貸本屋三代目店主、いよいよ立退きへ!どーする? どーなる!?〜Vol.4〜

さてさて、貸本屋三代目日記、
今夜はいつもより少し早めのお時間のアップです。

初めて読んでくださる皆様も、
初回から読み続けてくださっている皆様も、
全身全霊、ありがとうございます!!!


今回はうちの店の特殊サービスについてお話していきます。


以前にも書きましたが、私がこの店を継ぐ前の時期、
お客さんとして通っていたのはおそらく7年程度です。

その間に借りる冊数がどんどん増えていき、
寝る間も惜しみ、寝ながらマンガの角に顔面をぶっつけながらも、
多い時は毎月300冊近くを貪り読むようになっていました。

今思えば、あの頃の自分ときたら、
「かなり漫画を読んでる部類に入る!」と図々しくも思っていましたし、
もちろん店を継ぐ際にも、
「自分の知識と感覚で漫画をオススメしたい!通用するのか試してみたい」
なんてワクワク感もありました。


でも、実際にこの店をやってみてわかったのは、
「結局のところ、これまでの自分なんて、
自分の好みの分野しか読んでいなかったんだな」ということだったのです。


店を引き継いだ直後、いろんなお客さんと接する中、
私がオススメしたいと思っていたマンガは、
自分自身の過去の経験にもとづく考え方と、
そこで培われたセンスによるものでしかないと
すぐに気づいたわけです。

お客さんのそれまでの人生も好みも十人十色でまた違う。
私自身がそれまでに読んできた幅は、少女マンガから青年もの、
サブカル系、昔の大人マンガ、エログロから乙女もの、不思議系まで、
比較的広い方だったとは思いますが、
しかし、結局は自分の好きなものばっかり。。。

そんな自分の好みを一方的にお勧めたところでどーなの?と。。。

それに気づいて以来、あまり興味のなかった分野でも、
いろんなお客さんにその面白さを聞き、
自分の好き嫌いをヨソに置いて読むようになりました。

「なるほど。このマンガにはこういう面白みを感じている人がいるんだな」
「こういう角度が好きな子はこっちの系統もいけるんだなあ」
「こういう視点で勧めたら、興味を持ってくれそうだなあ」等々。。。
好まない漫画に目を向けた結果、自分にとっての面白さも広がったのです。


そういうわけで、もう全然好きじゃない漫画も選び、
毎月70冊〜100冊程度の仕入れた漫画は
すべて歯を食いしばって読み続けたのでした。
楽しいはずの漫画が、本当に辛く苦しいものになりましたよ。。。

しかし、その結果、自分も成長したのです!
忍者が植えた芽を毎日飛ぶうちに大木飛べるようになるのも、
ファラオが少量の毒を毎日飲んで毒殺されない耐性を身につけたのも、
1日1飛び、1日1飲みから! つまりは「継続は力なり」!!

漫画だって毎日それだけ読み続けりゃ、
なんか飛べたりなんか耐性できたりする!ってものなのです!


そして、「この漫画がすごい」とかにウキウキ投票してる皆様、
とりわけ、「この漫画を先物買してる自分ってすごくない?」的な
サブカルクソ野郎どもに対しては、
「誰になんと言われようとも敵対的姿勢をとり続けていく!」
と、思うようになりました。

だって、「この漫画がすごい」の1位にランキングされる漫画って、
ほとんどが「この漫画を知ってる自分すごい」の1位ですから〜〜!!
漫画大賞の方がよっぽど参考になるってもんですよ。。。


こうした経験を積み重ねた後、
当店は本人が好むジャンルを把握した上で、
そこから30センチほど隣にあるジャンルを勧める方式を編み出しました。

例えば、「努力!友情!勝利!」なジャンプ漫画しか読まないような子もいました。

その気持ち、もちろんわかる。
そういう純粋さって大事です。ありきです。

けれど、長く生きていれば、努力で叶わないものもあり、
友情を裏切られることもあり、敗北を喫することも山ほどあるものです。
(そうした敗北の果てに大阪のネオン街に失踪した友人・知人も実際にいましたねえ・・・)

ってことはつまり、
人生とは努力、友情、勝利だけじゃ済まされないわけです。

小学生の情操教育においてジャンプのあり方は正しいのかもしれませんが、
それより上の世代なら、マンガで様々な追体験しておくことは
きっとその後に役立つはず!

架空の主人公であっても、そこには作家の生き様があり、
自分自身に思いもよらぬ視点をもたらしてくれる可能性があるのです。
だから、ジャンプ以外の漫画も読んで欲しいんだってば〜〜!!


