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"ファイナルファンタジー"天野喜孝氏の挑戦し続ける姿勢、村上隆氏が若手クリエイターに伝えたかったメッセージ【NFT Art Tokyo 3】

2023年6月3日(土)NFT Art Tokyo 3が開催された。場所は渋谷。パルコ6階10階とパルコ横のBAIAの3拠点を使って64組のアーティストによる展示&ライブで構成されていた。私はNORIFORCEのNORIと一緒にステージMCを担当し、HEART CATCH島掛は海外著名アーティスト招聘ブースを担当していた。

NFT Art Tokyoの醍醐味はNFTアーティストがデジタルの世界から飛び出し、フィジカル空間でファンや新たな顧客候補とつながる機会を無償ブースとして提供していることなのだが、あいにく私はステージ担当だったのでそれらのブース醍醐味を味わうことができなかった。ただ、今年初開催のNFT Art Tokyoステージ上でも若手クリエイターの背中を後押ししてくれるセッションがあったのでそれを当note記事では紹介したい。

■天野喜孝氏:わからないから、使い慣れてないから、挑戦する。そして、挑戦する姿をパブリックに晒す。

「ファイナルファンタジー」シリーズのロゴ、イメージイラストを担当した世界的著名なビジュアルアーティストである天野喜孝氏。彼がメインアーキテクトとして参画するZIEL CHAINのステージとして天野喜孝氏が披露したのは、自身初のデジタルライブペインティング。ZIEL CHAINファウンダーの白石俊博氏によると、天野喜孝氏がデジタルイラストレーションツールを使うのは一年程前から。つまり、あまり使い慣れてないツールでライブペインティングに臨むということだ。

天野喜孝先生はステージ上でサラサラとZIEL CHAINのキャラクターを生み出しながらも語ってくれる。

「デジタルツールは使い慣れてないんだけど、使い慣れてないもので生み出す方が良いものが生み出せることがある」

天野喜孝 @ NFT Art Tokyo 3

呼吸をするようにキャラクターを生み出しながら、使い慣れてないツールのほうが良いものが生み出せるという言葉にハッとさせられた。
「良いもの」を生み出すためには、使い慣れたツールを使い、熟練のスキルをもって臨むべきだ、と勝手に思い込んでいた私にとってはカミナリ⚡に打たれたかのような衝撃だった。

自分がモノを生み出したいと思う時に「Illustrator 上手に扱えないし」・・などとツールをベースにクリエイションを諦める自分が少し恥ずかしくなる。コンテンツクリエイションの先達である天野喜孝氏が、挑戦し続ける姿を若手NFTクリエイター達に見せてくれたステージは、舞台袖で見ている私だけではなく、多くの来場者の心にも刺さったことだろう。

20分のセッションはあっという間に時間が経っていってしまったのだが、最後に、天野喜孝先生にNFTの価値をどのように見ているか聞いてみた。すると:

NFTはまだわからない、だから面白い、だからやってみるのだ

天野喜孝 @ NFT Art Tokyo 3
 

と返事をくれた。非常にシンプルな言葉でありつつも、モノを創造する人の原動力、力強さを感じさせる言葉である。

もう一つこの天野喜孝氏セッションから受け取ったメッセージは「人前に見せる」大切さ、である。恥ずかしいからと人目に触れぬ所で作り続けるのではなく、自分の挑戦を表に晒すこともクリエイティブ筋力をつけるためには大事なのではないか、と最近考えていたので、天野喜孝先生のNFTはわからないからやる、デジタルツールに慣れてないから使う、そして「わからない・知らないからこそ面白いものが生み出せる」という視点は自分のなかの躊躇していた部分を剥がしてくれる強力な言葉であり態度であった。

■村上隆氏:総合力を身に付けろ、日本のクリエイティブを世界に出していくチャンス

村上隆氏のNFT Art Tokyo 3セッションは、村上隆氏の方から出演したいというリクエストを出して実現されたものである、というのを最初に聞いて驚いた。何故自らステージに立ちたいといってくれたのか?それには村上隆氏がNFTクリエイター達に伝えたいメッセージがあったからであるという。

以下村上隆氏のステージ上での言葉で私の心に響いたところをお伝えする。

  • NFTとビジネスは親和性があるとおもっている。なのでNFTアーティストは最初からビジネスも学んだ方がよい。

  • 日本国民である限り、日本国のルール、マナーを守る必要がある。その日本国から海外に向けての挑戦、もしくはドバイなど海外に行って挑戦するどちらでも良いが、いずれの場合にせよ、クリエイターは最初から将来的なビジョンと自分のビジネス・ストラクチャーを作っておいたほうが良い

  • みんな同調圧力に負けてしまう。試験前に「勉強した?」「やってない?」といったノリと同じように、クリエイターがビジネスすることを表明するのを恥ずかしがりビジネスしなくなっちゃう。でもだから途中で挫折してしまう。それを防ぐためにはクリエイターでも、ビジネスはやって欲しい。勉強する機会は大事。

  • クリエイターは、大体20代、30代で息が切れちゃう。クリエイティブな長期戦の方が一生楽しめるので、息切れしないためにも自分でサイクルを作るしかない。20代30代はトレーニングの機会と思ってトレーニングし続けると良い。

  • NFTはマネーフローも国籍、地場の制約も乗り越えるので、日本のクリエイティブが世界にするっと行けるチャンスだと思っている。

  • クリエイティブだけ、マネーだけ、でも良くない。総合力を身につける方が良い。

以下に上記コメントの一部をステージ袖から撮影した動画と、村上隆氏の言葉をメモしてくれていたイラストレーターの Chai Chaiさんの言葉を添付しておく。

日本のアートクリエイションの先達(OG)である天野喜孝氏、村上隆氏が、自ら挑戦する姿を見せ、また、経験を元にアドバイスをしてくれる姿が見られたのはとても貴重な機会であり、このような先達が居ることも日本のコンテンツの強みなのではないか?と考える。このような機会がもっと増えていくことにより日本のクリエイションのDNAが次世代に引き継がれていきながら濃く、豊かなものになることを祈りたい。

国境が飛び越えやすくなった分、クリエイションの中身は濃い方が良い。
NFT Art Tokyoではヤングサンデーの黄金期を飾った山田玲司氏も愛まどんな氏とともにサブカル、偏愛にあふれるセッションを提供してくれた。この日本ならではのサブカルパワーも熟成させつつ、世界に発信していくには、個々のクリエイターの総合力(クリエイション×ビジネス)も大事だし、そのようなクリエイターを応援するNFT Art Tokyoのようなイベント(仕組み)や、ルール(政策)なども必要になるだろう。

日本の魅力、自分たちがワクワクするものをベースに総合力を高めて、世界にするっと発信していきたい、と強く思わせてくれるNFT Art Tokyoステージだった。

・・・当noteで、MCのステージ袖からの視点を少しでも味わっていただければ幸いである。

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