中を駆け巡ってしまい、ずるずると昼過ぎまで寝床から起き上がれませんでした。客観的にはこれがプチ鬱状態による現実逃避といったところでしょうか。枕の横に置いてあった、清水良典『村上春樹はくせになる』(朝日新書2006)を貪り読んで過ごしました。 無数にある村上春樹論村上春樹氏(1949/1/12-)は、日本で最も人気のある作家の一人であり、孤高の作家という地位

『1984』的社会の住人

本日は、内田樹『コロナ後の世界』(文藝春秋2021)の中の「1984年のディストピア」(P135-153)を読んでの読書感想文になります。 ディストピアは小説の世界ではなく『1984』は、小説家ジョージ・オーウェル(George Orwell 1903/6/25-1950/1/21)が1949年に発表した作品です。内田氏は、最初に読んだ時にはリアリティを感じなかったが、新訳版で読み返すと、小説の世界と現実の日本の境い目がわからなくなっている、と言っています。 社会心理学で