また、アニメ化されたり、ドラマ化されたりしたものしか読まない子もいました。これもまた、悩みどころなのですよ。

うちの店で最も嫌だなーと思うのは、
入店するなり、周囲を顧みることも一切せず、
「進撃の巨人」や「宇宙兄弟」「テラフォーマーズ」などにつかみかかる子です。

自分の本能のままに動き、他のことが何にも見えてない状態で
いきなり入ってきて、いきなりつかみかかる。
まさに、無礼なこと風のごとし!なのですよ。。。

こういう子には、何を勧めたって誰も得しないと経験上わかっているので、
速やかに退出してもらうようにしています。

ああ、お話が逸れてしまいましたが、
アニメ化、ドラマ化から入るのはいいんです。
興味を持ち、好きなものが増えるのはすごくいいと思うのです。

でも、他にも面白いものがたくさんあるって知ってほしい。
世間の価値観を受け入れるだけの「好き」よりも、
自分の価値観で「好き」と思えるものに出会う方が幅は広がるものです。

そして、好きなものがたくさんある人生は豊かであり、
いろんなことに絶望した時も、それが支えになってくれることがある!

人生とは、そして他人の生き様や考え方とは、
自分が思っているよりも広く深く、意外性に溢れたものであり、
たまたま読んだ漫画に出てくるたった一つの台詞を目にした瞬間、
「そうかあ、そうだよね」と、ストンと肚落ちすることもあるのです。

それでもって、
もっとたくさんの人が才能ある作家を好きになって、
うちで借りるだけでなく単行本を買ってくれるようになったら。
作家に印税が入り、描き続けられる環境ができれば。
それによって自分もまた面白いものを読み続けることができる!

そう、「三方一両損」ならぬ、「一挙三得」なのですよ!

おそらくは余計なお節介なのでしょうが、
「他人は他人、自分は自分」の意味を誤解している人には
「そんな人生、想定外のミラクルなど起きない」と知ってほしい。

自分の価値観という「無意識の結界」を張った狭い箱の中で生きるより、
いろんな価値観があることを知る方が面白いのだと。

それに、好きか嫌いかは読んでから判断すればいいことで、
好きだろうと嫌いだろうと、得るものがあればトクしたということ。

これは宇宙の真理ではないかと思うのですよ!!

それゆえに、当店では、
漫画読みの手練れであるお客さんに対しては、
「この漫画のどこが面白くないのかを考えてみて」と、
あえての課題図書として面白くない漫画をお勧めすることもあり、
そうしたみなさんは嬉々として自分の感じたことを話してくれます。

そう、本人の度量次第で、クソ漫画だっていくらでも面白がれるし、
そこから学ぶべきことだってたくさんあるのですよ!

とはいえ、お客さんのリクエストの中では、
無理難題に頭を悩ませたこともあります。

女性のお客さんの中には「主人公が美人じゃない漫画は嫌だ!」
(⇧美醜の感覚はあくまで主観的)という子もいます。

「失恋したから、元気になる漫画教えてください」と言われても、
失恋して仕事に生きるタイプなのか、次の恋に燃えるタイプなのかにもよります。

「鉱山が出てきて、なんか掘りあてるような話がいい」
って、もんのすごいピンポイントですよ。。。
「なんか」ってなんだろう。赤城山の埋蔵金的な・・・??

また、とっても可愛らしいうら若き乙女が、
「人が理不尽に、大量に殺されたり、ひどい目に遭う漫画を!」
といってきたこともあり、ラピュタのムスカもかくやと。。。
「見ろ!人がゴミのようだ!」と。。。
さすがにこの時は、併せてほっこりする漫画も持っていかせましたが。。


さらには、
「ペルセウス星からやってきた地球人にそっくりな生物が
地球を侵略しに来るんだけど、そこにはいろいろな軋轢や思いがあって!」
というおじさまもいましたが、
そこまでプロットあるなら、自分で描いた方が早いと思うのですが。。。

それから、店主として最も憤るリクエストは、
「一番面白い漫画を教えて!」と、
「今、一番人気ある漫画を教えて!」ですね。

だって、だって。

一番面白い漫画って、その人の好みによって違いますから〜〜〜!!

一番人気ある漫画って、漫画読みの深度によって違うんですからーーー!!

そういうわけで、実にいろんな方がいて、
漫画の好みは十人十色なのは事実も事実。

そこから30センチ先の世界に踏み出してもらい、
どんどん面白がってほしいなあというのが、
漫画大好きな店主の、心よりの願いなのであります。

さて、長くなってしまいましたので、
今宵はこれにて!

ここまで長々とうちの店の紹介をしてまいりましたが、
次回より、「風雲急を告げる」な急展開!!

「ある日突然、弁護士からの退去通達が届いた!
この土地、ビル建つってよ!」
をお送りする予定です。

それではみなさま、おやすみなさいませ!!

つづく・・・・

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