「夜明けの寄り鯨」観劇レポ


ザ・演劇。
セットが美しく、奥行きがある上、天井側に鏡が吊るされているので広く不思議な空間使いをしている。鏡越しにだけ鯨がみえたり、鯨の声が聞こえたりする。

全員芝居が本当に上手くて気持ちよく、話に集中できるありがたみを感じました。
アウティングや捕鯨というデリケートな、白黒はっきりしづらいテーマにいろんな立場の人間が立ち向かう。

もう、見ていて胸が痛い。苦しい。
わたしには、三桑たち4人がどんな禊をしたところで外れない、呪いの様な、一生の十字架を背負っているんだよという終わり方に見えた。


大抵の人は図星を指されると腹が立つ。

この芝居を見た人がイラついたり腹が立ったりするのは、あの4人の中に自分がいるから。
自分で良くなかったと心の底でわかっているけど認めたくない行いを客観的に目の当たりにしているからじゃ無いかと思う。

「なんて浅い言葉!ただのエゴイストじゃないか!」

そう、人間だもの。浅い言葉で自分の行いを涙ながらに話して浄化した気になり、都合よく前に進んでしまおうとする。事の重大さをわかった気になり、今はいない人の思惑を勝手に想像して片付ける。その浅さがまさに人間であり、「ただ芝に居る人」を表現してる。これぞまさに芝居。だから山本が最後に現れてすれ違うんじゃないのかなぁと。君たち随分と気持ちよくなってこれで終わろうとするけど、そうはさせないよ、と。


新国立劇場の小劇場で18日まで。

良いお芝居をみさせていただいた。
見終わってから自分の中で咀嚼して色々と考えたくなる舞台は良い舞台だと思う。

がんばろうねぇ、わたし。




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