「どのディズニープリンセスが一番好き?」と娘に訊いた話
現在4歳の娘は、絶賛ディズニープリンセスにどハマり中だ。
以前はエルサ(アナと雪の女王)一択だったのに、最近は「あのプリンセスも、このプリンセスもカワイイ!」と目移りしている模様。
今まで、娘に何度か「どのプリンセスが一番好き?」と娘に訊いてみたことがあるのだが、そのたびに、娘は「…」と黙ってしまう。
娘は言葉の発達が少しゆっくりなところがあり、会話が続かないことはよくある。
もしかしたら、全員好きだから答えられないのかもしれない。
熱心なプリンセスファンにはちょっと酷な質問だったか…と思い直し、けれど会話が途切れてしまうのも寂しいので「ママはねぇ…」と続けてみた。
「ママはねぇ…ママは……」
本当だ。考え出すとなかなか難しい。
どのプリンセスもとても魅力的で、みんなカワイイのだ。
私は誰に最も心惹かれるだろう?
「ママはねぇ…ムーランかな」と、ぽつりと言った。
口にだしてから「そうだったのか」と自分でも驚いた。
娘には「むーらんはぷりんせすじゃないんだよ」と言われた。
そう。ムーランは「プリンセス」ではない。
恋仲になるのも王子様ではなく、軍隊の隊長、つまり上司だ。
けれど、もう口に出したらムーラン以外には考えられなくなった。
ムーランのどこが好きなのか?考えてみた。
「自ら身代わりになり、父を助けた勇敢なヒロイン」として挙げられる代表格はベル(「美女と野獣」のヒロイン)ではないだろうか。
けれど、引用からムーランのしたことをもう一度見てほしい。
父の身代わりに、死ぬかもしれない「戦争」に行くのだ。
しかも、驚きなのは「敵に殺されるかもしれないし、女性だとバレてもやはり殺される」という、非常に死ぬ確率が高い条件下にも関わらず、「自分の意思で」行くという点だ。並の勇気ではない。
ベルだって自分の夢を捨て、2度と父に会えず、大好きな本も読めなくなるかもしれないにも関わらず、囚われの身を選んだのは本当に勇敢だ。
けれど、考えてみてほしい。
その後、結果的にベルは身代わりになってから超VIP待遇。
対してムーランは身代わりになってから地獄の特訓だ。
男社会の中で嫌がらせを受け、激しい訓練に耐え、殴られて目に青タンまで作る。
もちろん、私がムーランを好きなのはキツい状況を耐え抜いたからではない。
ムーランはもともと特別な力を持たない「普通の娘」なのだ。
いや、乱暴な言い方をすれば女社会の中ではむしろ、失敗ばかりで能力的には低いほうとさえ言えるかもしれない。
かといって、戦闘経験も体力もないムーランは男社会でも仲間からいじめられ、隊長からは「お前には無理だ」と一時は見放される。
つまり、女社会でも男社会でも「落ちこぼれ」であるムーラン。
どちらの社会にも、ムーランの居場所はないのだろうか?と見ていて切なくなる時に、ムーランはいつでもオリジナルの突破口を見つける。
女性としての器用さはなくても、男性ほどの強さはなくても、例え正攻法ではなくても、「自分だったらこうする」と、全員の前で身体を張って証明し続けるのだ。
むしろ、どちらにもうまく染まれないからこそ、独自のやり方で勝負せざるを得なかったのかもしれない。
何かしら特別な美貌や才能、または数奇な運命を背負っているディズニーのヒロインの中で、ムーランだけが私の目に異彩を放って見えるのはそういう理由かもしれない。
自身の弱点を強みに変えたヒロイン。
プリンセスじゃなくても、だからママはムーランが好きなんだと思う。
君は、どのプリンセスが一番好きなのかな。
どんなプリンセスみたいな女性になるのかな。楽しみだね。
でも、たとえプリンセスみたいな女性じゃなくても素敵だなぁなんて、ムーランを見てると思うんだ。
ママも器用なほうじゃないけど、君ともっとおしゃべりができるようになった時、このお話ができたらいいな。