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遺留分と法定相続分の違い・税理士がつぶやく相続の基本

さて本日のテーマは、遺留分と法定相続分の違いです。
遺産相続をする際、遺族が複数人いる場合に誰にどれほどの割合で分割するかは、必ずと言っていいほど問題になると思います。

そもそも問題になるほどの遺産なんてないよ!って思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし最高裁判所が発表している、「令和3年 司法統計年報 3家事編」の遺産分割事件、遺産総額別を見てみると以下の様になります。

「令和3年 司法統計年報 3家事編」より作成


もちろんこの数字は、裁判所の発表なので裁判にまで至った件数ということです。
そこまでに発展していなくても親族間でのトラブルは、さらに多いことでしょう。
少し身近な話に感じてきましたでしょうか?

法定相続分とは?

法定相続分とは、残された遺産を誰がどの割合で受け取るかの基準を定めた法律です。
この法律に強制力は特になく、あくまで遺産分割の基準を定めたようなものになっています。
また、法定相続分は、相続税を計算する際に必要になります。

法定相続分については、別記事でも書いています。
よかったらこちらの記事も読んでいただけると幸いです。

法定相続分は、遺産分割の基準

法定相続分は、上記のように基準を示したものであり、強制するものではないので遺言書によって法定相続分とは違った、分割をすることも出来ます。
もちろんきちんとした協議が出来ればその時も法定相続分に従う必要は、ありません。

相続税には、重要な法定相続分

ただし、相続税を算出する際に法定相続分は、重要です。
法定相続分を受ける権利を持つ人を法定相続人と呼び、相続税の対象となる遺産の額を下げる基礎控除を見てみると

  • 法定相続人の数×600万円+3000万円

となっています。
遺産総額からこの基礎控除額を引いた額に対して相続税がかかりますので法定相続人の人数が重要ですね。

また、死亡退職金や死亡保険の受取額には、非課税枠(税金が課からない額)がありますがこれらは、法定相続人が受け取ったときにしか受けれませ。

上記では、遺言書によって法定相続分とは違った、分割をすることも出来ますと書きましたが、遺言でこの法定相続人ではない人に遺産を残した場合、遺贈と呼ばれ相続税は2割加算になります。

このように相続税の算出には、欠かせないのが法定相続分法定相続人になります。

遺留分とは?

遺留分法定相続分とは違い、相続税の計算などに用いられることはありません。
法定相続分が遺産分割する際に用いられる事が多いのに対し遺留分は、遺産分割後に用いられることが多いかと思います。

遺留分は、最低限の権利

というのも遺留分は、残された遺族の生活を保護するため、遺産を受け取る権利を最低限保証したものであり、どんな遺言があろうとどんな分割協議が決定しようと主張出来る権利だからです。

もちろん遺留分があっても遺言で遺産分割はある程度自由に決めることができます。
ですが例えば、遺言書に「遺産は全て孫に渡す」と書かれていても亡くなった方の配偶者や子供は、遺留分に定められた割合の「遺産の価格」を請求する権利を持っているわけです。

この「遺産の価格」を請求する権利というのは、後ほど詳しく説明しようと思います。

遺留分を主張できる人

さて、この遺留分を主張できる人は限られています。
亡くなった方の配偶者子供直系尊属(両親、祖父母)です。
法定相続分は、亡くなった方の兄弟姉妹も含みますが遺留分は、兄弟姉妹は、含みません。

遺留分は、法定相続分の半分

遺留分は、定められた割合で遺産を受け取る権利を主張出来ます。

遺留分の遺産に対する割合は、誰が遺留分を主張するかによって変わります。
主張する人による割合を見ていきましょう。

  • 配偶者のみの場合 = $${\frac{1}{2}}$$

  • 子供のみ場合 = $${\frac{1}{2}}$$

  • 直系尊属(両親、祖父母)のみの場合 = $${\frac{1}{3}}$$

  • 配偶者と子供の場合 = 配偶者$${\frac{1}{4}}$$ ・ 子供$${\frac{1}{4}}$$

  • 配偶者と直系尊属(両親、祖父母)の場合 = 
     配偶者$${\frac{1}{3}}$$ ・ 直系尊属(両親、祖父母) $${\frac{1}{6}}$$

なお、子供が複数いる場合や、両親ともいる場合などは、それぞれの割合を人数で割る事になります。
例えば、子供だけの場合 = $${\frac{1}{2}}$$です。この時、子供が2人いた場合はそれぞれ$${\frac{1}{4}}$$づつという事になります。

上記の別記事「法定相続分と法定相続人・税理士のつぶやく相続の基本」で法定相続分の分割割合を書きましたが遺留分は、法定相続分の半分であり大きく違うのは兄弟姉妹は、主張出来ない点です。

遺留分侵害額請求権

遺留分を主張出来る人が誰でどのぐらい請求できるか見てきましたが、実際何を請求するのかについては、ちょっと説明が必要かもしれません。
これは、先程書いた「遺産の価格」を請求出来る権利の話ですね。

遺留分を主張できる権利は、民法第1046条で言う「遺留分侵害額請求権」です。
この権利を例えると、「本来、私が相続すべき遺産を、私に渡しなさい」という権利、、、ではなく!!
「本来、私が相続するべき財産の価格を私に支払なさい」という権利です。
民法で言う、物権と債権の違いですがこれを説明してると物凄く長くなるので割愛します。
簡単に言うと、物を請求するのではなく、金額を請求する権利なわけです。

遺留分の期限


遺留分を主張できる権利「遺留分侵害額請求権」ですが主張できる期限があります。

  • 相続がある事と遺留分が侵害された事を知った時から1年

  • 相続開始から10年(その事を知らなかった場合)

基本的にこの二つですが、遺言が無効であると争われている間は、主張することができません。
主張は、出来ませんが上記の1年と10年の経過が止まることはなく例えば、1年以上遺言の無効が争われれば「遺留分侵害額請求権」は、主張できなくなります。

まとめ

ちょっと長くなりましたが、いかがでしょうか?
まとめると法定相続分は、遺産分割の基準であり、相続税には重要な割合です。
一方、遺留分は残された遺族の生活を保護するため最低限の遺産を受け取るための権利であり、そのため権利として強めな意味を持っています。

当税理士事務所では、相続相談にも力を入れておりますので是非、ご相談下さい。

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